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旅の車窓から

ポルトガル ポルト・ブラガ


北西スペインのビーゴから列車で国境を越えてポルトガル第二の都市ポルトへ。メトロとトラムでめぐるポルト市内と、ポルトガル鉄道の高速列車アルファペンドゥーラールに乗って宗教の街ブラガにご案内します。
 

スペインから陸路でポルトガルに入国

2011年の秋にポルトガルに行きました。前回、1999年の訪問から12年ぶりです。(1999年のポルトガルは、こちら)。今回の目的は、もう一度リスボンの小さなトラムに乗ってトラム博物館を訪ねることと、前回、十分な時間がとれずにチョイ乗りに終わってしまったポルトのクラシックなトラムに乗って、こちらもトラム博物館を訪問することです。

はじめの計画では、スペイン北西部のビーゴから国際列車でポルトに入り、首都リスボンに移動して滞在、夜行寝台列車でスペインのマドリードに戻ることにして、寝台券も確保していました。ところが、ヨーロッパの経済危機によりEUに救済を求めたポルトガルでは、融資の条件となる緊縮財政に反対するゼネストが夜行列車に乗る当日に決行されることになったため、ポルトガル北部をちょっと巡っただけでリスボン行きを諦め、ゼネストの前日にポルトからLCCでスペインのマドリードに脱出することに。

※ 6ページの末尾にそれぞれリンク先を設けました。詳しく知りたい方はご利用ください。

 


出発はスペインのビーゴ駅から

スペインのビーゴとポルトガルのポルトを結ぶ国際列車は、朝と夜の1日に2本のみ。7時46分の列車に乗るため、ホテルからタクシーで駅に向かいます。11月のスペイン西部の日の出は8時半頃。まだ真っ暗で、夜明けの気配も感じられません。

駅の窓口で、ポルトと書いたメモを見せたところ、駅員がゴソゴソ箱の中を探して、英文の書かれた1枚の紙を見せます。それによると、ここではスペイン側の最終駅までの切符を売るから、その先は車内で車掌から買うようにとのこと。OKすると、トゥイまでの切符が出てきました。

始発のスペイン国鉄ビーゴ駅 7時46分始発のポルト行き

駅のカフェテリアで朝食を済ませてホームに出ると、CPのマークが描かれたポルトガル鉄道の3両編成のディーゼルカーがアイドリング音を響かせて発車を待っています。ポルトガルも、線路幅はスペインと同じ(2〜3mm違うという説もありますが)広軌のため、直通運転が可能です。

この列車、2等車3両編成のモノクラス、ポルトガル鉄道がスペイン国鉄から購入した中古車と思われます。中央の肘掛けに傾斜がつく転換クロスシートは、引き出し式の灰皿やミニテーブルはありませんが、袖の部分の仕切の形状も含め、初期の0系新幹線のシートにそっくりです。シートピッチは0系新幹線より広く、バケットタイプのクッションも含め座り心地はJR九州のキハ31に残る新幹線のシートより良好です。ただ、窓割りとシートピッチが合わず、横が壁に面した席も多数。

ポルトガル鉄道の車両だがスペイン国鉄の中古車 車内は転換式クロスシート

列車はまだ真っ暗な中3両にわずか3人の乗客を乗せて、定刻にビーゴを発車します。各駅に停車して、若干名の乗客が乗ってきます。

8時20分過ぎになってやっと夜が明けはじめてきた頃、スペイン最後の駅トゥイに到着します。ここまでの間、車掌さんの検札はありません。スペイン国鉄のトゥイ駅にやってくる列車は、ビーゴ-ポルト間の1日に2往復だけ。

 


ヴァレンサでポルトガル入国

トゥイ駅からは誰も乗って来ず、列車はわずかな乗客をのせただけで国境の鉄橋に向かいます。立ちこめる朝靄の中、スペインのトゥイから国境のミーニョ川を渡ってポルトガルのヴァレンサに向かう国際列車の車窓をご覧下さい。

