タージ・マハルからホテルに戻り、昼間は暑いので昼寝を兼ねての休憩です。陽が西に傾き、影が長く伸びるようになってから、アグラ城の観光に向かいます。アグラ城は16世紀の後半のデリーからアグラへの遷都にともなって、ムガール帝国第3代皇帝アクバルによって築かれた要塞を兼ねた居城で、内部の多くの建物はタージマハルを建てた第5代皇帝シャー・ジャハーンによって建造されました。こちらも世界遺産です。
入口のアマール・シン門をくぐって城内へ。緑の庭園に面して建つシャハンギール宮殿は、第4代皇帝の名が付いていますが、建てたのは父の第3代皇帝アクバル。その前に鎮座する大きな石の容器は、王妃がバラの香油を抽出するために使ったという説や浴槽との説がありますが、こんな所で露天風呂? 宮殿内部は、イスラム様式と細かい彫刻のあるヒンドゥー様式が調和しています。
アグラ城の入口アマール・シン門 | シャハンギール宮殿 |
宮殿の正面に石の浴槽? | 宮殿の中庭 ヒンドゥー様式の彫刻 |
宮殿の内部 | アグラ城からヤムナー川沿いに望むタージ・マハル |
アグラ城から望むタージマハル。ヤムナー川が湾曲している部分に建っているので、タージマハルが川に浮かぶように見えます。
シャハンギール宮殿からシャー・ジャハーンが三男の第6代皇帝アウラングゼーブに幽閉された囚われの塔(ムサンマン・ブルジ)に続く部分では、内部が大理石でタージマハルと同様の象嵌細工が施されている部分もあります。シャー・ジャハーンが亡くなるまでの7年間、タージマハルを見ながら過ごした囚われの塔には、観光客は立ち入れませんが、この場所からでも窓を通して同じタージマハルの姿が望めます。
シャハンギール宮殿の外側 | 窓の向こうにタージ・マハルが見える |
宮殿の内部 | 大理石に花や草を表す象嵌細工 |
囚われの塔(ムサンマン・ブルジ) | 鉄橋を渡る業務用レールバス? |
囚われの塔(ムサンマン・ブルジ)は、外部に突き出した8角形の塔。その遥か向こうに、前日にアグラ到着前に列車で渡った鉄橋が見えます。ズームアップすると、工事用のレールバスでしょうか、小さな車両が単行で鉄橋を渡っていく姿が 。
花弁型のアーチに列柱が並ぶ白い大理石の建物は、一般謁見の間(ディワニ・アーム)。中央には、皇帝の玉座が置かれています。アングリー庭園をはさんだ寝殿(ハース・マハル)と、シャー・ジャハーンが娘のために建てたローシャン・アラの館を巡ってアグラ城の見学はおしまい。
一般謁見の間(ディワニ・アーム) | イスラム模様と柱 |
皇帝の玉座 | 一般謁見の間から見た寝殿 |
寝殿(ハース・マハル)とアングリー庭園 | ローシャン・アラの館 |
夕食のレストランに向かう道で、ガイド行きつけのチャイの店に立ち寄ります。茶葉を煮出し、牛乳と混ぜるパフォーマンスを見せ、最後は鍋からグラスに注いでくれます。インドのチャイは、いつ何処で飲んでもおいしい。
露店の果物屋で、また完熟マンゴーを買い求めます。隣で生ゴミを漁る野良牛の姿にも慣れました。
ガイド行きつけのチャイの店 | |
生ゴミを漁る野良牛 | アグラの夕食もやっぱりカレー |
アグラの夕食もやっぱりカレー。
インド8日目の朝食は、窓から向こうにタージマハルの見えるホテルの最上階のレストラン。今日はデリーへ向かうため、これでもう見納めです。
デリーとアグラの間には、高速列車シャダブディ・エクスプレスが運行されているのですが、残念ながら午前の適当な時間帯に列車がないようで、アグラの現地旅行社のクルマでデリーに向かいます。
ホテルの最上階からタージマハル | ホテルの朝食 |
まだアグラ市内を抜ける前、遮断機が下りている踏切をバイクや自転車が平気で横断しています。これだから夜行列車が連続して汽笛を鳴らし、うるさくて寝付けなかったことに納得。ガイドに断って、クルマを降りて踏切でカメラを構えます。その前を、汽笛を鳴らしながら電気機関車が牽引する旅客列車が高速で通過。
遮断機の下りた踏切を渡る | 電気機関車牽引の旅客列車 |
旅客列車の最後尾 | この三輪車に何人乗ってるの |
道行く三輪車には、一体何人が乗っているのでしょうか。牛の牽く荷車も積載量オーバーだと思うのですが。この他、高速道路では、横断する歩行者や路肩を逆走するクルマなど、何でもありの世界です。
途中で休憩したドライブインでは、お釣りの中に破れたお札が混入してきたので、すぐにその場で突き返します。外国人と思ってなめられたようですが、インドでは破れたお札は受け取ってもらえないとのこと。油断も隙もありませんが、何とか無事にデリーに到着。
牛の牽く荷車も現役 |
昼食は、タンドリーチキンとカレー。食後はホテルまで送り届けて今日は終わりの日程ですが、まだ時間が早いので鉄道博物館の案内とデリーメトロの乗車についてガイドと交渉します。ガイドも早く自宅に帰りたかったのか、どちらか一方だけ付き合ってくれることになり、鉄道博物館を選択。
