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“イタリア トリエステ 鉄道博物館”

旧カンポ・マルツィオ駅が鉄道博物館

アドリア海の奥まったところに位置する人口20万人余りの港町、トリエステはスロベニアと国境を接するイタリア北東端の街。第一次世界大戦までは、オーストリア=ハンガリー帝国の貿易港として繁栄してきたものの、オーストリアの敗戦でイタリア領になってからはその重要性が大きく低下したのだとか。

首都ウイーンからトリエステの背後の丘の上にあるオピチーナ駅に達した、かつてのオーストリア南部鉄道が、高低差をかせぐために大きく迂回しながらトリエステの街まで降りる路線が開通したのが19世紀の半ば。

トリエステには2つのターミナル駅があったものの、今ではヴェネツィア方面の列車が発着するトリエステ中央駅だけ。港の近くにあって廃止されたカンポ・マルツィオ駅は、今ではトリエステ鉄道博物館になっています。

▲ プレジャーボートが並ぶトリエステの港 2016/5/4

トリエステ中央駅から8番の市バスに乗り、オーストリアの雰囲気が漂う荘厳な石造りの州庁舎や市庁舎の建ち並ぶ広場のある海岸沿いの道を10分ほど、徒歩でも20分余りのところに、プレジャーボートが整然と並ぶ港に面して立派な石造りの駅舎が残っています。

▲ かつてのカンポ・マルツィオ駅

港に面した正面は閉じられていて、鉄道博物館は側面の入口から入ります。ボランティアの手によって運営されているようで、開館は水、土、日の週に3日だけ。それも、10時にオープンして13時には終わってしまう、1日わずか3時間。遠来の旅行者には訪ねにくいスケジュールです。

※ 2021年春段階で改修工事のため休館中です。再開はアナウンスされていません。

▲ 旧駅舎の側面が鉄道博物館の入口になっている

入口で5€の入場券を買い求めます。広いホールにはかつての出札窓口が残り、中央には透明なケースに入った白亜のカンポ・マルツィオ駅の模型が置かれています。今はホームの上屋が無くなっているものの、かつてはドーム屋根で覆われていたようです。

▲ 出札窓口等がそのまま残る駅舎内

▲ 中央にかつてのカンポ・マルツィオ駅の模型がある

▲ ホームまでドーム屋根に覆われていたようだが今はなくなっている

オーストリア=ハンガリー帝国の時代には、今はスロベニア領のノヴァ・ゴリツァを経て首都ウィーン方面に向かう標準軌の路線に加えて、イストラ半島の海岸沿いを南下し、今はクロアチアのポレチを結んでいた狭軌の軽便鉄道、バレンジャーナ鉄道も、ドーム屋根の外の一番海側のホームに発着していたようです。

▲ HOゲージのジオラマ

▲ 雪景色のジオラマ

鉄道博物館を運営するボランティアの中に、鉄道模型が得意な方がいるのでしょうか。このホールには2つの大きなジオラマがあり、HOゲージの列車が走行しています。それとは別に、ウェザリングを施した扇形庫とターンテーブルの模型も。

▲ 扇形庫とターンテーブルの模型

▲ 踏切遮断機や信号機なども

それでは、実物の車両が並ぶホームに出てみましょう。


蒸気機関車

まずは蒸気機関車から。博物館が所有する10両の内訳は、イタリア製が5両、オーストリア=ハンガリー帝国から引き継ぎが4両に、ドイツ製が1両です。

軸配置1Cの640型テンダ式蒸気機関車は、1908年ミラノのブレダ製。

▲ 640型蒸気機関車

軸配置1Cのテンダ式蒸気機関車683型は1918年製で、もとハンガリー国鉄の324型。

▲ 683型蒸気機関車

軸配置Cの835型タンク式蒸気機関車は、1911年にナポリで製造。

▲ 835型蒸気機関車

軸配置1C1の229型タンク式蒸気機関車は、1916年のクラウス製。観音開きの煙室扉がオーストリア式。オーストリア王立帝国鉄道からユーゴスラビアを経てここに来たようです。

▲ 229型蒸気機関車

同じく観音開きの煙室扉が特徴的な、軸配置Eのテンダ式蒸気機関車476型は1911年製で、オーストリア=ハンガリー帝国からの引き継ぎ。

▲ 476型蒸気機関車

軸配置1Dのテンダ式蒸気機関車740型は、1913年イタリアのアンサルド製。

▲ 740型蒸気機関車

軸配置Dの895型タンク式蒸気機関車は、1913年ミラノのブレダ製。

▲ 895型蒸気機関車

軸配置1Eのテンダ式蒸気機関車は、その形態から見てドイツで大量生産された戦時設計の貨物機52型。ユーゴスラビアで使われていたのだとか。

▲ 52型蒸気機関車

炭水車だけが1両。でも、機関車と連結する側にもバッファーが付いているので何か他の用途に使ったのでしょうか。

▲ この炭水車は何?


電気機関車

続いて電気機関車です。

軸配置BBBで2車体連接タイプの車体を持つE645型。正面にイタリア国鉄“FS”のマークを付けています。このホームだけ架線があるので、動くのかな。

E645型電気機関車

動輪が5軸のようで、軸配置はBABでしょうか。凸型の車体を持つ電気機関車の片端に、虎塗りのラッセルのヘッドのようなものを取り付けています。三相交流のE550型で、屋根にパンタグラフが見あたらないものの、2本の架線から別々に集電していたのでしょう。

▲ 凸型の電気機関車


ディーゼル機関車

続いてディーゼル機関車です。

軸配置B、“ドイツ”の丸いメーカプレートを付けた同型式のロッド式ディーゼル機関車が2両。果たして展示なのか、展示車両の入れ換えに使われている現役のDLか。

▲ “ドイツ”のプレートを付けた同型2両の入れ換え機

もう1両、一回り大きなのB型入れ換え機503号もいます。

▲ 入れ換え用ディーゼル機関車


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