朝靄の中スペインからポルトガルへ国境の川を渡る国際列車の車窓

国境を越えたポルトガル側の最初の停車駅はヴァレンサ。スペインとポルトガルの間には1時間の時差があるため、ここで時計を1時間遅らせ、朝の7時半過ぎに戻します。両国ともシェンゲン協定に加盟しているため、国境の検問はありません。

ヴァレンサでは通学の高校生が大勢乗ってきて、ガラガラだった車内が急に賑やかになります。ここからこの列車は快速運転になり、小さな無人駅は通過していきます。ヴァレンサから先のポルトガル国内は、ビーゴ始発の国際列車2本を含めポルト行きの快速が1日に6本と、途中駅ビアナ・ド・カシュテロまでの各駅停車が5本あり、列車本数が増えます。

各停運用につく2両編成の気動車 ビアナ・ド・カシュテロ駅で乗客が入れ替わる

車掌が検札に来たので、スペイン国鉄のビーゴ駅で買ったトゥイまでの切符を見せて、ポルトまで車内精算をします。渡された車内補充券は、ヴァレンサからポルトになっています。国境をはさむトゥイからヴァレンサまでの間は無賃乗車ってことでしょうか。

停車駅ごとに高校生が入れ替わり、通学時間を過ぎると一般客がチラホラ残るだけ。日本のローカル線と状況は同じですね。線路が海岸に近づき大西洋が見えてくると、沿線で一番大きな街ビアナ・ド・カシュテロに到着します。ホームには、各停運用につくステンレス製の2両編成の気動車が停車していて、ここで大半の乗客が入れ替わります。

ポルトガル北部ローカル線の車窓 入れ換え用のディーゼル機関車?

ビアナ・ド・カシュテロは大西洋にそそぐリマ川に面した歴史のある街で、私もここで途中下車したかったのですが、荷物の管理等も考えてそのままポルトに直行することにします。リマ川の鉄橋を渡ると線路は内陸に向かい、車窓に田園風景が広がります。

ブラガから来る路線が合流するニーネから先は電化区間となり、ポルト近郊の各駅に停車して乗客が増えてきます。複線区間で近郊電車とすれ違います。そういえば、スペインの国鉄は右側通行ですが、ポルトガル鉄道は左側です。このスペインの中古気動車は、改造せずに右側運転台のままで使っているようです。

 

ポルトカンパニャン駅到着

こうしてビーゴから3時間余り、国際列車とはいえ実態はローカル線の快速列車は、ほぼ定刻にポルトの東の街外れにある、終着ポルト・カンパニャン駅に到着します。この列車の2号車に乗って国境を越えたのは私の他に途中駅から乗ってきた若い女性が一人だけ。彼女はビアナ・ド・カシュテロの手前の駅で下車しているので、スペインからポルトまでこの列車で来たのは私1人だけかもしれません。

終点ポルト・カンパニャンに到着した国際列車 クラシックなポルト・カンパニャンの駅舎

ポルト・カンパニャン駅は長距離列車が発着する駅で、旧市街にあるポルト・サンベント駅に行くには近郊電車に乗り換えます。ホテルはサンベント駅の近く、12年前にも泊まったメルキュールを予約していますが、駅からメルキュールのあるバターリャ広場へは、荷物を引いて登るには急過ぎる坂道のため、少し距離はあるもののメトロに乗り換えてボリャオン駅を目指します。

12年前のポルト訪問時にまだメトロはありません。2002年に開業してから、現在ではA〜Fの6系統に成長しています。カンパニャン駅にはD以外の5系統が来ていて、途中まで同じ路線を走り、末端でそれぞれの系統に分岐していきます。旧市街は地下を走るものの大半は専用軌道で、一部には路面区間もあり、実態はLRTです。

