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旅の車窓から

スロベニア リュブリャナ コペル

クロアチア・スロベニア・北東イタリア鉄道の旅 クロアチアのザグレブからスロベニアのリュブリャナ、コペルを経てイストラ半島のアドリア海沿岸を巡り、イタリアのトリエステからヴェネツィアに向かう鉄道の旅にご案内します。


クロアチア・スロベニア・北東イタリアの旅

2016年のゴールデンウイークにカタール航空で、成田→ザグレブ、ヴェネツィア→成田のチケットを確保し、クロアチア、スロベニア、イタリアの3か国を巡る旅に出ました。クロアチアの首都ザグレブから列車で国境を越えてスロベニアの首都リュブリャナへ、ノヴァゴリツァを往復後、アドリア海に面したスロベニアのコペルから再び国境を越え、イストラ半島のアドリア海沿いにクロアチアのポレチ、ロビニ、プーラを回り、再びスロベニアのシュコツィアン経由でイタリアのトリエステに抜けるコースです。

社会主義の国として、南東ヨーロッパのバルカン半島にあったユーゴスラビア連邦人民共和国は、7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を1つの国家に押し込めていたものが、ベルリンの壁崩壊後の1991年から民族間の内戦を経て解体され、6つの共和国に分離独立。スロベニアは2004年にEUに加盟し2007年にシェンゲン協定が発効、クロアチアは2013年にEUに加盟を果たしたものの、2016年の時点ではシェンゲン協定には加盟の計画はあっても実現していな かったため、かつては同じユーゴスラビアであった両国間の国境では出入国管理がおこなわれていました。 その後、2019年にシェンゲン協定への加盟が承認されたようです。スロベニアの通貨は2007年にユーロを導入、クロアチアも導入計画はあるものの、まだクーナのままとなっています。

クロアチア編は、こちらから

※ 8ページの末尾にそれぞれリンク先を設けました。詳しく知りたい方はご利用ください。


クロアチアのザグレブからスロベニアのリュブリャナへ

クロアチア鉄道の1114型電気機関車の牽引で、首都のザグレブ中央駅を出発したフランクフルト中央駅行きの国際列車ユーロシティーEC212は、30分ほどで国境を越えて最初の停車駅、スロベニアのドボヴァ駅に到着。停車時間が20分ほどあるのでホームに降りて先頭の機関車を撮りに行きたいけど、この駅では出入国審査が行われるのでおとなしくコンパートメントで待つことに。

▲ スロベニア鉄道643型ディーゼル機関車

窓を開けて入れ換え用のL型ディーゼル機関車を撮っていると、後方の車両に乗り込む入国審査官の姿が。2人一組ではじめに入ってきたのはクロアチアの審査官。日本人のパスポートならチラッと見ただけでスタンプをポン。EU共通の簡素なデザインだけど、いつもの飛行機のマークの所に汽車ぽっぽの絵。続いて現れたのがスロベニアの入国審査で、同じデザインのスタンプをポン。客車は3両だけなので、短時間で終わります。

▲ 入国審査官が乗ってくる

この間に、列車の前方では機関車の付け替え作業が行われています。クロアチアの鉄道はAC25kVで電化。一方、スロベニアはイタリアの在来線と同じDC3kV。日本と同様に、旧ユーゴスラビア当時から異なる電化方式があり、この駅はかつての東北本線黒磯のような地上切り替え方式のようです。架線を吊っているポールに取り付けた25や3の数字は電圧を表しているのでしょう。

▲ AC25kVのクロアチア鉄道1114型

ここまで牽引してきたクロアチア鉄道の1141型が切り離されて側線に移動。前方からスロベニア鉄道の363型がゆっくりと近づいてきて客車に連結。1970年代のフランス製、ゲンコツ型電気機関車です。

▲ DC3kVのスロベニア鉄道363型

▲ 客車に連結 パンタグラフをおろして待機

▲ 客車はスロべニア鉄道の所属

車内に戻ってホームをみると、スロベニアへの入国を拒否されたのか、荷物を持った一人の女性が列車から降ろされたらしい。2016年時点では、ここから先はシェンゲン協定加盟国で、ドイツでも北欧でも自由に行けるので、スロベニアとクロアチア間では厳重な出入国管理が行われてい たのだとか。

ホームに一人の乗客を置き去りにしたまま発車して行くユーロシティーの窓越しに、スロベニア国内のローカル輸送に充当されるシーメンスの部分低床3車体連節車、デジロの姿。側面には隙間なく描かれた一面の落書き。外が見えるように窓ガラスの部分だけは拭き取っているので、隣国イタリアよりまだマシか。

▲ スロベニア鉄道の落書き電車

ここから先は川沿いの風光明媚な車窓が続きます。スロベニアに始まるサヴァ川は、クロアチアからボスニア・ヘルツェゴビナを経てセルビアの首都ベオグラードでドナウ川に合流して黒海にそそぐ、旧ユーゴスラビアを縦断する川。

