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共産圏の標準型タトラカー

第二次世界大戦後は、共産党政権のもと東側陣営に属し、コメコンによる計画経済で、チェコスロバキアのČKD-Tatra社が2万両近い大量生産をして、東欧からソ連を経て北朝鮮まで、旧共産圏各国に広く普及したトラムがタトラカーです。

1930年代に米国で、世界に先がけて始まったモータリゼーションに対抗するために開発されたPCCカー。戦後に米国からライセンスを購入して、東欧で開花したタトラカー。その成功には、地元のプラハ市電の全面的な協力があったのだとか。

開発順に左からタトラのT1、T2、それに14,000両以上製造され現在でも各国で活躍中のベストセラー、T3が並んでいます。

▲ 歴代タトラカー 左から右へT1、T2、T3

▲ 歴代タトラカーの後ろ姿 左から右へT3、T2、T1

集電装置はT1とT2がトロリーポール、T3だけがパンタグラフですが、T1の動態保存車5002号はパンタグラフ上げて街中の路線に出てきます。

1951年製の5001号は、初代タトラカーのT1。博物館の保存車両を見る範囲では、初のボギー車のようです。正面には共産主義のシンボル赤い星。その上にはチェコ(チェコスロバキア)と旧ソ連の国旗を掲げています。

PCCカー譲りの直角カルダン駆動、内側台車枠の車輪の間に非常用電磁吸着ブレーキを装備する高性能車。片運転台で片側3扉、車内はクッション付きのロングシートで、前と中扉の間にカウンターのある車掌台を設けています。照明は丸いグローブの中に白熱灯。

▲ 1951年製 タトラカーT1 5001号

▲ 5001号の車内

▲ 5001号の台車

正面窓が奥まった1955年製のタトラカーT2の6002号は、よりPCCカーに近いイメージ。T2だけ、後部にも方向幕を設置しています。

やはり車掌台を有するものの、座席は前向きでクッション付きの1人がけと2人がけの配置に。

▲ 1955年製 タトラカーT2 6002号

▲ 6002号の車内

▲ 6002号の台車

6149号は、1962年に登場のタトラカーの本命T3。正面窓が曲面ガラスになってよりスマートに。窓下の2灯のヘッドライトの間には、やはりチェコ(チェコスロバキア)と旧ソ連の国旗が。そういう時代だったのでしょう。

車内の照明は蛍光灯に。やはり車掌台を有するものの、前向きの座席はクッション付きで左右とも1人がけ。

▲ 1962年製 タトラカーT3 6149号

▲ 6149号の車内

▲ 6149号の台車

博物館の外に停まっていた6921号は、今ではプラハでもっとも古い部類に属するタトラカーT3。正面窓の中央にあったピラーが左右に分かれ、おでこの方向幕は系統番号挿しに、行き先板は運転室内部の正面の窓下に。その後の増備車や最近の更新車では方向幕が復活しています。

信用乗車でワンマン化され、車内に車掌台はなく、シートは簡素化されてプラスチック製のクッション無しに。

▲ タトラカーT3 6921号

もう1両のタトラカー9048号は、この博物館で一番新しい1990年製のKT8D5。角形で3車体連接車。この型式だけは両運転台で両側扉。プラハで現役のKT8D5は、バリアフリー化のため中間車のドア付近だけ低床に改造されて活躍中。この1両だけが改造を受けずに博物館入りしています。

▲ 1990年製の9048号

 