ポルトメトロの新車
ボンバルディアのフレキシティスイフト
メトロの新型車フレキシティスイフトは部分低床車

メトロには、ポルトガル鉄道と同様に改札口はありませんが、ホームの入り口にはICカード読み取り機が立っていて、その足下にはここにタッチしなさいの絵が描いてあります。絵を無視してホームの向こう側まで通り抜け(ホーム内で検察にあったら罰金だったかも)窓口を探したのですが、券売機しか見つかりません。仕方なく、券売機を英語表示に切り替えて、メトロの他にトラムやポルトガル鉄道の近郊線にも使える24時間券を買ったつもりだったのですが……。

クレジットカードサイズの青い紙でできた切符にはICチップが入っていて、繰り返してチャージできるようですが、耐久性はどうなんでしょうか。

台車のある中間車は床が一段高くなっている バターリャ広場を通る22系統のトラム

メトロのホームは低く、開業以来の車両は7車体連接の全低床車、フランスのストラスブールやイタリアのミラノと同じボンバルディアのユーロトラムですが、最近導入した新車は3車体連接車で両先頭車の連結面よりの2個所のドア間のみ低床で、台車のある先頭部分と中間車の床は一段高くなった、フレキシティスイフトに変わっています。

イニシャルコストやメンテナンス、あるいは高速運転を考えてのことでしょうか、運賃の収受の必要のないヨーロッパのLRTでは、最近は全低床車から部分低床車に戻す事業者が見られます。在来車と新型車でドアの位置や数が全く異なりますが、気にしていないのでしょう。昼間でも乗客数は多く、2編成の併結の列車も数多く見られます。

 

ポルトのクラシックなトラム

ボリャオン駅で下車して地上に出て、両側に商店がならぶ賑やかなサンタ・カタリナ通りをバターリャ広場に向かいます。見覚えのある広場とメルキュールホテル、向かい側に建つ教会はポルトガルに特徴である青いタイル、アズレージョで飾られ12年前と同じ姿です。でも、嬉しいことに新しく広場に単線のレールが敷かれ、22系統のクラシックなトラムが吊りかけモーター音を響かせながらサンベント駅から急な坂道を登ってきて、バターリャ広場のすぐ先の終点バターリャで折り返していきます。

サンベント駅から
バターリャ広場への登り坂
バターリャ広場の
メルキュールホテル
バターリャ広場のトラム

まだ午前中なので、荷物をホテルに預けて街に出ようと思ったのですが、追加料金無しでチェックインできました。部屋で一休みの後、ホテルの表に出ると、カルモ行きの22系統のトラムが目の前を通り過ぎていきます。停留所の時刻表を見ると何と30分間隔。これでは待っていられないので歩いて旧市街の散策に出かけます。

 
リベルダーテ広場の先に建つポルト市庁舎 ポルト大学

トラムの線路に沿って急な坂道を下ると、南北に長いリベルダーテ広場を横切ります。広場の北に建つのは高い塔を持つポルト市庁舎。ここから線路は再び上り坂となり、いくつかの停留所を経てポルト大学とカルモ教会の建つカルモ広場まで歩いてしまいました。22系統と18系統のトラムは、正面窓上の行き先に“CARMO”と表示しており、ここで接続するはずです。

     
カルモ教会を背に22系統のトラムが到着       反対側から18系統のトラムがやってきた

カルモからトラム博物館のあるマッサレロスを結ぶ18系統に乗るため待っていると、22系統がポルト大学の角を曲がってきてここで小休止。しばらくすると、反対側のコルドアリア庭園の茂みの中から18系統が現れます。2両の電車はここで接続を取り、運転士が正面窓上の行き先板を差し替えます。

カルモの停留所で18系統と22系統が接続 行き先札を差し替える

こんなクラシックな電車にも、車内にICカード読み取り機が付いて、地元の乗客は乗車時にピッとやっています。18系統に乗って、メトロで買った24時間券をタッチしようとすると、運転士からそのカードは使えないと言われてしまいます。どうやら、メトロ専用の24時間券を買ってしまったようです。メトロの券売機には、これ以外の選択肢がなかったようにも思うのですが。仕方なく、運転士から紙の切符を買い求めます。観光客料金でしょうか、2.5€、ポルトガルにしては高い!

 


 

 

 

 

 

 

  

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