アグラの旅行会社のクルマは返してしまい、荷物が邪魔になるので近所の土産物屋に預かってもらえばとのこと。そういえば、まだ何も土産を仕入れていなかったのと、旅行会社に対するリベートがゼロではガイドの立場もあるかと考え、土産物屋で紅茶を買うことに。安いのか高いのかよくわからない(外国人観光客相手でぼられているのに決まっている)まま購入。インドルピーが足りないと言ったら日本円でもOKとのこと。お釣りを出さずに、その分相当する(と言っている)商品を押しつけてきます。こんな相手には“全部キャンセル”にするところですが、大した金額でもないので預けた荷物に悪さをされても困ると思い、渋々受け入れます。ホント、インド人は押しが強い。
タンドリーチキンとカレー | オートリキシャに乗って |
土産物屋の前から、オートリキシャを拾って鉄道博物館へ。巨大なブロードゲージのガーラット型蒸気機関車からナローゲージまで、植民地時代からインドの鉄道で活躍してきたインドの鉄道で活躍してきた車両が数多く展示されています。
暑いのでガイドを展示館で待たせて屋外の車両を見て回っていたら、“もう帰ろうよ”とガイドが呼びに来ました。後ろ髪を引かれる気分でオートリキシャに乗り込みます。
インド国立鉄道博物館については、こちらで詳しく紹介しています。
鉄道博物館の正門 | 正門を入ったところ |
鉄道博物館の各種展示車両 |
インド9日目は帰国日。7時にインディラー・ガンディー国際空港発の便で乗り継ぎ地の香港に向かうため、未明にホテルをチェックアウト。この8日間、参加者1人のパックツアーに二人三脚で付き合ってくれたガイドにチップをはずんで別れます。
5月はのインドは乾期で、デリーやアグラの昼間の気温は40℃を超えます。ホテル泊と夜行列車を交互に繰り返すハードなスケジュールでしたが、お腹をこわすこともなく、昼と夜の食事のカレーを毎日おいしくいただくことができ、旅行会社のスケジュールにはないコルカタのトラムやデリーの鉄道博物館にも訪問でき、満足度の高い旅でした。
10年間お蔵入りしていた当時の写真と資料、メモを引っ張り出して2005年のインド旅行記をまとめました。この10年で、首都デリーではメトロの路線網が充実しましたが、それ以外には大きな変化はないようです。
インドは、他のアジアの国々に比べて個人旅行のハードルの高さは、ここ10年で何ら改善が見られないように思われます。ネットでもガイドブックでも、デリーの空港到着時点から声をかけてくる客引きやオートリキシャの運転手に騙された、ぼったくられたなどの被害にあった日本人は数知れず、治安や衛生上の問題も多く報告されています。
日本から添乗員付きのパックツアーに参加して高級ホテルに宿泊し、隔離されたバスの窓から街を眺め、ガイドの後ろに団体でゾロゾロ付いて観光地を点から点へと移動し、フリータイムなしのスケジュールであれば、このような問題を心配することがないのでしょうが、インドまで来てこれでは私には耐えられません。
鉄道を利用して現地の人とふれあう機会も持ち、インドを満喫しながら安全に旅行するには、主に中小の旅行社が提供する1人または2人から催行のパックツアーで、空港や駅とホテルの送迎だけが付いてあとはフリー、あるいはスルーのガイドと観光が付くコースが現実的と思います。
2005年5月旅
2015年2月記
これからお出かけになる方や鉄道ファンの方に役立ちそうなリンクをそろえました
- インド政府観光局 (英語、日本語ほか) インド政府観光局公式サイト 地図や観光案内資料のダウンロードサービスあり
- インド大使館 (日本語、英語) インドに入国するには日本人でもビザが必要です
- 天竺奇譚 (日本語) インドの夜風にふかれましょう インドの神様の解説が参考になります
- インディラー・ガンディー国際空港 (英語) デリーの国際空港公式サイト
- インド鉄道 (英語) インド鉄道公式サイト
- TRAINSPY.COM (英語) インドの列車検索
- デリーメトロ (英語) デリー市内を縦横に走るメトロ公式サイト エアポートエクスプレスも運行
- デリー観光局 (英語) デリー観光局公式サイト
- フマユーン廟 (英語) デリーのフマユーン廟公式サイト
- クトゥブ・ミナール (英語) デリーのクトゥブ・ミナール公式サイト
- コルカタメトロ (英語) コルカタのメトロ公式サイト
- コルカタトラム (英語) コルカタのトラム公式サイト バスの情報も
- ビクトリア記念堂 (英語) コルカタのビクトリア記念堂公式サイト
- インド博物館 (英語) コルカタのインド博物館公式サイト
- バナラシ (英語) バナラシ公式サイト
- サルナート考古学博物館 (英語) サルナートの考古学博物館公式サイト
- タージマハル(ユネスコ世界遺産) (英語、一部日本語) ユネスコ世界遺産リストの中のタージマハル
- アグラ城 (英語) アグラ城公式サイト