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“チェコ プラハのトラム博物館”

プラハの公共交通博物館

東欧チェコ共和国の首都プラハ。市内には総延長140kmに及ぶ路面電車網があり、地元のタトラ社やシュコダ社が製造した高性能のトラムが活躍しています。

そのトラムの140年余りの歴史を伝えるトラム博物館(プラハ市公共交通博物館)が、プラハ城の近くにあるので行ってみることに。開館は、春から秋までの土日と祝日の9時から17時まで。また、開館日には動態保存のレトロトラムがトラム博物館を始発としてプラハ市内を運行します。

▲ プラハ市公共交通博物館

博物館は、トラムの車庫をそのまま利用しています。旧共産圏の標準型路面電車、タトラカーが停まっている後ろの建屋の扉に設けた、小さな通用口が開いているところが入口です。

▲ 車庫の建物をそのまま利用

中に入ったところがチケット売り場。運営にあたっているのは交通局のOBの方々でしょうか。

プラハ市内の公共交通機関の始まりは、19世紀の後半に開業した馬車鉄道。1875年から順次路線を延長していきました。馬車から2軸の電車に交代し、戦後になると共産圏の標準型タトラカーが登場します。

それでは、博物館に保存展示されている車両を年代順に見ていきましよう。まずは2軸の単車から。

▲ チケット売り場

 

始まりは馬車鉄道

車体の外側にハンドブレーキのある2軸の鉄道馬車は1886年製。御者と車掌の2人乗務。博物館の車両には製造年が表示されていて、解説が付いた車両もあるけど、チェコ語のみで全くお手上げ。

▲ プラハのトラムは馬車で開業

▲ 1886年製の2軸の馬車

 

2軸単車の時代

16年後の1891年になると、馬車とは別に電車で運行する路線が開通し、次々と新しい路線ができていきます。買収で経営を一本化し、1900年代になると馬車鉄道の路線も電化されます。

モニタールーフで緑の木造車体の2軸車、ポール集電の88号は、この時代の1900年製で、博物館で一番古い電車のよう。

▲ 1900年製の88号

朱色とクリームに塗り分け、今のプラハのトラムに通じる塗色の109号も同型で、翌年の1901年製。

▲ 1901年製の109号

109号に連結しているオープンスタイルの付随車526号は1886年製で、馬車の改造でしょう。

▲ 1886年製の526号

200号も同じ1900年製ながら側面窓の数や寸法が異なり、正面窓の両サイドは曲面ガラスになって、内装も豪華です。この時代に既に曲面ガラスがあったのか、それとも後年の改造でしょうか。

▲ 1900年製の200号

▲ 200号の車内

1908年製の275号は正面の窓が車体下部のより前に出ています。新造時には正面窓はなく、側面の折戸も含め後年の改造で取り付けたようにも思えます。

▲ 1908年製の275号

連結している付随車624号は1909年の製造で、275号と同様のスタイルながら側面窓が1つ少ない。

▲ 1909年製の624号

1909年製の297号も275号と同様のスタイル。正面窓上に掲げているのは、チェコ(チェコスロバキア)と旧ソ連の国旗。

▲ 1909年製の297号

297号は付随車を2両牽引しています。中間の638号は1909年製。側窓が4つで、上の624号と異なります。

▲ 1909年製の638号

後ろの728号は1920年製で638号と同じスタイル。車内は木製のロングシートで、吊り手は天井に直接取り付け。車端部にハンドブレーキだけを装備。

▲ 1920年製の728号

▲ 728号の車内

オープンカーの500号は1913年製。車内は転換式のクロスシート。夏の観光電車として活躍したのでしょうか。

▲ オープンカーの500号は1913年製

▲ 座席は1人がけと2人がけの転換式クロスシート

1915年製の357号も275号や297号と同じスタイル。大量に増備したんですね。

▲ 1915年製の397号

357号の牽引する付随車1314号は1931年製。車端部を絞ったシングルルーフ、正面1枚窓の密閉車体にモデルチェンジしています。2軸車では珍しく、ドアが車体の中央部にあり、客室が前後に分かれています。モーターがないのでこの部分にステップを設けることができたのでしょう。車内は木製のロングシートで車端部にハンドブレーキを装備。

▲ 1931年製の1314号

▲ 1314号の車内

1923年製の444号は同じデザインながら扉間の側面に幅の狭い固定窓と広い下降式の窓が交互に並んでいます。車体は長くなったでしょうか。車内は木製のロングシート。

▲ 1923年製の444号

444号の車内

444号の牽引する付随車は1926年製の999号。同じデザインながら正面窓が5枚から3枚に。それまでの木造から、リベットの目立つ鋼製車体になったようです。屋根は木製のシングルルーフ。

▲ 1926年製の999号

番号が大きく飛んだ2239号は1930年製。扉間の側面窓が5枚で車体は長くなっています。これ以後は、集電装置がトロリーポールからパンタグラフに。窓上に掲げているのはプラハ市の旗。車内は木製のロングシート。このタイプは、動態保存車として41系統で市内を運行しています。

右側に立つのは昔の停留所の標識で、ここに来る系統番号が掲げられています。

▲ 1930年製の2239号

▲ 2239号の車内

2239号の牽引する付随車1523号は1942年製。上の1314号と同じスタイルの中央扉ながら鋼製車体になり、リベットが目立ちます。

▲ 1942年製の1523号

▲ 1942年製の1523号

車端部を絞ったシングルルーフ、正面1枚窓の密閉車体の電動車3063号は1942年製。これから終点のループ線で方向転換する、片運転台片側扉の車体ににモデルチェンジしたようです。

2軸車には珍しい前、中、後ろの3扉で引き戸になっています。台車のある中扉には車内にステップが設置できなかったので、車外に折りたたみ式のステップを装備。前扉に設置した金網は、見学者が車内に立ち入らないようにしているもの。

車内は木製のロングシートながら、背ずり部分にクッションがあり、中扉の前はカウンターのある車掌台。正面窓や側窓の上にはベンチレータ。このタイプも、動態保存車として41系統で市内を運行しています。

▲ 1942年製の3063号

▲ 3063号の車内

3063号の牽引する付随車1580号は第二次世界大戦後の1946年製。ドアが車体の中央部にあり、客室が前後に分かれています。車内は木製のロングシートながら背ずり部分にクッションがあり、車端部にハンドブレーキを装備。吊り手は琺瑯製でしょうか、形状が珍しい。

▲ 1946年製の1580号

▲ 1580号の車内

3083号は1948年製。戦後も戦時型の3063号と同じ図面で増備していたのでしょう。

▲ 1948年製の3083号

3083号が連結している付随車1583号は1964年となっています。上の1580号の車体両側の中央扉に対して、片側にのみ前後2個所に金属製の折戸があり、後部に2灯のテールライト。車内はクッションのあるロングシートで、前扉の近傍に車掌台のカウンターがあり、照明は蛍光灯。1940年代の車両を、1964年に扉の移設や車内の近代化など更新改造したのでしょう。

▲ 1964年製となっている1583号

▲ 1583号の車内


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