各種事業用車両

続いて事業用の車両を見ていきましょう。

2軸の凸型車体の電気機関車4072号は1952年製。2軸のトラムと同等の足回りに、運転室には直接制御の大きなコントローラ。

▲ 1952年製の4072号

▲ 4072号の車内

2軸の電動貨車4053号は1917年製。

▲ 1917年製の4053号

連結している2軸の無蓋車は1926年製。荷台が傾くダンプカーでしょうか。車端部にはハンドブレーキ。

▲ 1926年製の4552号

もう1両の木造無蓋貨車は、1917年製の4525号。隣の線路には、1934年製のフラットカー。

▲ 1934年製のフラットカーと1917年製の無蓋車4525号

2軸の無蓋貨車5007号は電車用でしょうか、変わった台車を履いています。

▲ 無蓋車5007号

2軸車の4092号は1966年製のレール研磨車。2軸の車輪の間にあるのは砥石でしょうか。

▲ 1966年製の4092号

▲ 4092号の足回り

1928年製の5034号は、移動式の切符売り場。車内のテーブルには各窓口に椅子が置かれ、多客時対応で電車で市内に牽引していったのでしょう。でも、留置するには運行の邪魔にならない側線が必要ですね。

▲ 1928年製の5034号

▲ 5034号の側面

▲ 5034号の車内

片側にデッキがあり、側面にベンチレータを備えた1930年製のボギー車5101号は、移動できる変電所のようです。

▲ 1930年製の5101号は移動変電車

▲ 5101号の車内

 

鉄道車両の部品もいろいろ

アプト式のラックレールとそれに噛み合う車輪。2軸車の台車と吊りかけ式のモータや各種直接式制御器も展示されています。制御器のカバーを開けて中の構造が見えるものも。

▲ 左はラックレール用の車輪 右は発電機?

▲ 2軸車の台車とモータ

▲ 各種直接制御器

▲ 制御器の内部をオープン

パネル展示もあります。

▲ パネル展示もあります

 

トロリーバスやバス

ここはプラハ市公共交通博物館。トラム以外に数は少ないもののバスや事業用の自動車も保存展示されています。

494号は1960年、地元の自動車メーカー、シュコダ製のトロリーバス。前後のバンパーの間に連結器を備えています。ポールを上げているものの、トラムの車庫内にトロリーバスに対応する+と-の架線はなく、残念ながら動けません。

プラハ市内のトロリーバスは1972年に廃止された後、博物館訪問の翌年2018年に架線とバッテリー併用のハイブリッド方式で復活したのだとか。隣の赤いクルマは架線修理車。

▲ トロリーバスと架線修理車

▲ トロリーバスの後ろ姿

145号の制御器とハンドブレーキの付いた運転台部分のカットモデルが。

▲ 架線修理車の後ろ姿と145号の運転席部分だけ

1948年製の赤いバス。屋根上に木製の台を乗せているので、これも架線修理に使うのでしょうか。

▲ 1948年製の架線修理車?

1951年、地元のシュコダ製のバス。フロントエンジンキャブオーバーで、中央と後ろの2扉は外に開く4枚折戸。車体の後部に梯子が付いていて、荷物は屋根上に積載したのでしょう。横に立つのは当時のバス停。

▲ 1951年製のバス

▲ 荷物は屋根に積む

もう1台、丸いモノコックボデーのキャブオーバータイプのバスは1973年製。正面にはシュコダのマークが付いています。後部には、何を牽引するするのか連結器のようなものも。バスが掲げているのはプラハ市の旗。

▲ 1973年製のバス

▲ フロントエンジンキャブオーバー

角張ったスケルトンボデーのバスは1985年のカロサ製。チェコのバスメーカーで、今はチェコのイヴェコになっているのだとか。EUのナンバープレートを付けているので、最近まで現役だったのでしょう。

▲ 3709号は1985年製

左は1970年代のバスでしょうか。やはり正面にはシュコダのマーク。車体の肩の部分に天窓があるものの、座席から見て観光バスではなく路線バスのようです。右は共産圏の標準型、1988年ハンガリーのイカルス製の連結車。まだ、ヘッドライトがまん丸です。

▲ 左の7135号は1970年代でしょうか 右の4382号は共産圏の標準型ハンガリーのイカルス製

▲ 天窓付きの7135号の車内

▲ イカルスの連結バスは1988年製

動態保存のレトロトラムの発車時間が近づいてきたので、このあたりで切り上げです。博物館の外にあった、1974年製となっているこのケーブル巻き取り機のような機械は何?

▲ この機械は何?

レトロトラムに乗ってプラハの市内巡りは、こちらから


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