▲ 風光明媚な車窓

▲ サヴァ川の水面

EC212列車は、途中駅でローカル列車を待避させて隣のホームを通過。牽引機は1960年代のイタリア製342型。ソ連との間に一定の距離を置いて独自の社会主義政策をとっていたユーゴスラビアの鉄道は、チェコスロバキアやソ連製ではなく国産や隣国ハンガリーに加え、フランスやイタリアなどの西側諸国からも車両を調達していたようです。

▲ ローカル列車を待避させてECが通過

▲ ローカル列車の牽引機は342型

▲ サヴァ川添いのカーブを行く


リュブリャナ駅からノヴァゴリツァ

ドボヴァから1時間半、ザグレブから2時間20分ほどのリュブリャナ駅で下車。首都の中央駅とはいえ総人口200万人の国の14%が住む、人口28万人の小さな街。駅前は閑散としています。

▲ リュブリャナ駅に到着したEC

▲ リュブリャナ駅

ホテルに荷物を預けて駅前のバスターミナルに戻り、第2のベルリンの壁とも呼ばれたイタリアとの国境の街、ノヴァゴリツァに向かいます。鉄道も通じているものの途中で乗り換えがあり、三角形の2辺を通るような遠回りとなるため、隣国クロアチアと同様にスロベニアもバスの方が便利な場合が多いようです。

▲ リュブリャナ駅前のバスターミナル

▲ バスターミナルのチケット売り場

ノヴァゴリツァ行きの路線バスは、バスターミナルに発着する他の路線より一回り小さなホイールベースの短い車両。

▲ ノヴァゴリツァ行きのバス

▲ バスの車内

途中に狭い山道を経由するルートをとり、ゴールデンウイークにもかかわらず標高の高いところでは数日前に降ったと思われる積雪が残る所も。

▲ 4月末なのに標高が上がると雪野原

▲ 途中の村も雪景色

平地に降りてくると、車窓に長閑な春の風景が広がります。

▲ 雪が消えた

▲ 長閑なバスの車窓

バスはリュブリャナから2時間半ほどで、ノヴァゴリツァ市役所近くのバスターミナルに到着。 ちょうどお昼時で、中心街と思われるけどレストランが見つからない。すぐ隣がイタリアなのでイタリア語が通じるかなと思い、道行く女性に“スーパーメルカート”と尋ねたら、スーパーマーケットのある近くのショッピングモールを教えてくれました。

▲ ノヴァゴリツァバスターミナルに到着

店の看板を見ると、スロベニア語ではメルカトール mercator というらしい。スーパーマーケットの中のベーカリーでパンとピザをテイクアウト。近くの公園のベンチで何とか昼食にありつくことができました。

▲ スーパーがある近くのショッピングモール

 

スロベニアとイタリアの国境 

バスターミナルから住宅街の一本道を南西へ、歩いて15分程で踏切が見てきます。その先にはコンクリートのゲートのようなものが。踏切から線路の先にノヴァゴリツァ駅が見え、ヤードには多数の貨車が並んでいます。

▲ 踏切が見えてきた

▲ 踏切の向こうにゲートが

スロベニアのノヴァゴリツァとイタリアのゴリツィアは、もとは1つの同じ街。ハプスブルク家が支配するオーストリア・ハンガリー帝国の一部であったものが、第一次世界大戦後にイタリア領に、さらに第二次世界大戦のイタリアの敗戦で一部がユーゴスラビアに割譲されて街がイタリアのゴリッツアとユーゴスラビアのノヴァゴリツァ(イタリア語でヌオヴァが新しいという意味なので、おそらく新ゴリツァ)に分割され、中心部の旧市街はイタリア側に残るとともに相互の往来が途絶え たのだとか。

▲ 踏切から見たノヴァゴリツァ駅とヤードの貨車

遮断機が下り、ディーゼルカー2両編成の列車が駅を発車して、踏切を通過していきます。

▲ ディーゼルカーがやってきた

▲ 踏切を通過

踏切の先にあるのはユーゴスラビアが属した共産圏と西側陣営を、独立後はスロベニアとイタリアを隔ててきた国境検問所の跡。鉄のカーテンで閉じられ、第2のベルリンの壁とよばれていた場所は、戦後60年余りを経て2007年にスロベニアのシェンゲン協定が発効したことで、自由に行き来できるようになりました。 道路わきのシャッターの降りた平屋の建物が、パスポートコントロールだったのでしょう。

▲ 50m先はITALJA(イタリア)の表示

▲ イタリアに入国してスロベニア側を見る

列車の入れ替えでしょうか、再び遮断機が下りて通過した別のディーゼルカーが踏切の先で停車。折り返して駅に戻っていきます。それにしても、どの車両にも見事なまでの落書きです。

▲ 踏切を通過する別のディーゼルカー


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