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“オーストリア アプト式の蒸機列車シャーフベルク鉄道”


オーストリアの中央やや北より、ザルツブルクの南東に広がる2000m級の山々と数多くの湖で構成する、大自然が美しいザルツカンマーグーと地方。映画サウンド・オブ・ミュージックの舞台としても知られています。

9月のシルバーウィークの一日をザルツカンマーグントへ。最初の目的地は登山列車の始発駅、ヴォルフガング湖畔のザンクト・ヴォルフガング。

早朝のザルツブルク駅前から、ザンクト・ギルゲン行き150番の国鉄ポストバスに乗って向かうことに。乗客の大半は通学の小学生。途中のバス停から乗っては、学校の近くまでくると下車していきます。

国鉄ポストバスの乗客の大半は通学の小学生

バスの車窓は山と湖と緑の牧草地。ザルツカンマーグントの典型的な風景が広がります。ザルツブルクから50分ほど。バスは定刻から5分余り遅れ、東西に長いヴォルフガング湖の西端の小さな町、ザンクト・ギルゲンに到着。

バスの車窓は山と湖

ザンクト・ギルゲンのバス停で通学の小学生が降りる

ここで乗り換えのために下車。ヴォルフガング湖にはザンクト・ギルゲンから登山列車の出発地点、ザンクト・ヴォルフガングに立ちより、湖の東端のストロブルをむすぶ旅客船があるものの、船の始発を待っていると遅くなるのでバスに乗り継ぎ先行することに。運転士はここでしばらく待つようにと言って、バスの系統番号を156番に変えて発車して行きます。

ザンクト・ギルゲンはモーツアルトの母の生家があるところ。市庁舎前広場には幼いモーツアルトがバイオリンを弾く像があるのだとか。15分の乗り継ぎ時間で、バス停から市庁舎を急いで往復する計画を立てていたものの、バスが5分以上遅れたため断念してそのまま待つことに。

バス停から見たザンクト・ギルゲンの街

先ほどのバスが周辺を一回りして、通学の小学生を乗せて戻ってきました。彼らが降り、150番のバート・イシュル行きになった同じバスに再び乗り込みます。

ザンクト・ヴォルフガングは、東西に長いヴォルフガング湖の中央付近の北岸の町。でも、道がないのかザンクト・ギルゲンから直行するバスはなく、一旦南岸の道を湖の東端のストロブルまで行き、ここで北岸を通るザンクト・ヴォルフガング行きに乗り換えます。

ヴォルフガング湖の向こうにシャーフベルク山

南岸の道を走るバスの車窓から、ヴォルフガング湖の向こうにこれから登るシャーフベルク山が見えます。

15分程で乗り換えのバス停、ストロブル・バス駅に到着。待合室のある立派な木造の駅舎。さすがは国鉄バス。

乗り換えのストロブルバス駅

次は546番のザンクト・ヴォルフガング行きのバスで10分余り。町の裏山に掘ったバイパスのトンネルを抜けた先で運転士に登山列車に乗り換えたいんだけどと尋ねると、この先だと言って降ろしてくれました。バスはまだ先まで行くようで、聞いてよかった。降りたバス停の名前は、St.Wolfgang im Salzk. Schafbergbf。

ラックレールと歯車のモニュメントが置かれたヴォルフガング・シャーフベルク駅

シャーフベルク鉄道の開通は1893年。バス停の前にヴォルフガング・シャーフベルク駅があり、客車の後部に機関車を連結した何本かの列車が停まっています。その後ろには、アプト式のラックレールと車軸の真ん中に歯車がある機関車の動輪のモニュメントも。

今日の運行の準備中

列車の始発は9時15分。早朝にザルツブルクを出てきたのでまだ1時間近くあり、運行の準備は始まっているものの駅の出札窓口は開いていません。ザンクト・ヴォルフガングの町の散策に出かけることに。

ヴォルフガング湖

映画サウンド・オブ・ミュージックでマリアと子供達が乗ったシャーフベルク鉄道は、他の鉄道とは孤立した路線で、接続する公共交通機関はバスと船だけ。

駅前のヴォルフガング湖畔には、接続する遊覧船の桟橋があります。船で来た場合、下船する場所はザンクト・ヴォルフガングではなく、シャーフベルクバーンなので要注意。

ザンクト・ヴォルフガングの教会

30分ほどで駅に戻ってくると、平日にもかかわらず観光客が増えています。往復切符を買って、調整中の蒸気機関車の横を通って案内された始発列車は…。

蒸気機関車を調整中

何と、ディーゼル機関車が付いてる!!。

あらかじめ調べてあった時刻表では、9時15分の始発の次は10時。この日は、ザルツブルクへの帰着が20時を過ぎるハードスケジュールのため、はじめから遅らせるわけにはいかず諦めて乗り込みます。

ディーゼル機関車でがっかり

客車は、各コンパートメント毎にドアのあるタイプ。ドアの窓だけが開き、閉めるときは窓枠の下端に取り付けた革のベルトを引き上げるタイプ。2両のうち、前の客車の先頭に前方を監視する職員が乗り、後部に連結した機関車で押し上げます。古そうに見えるけど実は最新型のようで、車内の照明はLED。

シャーフベルク鉄道の車内

本日の始発列車のためか、2両目の最後部には山上に届ける荷物が積み込まれています。

ヴォルフガング湖が見えて眺めのよい、進行左側の席を確保。

最後部の客室には荷物が積まれている
ヴォルフガング湖を背にディーゼル機関車が押し上げる

シャーフベルク鉄道の軌間はメーターゲージ。全長5.85kmの全線にアプト式のラックレールが設置され、標高542mのヴォルフガング・シャーフベルクバンホフから最急勾配1000分の255で、標高1732mのシャーフベルクシュピツェまで、機関車の歯車を噛み合わせ45分かけて登ります。

車窓のヴォルフガング湖

シャーフベルク鉄道にはZ11からZ14号まで4両の1992年製、軽油炊きの蒸気機関車があり、スイスのプリエンツ・ロートホルン鉄道の蒸気機関車と同型機で、煙突の形状以外はそっくり。

増発時には電気式のディーゼル機関車Vz31が加わるそうで、これに当たってしまったようです。ディーゼル機関車の屋根上に並ぶ四角い箱は、下山時に使う電気ブレーキの抵抗器でしょう。

急カーブ急勾配を行く

全線単線のため、始発から1.1kmと2.7km地点に列車交換のための信号所があり、4.1kmの標高1363m地点にある唯一の中間駅シャーフベルクアルペで列車交換が行われます。この付近で森林限界を超えるようです。

途中駅のシャーフベルクアルペが見えてきた

2個所のトンネルを抜け、列車は山上のシャーフベルク・シュピツェに到着。まずは、駅舎内で下山時の列車の予約です。多客時にはこれを忘れると、いつまでも下山できずに待つ羽目になるのだとか。

始発列車で登ってきたのでまだ下山客は少なく、職員に次の次の列車と伝えたら、予約は要らないよとの返答が帰ってきました。

山上のシャーフベルク・シュピツェに到着

駅の上方にホテルがある

駅舎から見上げる山上のホテル。ここからは歩いて登ります。


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