ケーブルカー駅の前の通りが電車通り。でも、リスボンの西に位置するベレンへ行く15系統のトラムに乗るには、もう1本南のテージョ川沿いの大通りに出る必要があります。川沿いの15系統は、平坦な路線で急カーブも少ないため、3車体連接の部分低床車が主力になっていますが、やってきたのは小型車で観光客で満員。28系統で使うトロリーポールは下ろして、この路線ではシングルアームのパンタグラフを上げています。途中ですれ違った赤いトラムは、観光専用で別料金。1回券や24時間券では乗れません。
テージョ川沿いを行くトラム |
電車通りとジェロニモス修道院 | ジェロニモス修道院サンタマリア教会 |
ジェロニモス修道院の停留所で、ほとんどの乗客が下車。東西の電車通りに並行して、白亜の修道院の長い建物が続いています。
ヴァスコ・ダ・ガマの喜望峰を回るインド航路の発見を記念して、エンリケ航海王子が建設した礼拝堂をもとに、ポルトガル王マヌエル1世が建設したジェロニモス修道院。ポルトガル絶頂期の大航海時代に植民地支配で得た巨万の富をつぎ込み、16世紀初めの着工から300年以上もの年月を要して19世紀に完成をみています。後で行く、ベレンの塔とともに世界遺産に登録されています。
サンタマリア教会正門上の聖母子像 | サンタマリア教会正門のエンリケ航海王子像 |
日曜日は無料開放ですが、10時のオープンに合わせてやってきたのでまだ誰もいない?と思ったら、聖母子像やエンリケ航海王子像のあるサンタ・マリア教会の正門にあたる南門は一方通行の出口専用で、入口になっている西門には既に行列ができています。
ヴァスコ・ダ・ガマの棺 | カモンイスの棺 |
それほど待つことなく、修道院に付属するサンタマリア教会に入場。いきなり出迎えてくれるのは、ヴァスコ・ダ・ガマの石棺と、ポルトガルの詩人カモンイスの石棺。教会内は、植民地に生えている椰子の木をモチーフとした柱が高い天井を支え、中心礼拝堂にはマヌエル1世とその王妃、王子とその王妃の棺が置かれ霊廟となっています。礼拝堂の後面にはキリストの生涯を描いた5枚の絵があり、朝の陽光を受けて輝くステンドグラスには、王の婚礼シーンが描かれているのだとか。
椰子の木をモチーフにした柱と天井 | 王の墓のある祭壇 | ステンドグラス |
サンタマリア教会から一度外に出て並び直し、今度は修道院の回廊へ。こちらが平日は有料になるようです。中庭を取り囲む回廊の柱やアーチには、船のロープや貝、植民地の動植物等、ポルトガルの大航海時代を象徴するモチーフが彫り込まれています。奥行きが50mはあろうと思われる、広い食堂の壁を取り囲む18世紀のアズレージョが美しい。
修道院の食堂 | 修道院の回廊 |
中庭を取り囲む回廊 | 2階の回廊から見たサンタマリア教会 |
ジェロニモス修道院の建物は西側が海洋博物館になっていて、こちらも日曜日の14時までは無料開放。入口でエンリケ航海王子の出迎えを受けます。帆船や蒸気船の模型から、航海計器やGPSや通信設備の無い時代に位置を割り出した天体観測機器など、大航海時代から近年に至る海洋国家ポルトガルの歴史にふれることができます。
海洋博物館の入口 | エンリケ航海王子の像と世界地図 |
帆船模型 | 羅針盤や地球儀 |
天体観測機器 | 各種船舶の模型 |
ジェロニモス修道院から電車通りを渡り、リスボンのカイス・ド・ソドレとカスカイスを結ぶ近郊電車の線路を地下道でくぐり抜けた先に、テージョ川に突き出すように建つのが1960年にエンリケ航海王子500回忌を記念して造られた発見のモニュメント。エンリケ航海王子を先頭に、大航海時代に活躍した探検家や学者、船乗りや宣教師などポルトガルの偉人の像が両側にならびます。
発見のモニュメント東側 | 後ろから2人目がフランシスコ・ザビエル |
東側の前方にはヴァスコ・ダ・ガマやマゼランが、後ろから2人目には、日本でキリスト教の布教をおこなったフランシスコ・ザビエルもいます。足元の広場には、白とブラウンの大理石で世界地図が描かれ、年号が数字で刻まれています。ポルトガルによる日本の発見は、1541年だそうです。
日本の発見は1541年 発見のモニュメント西側
発見のモニュメントは展望台に上がれるようになっていますが、ここは日曜日でも無料にならないので、テージョ川の下流側に見えるベレンの塔に登ることに。テージョ川のテラスから、行き交うヨットと4月25日橋、対岸の丘に立つクリスト・レイが見渡せます。
発見のモニュメントと4月25日橋 | ヨットの浮かぶテージョ川対岸のクリスト・レイ |
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水陸両用バスがいた | テージョ川を行く水陸両用バス |
観光客を乗せた水陸両用バスがやってきました。斜路から川の中にザブンと入っていきます。
発見のモニュメントからベレンの塔まで、歩くと以外と遠くて1km以上はあるでしょうか。途中に川岸から切れ込んだ船溜まりがあって、遠回りを余儀なくされます。
ベレンの塔は、ジェロニモス修道院と同時代の16世紀のはじめに、マヌエル1世がテージョ川を通行する船を監視し、河口を守る要塞として建てた監視塔。高さ35mの塔は沖からでもよく見え、長くて危険な航海から故郷に戻ってきた船を迎えるシンボルでもありました。後には、税関や灯台としても使われ、世界遺産となっています。
ベレンの塔 | 堡塁部分1層は潮の干満を利用した水牢 |
木造の橋を渡って塔に入りますが、狭いために入場者数を制限しているようで、無料ということもあってかなかなか列が前に進みません。内部は、基礎の堡塁部分が2層、その上に塔が4層の構造になっていて、入口は堡塁部分の2層目。川に面して開いた四角い窓の内側から、大砲が外を睨んでいます。
その下の堡塁部分の1層目は政治犯を閉じ込めた水牢になっていて、河口近くのテージョ川は潮の干満があるため、牢内に水が侵入する時間帯があるのだとか。
川側(南)から見たベレンの塔 | 2層目の国王の間から見た1階と地下1階 | 3層目の謁見の間 |
塔の1層目は武器庫、優雅なアーケード状の柱廊を持つ2層目は国王の間、3層目は謁見の間、4層目は礼拝堂と続きます。4角に哨兵台を持つ屋上テラスからの眺めは絶景です。
4層目の礼拝堂 | 屋上からの眺め 向こうに発見のモニュメント | 屋上テラスから降りる階段の信号待ち |
塔内を上り下りする急な階段が極端に狭く、すれ違いが困難なため歩行者信号を設置して時間を分けての一方通行になっています。赤信号による待ち時間が長くて、なかなか進めません。そういえば、ガイドが引率する客は見かけませんが、ベレンの塔は団体での入場は困難でしょう。