“ドイツ ライプツィヒ トラム博物館” |
ドイツ東部、ザクセン州のライプツィヒは、バッハ、メンデルスゾーン、ゲーテ、シラーなどそうそうたる音楽家、文豪を輩出した文化の都。州都ドレスデンを押さえて、旧東ドイツでは首都ベルリンに次ぐ第二の都市でした。旧東ドイツでは、地下鉄があるのはベルリンだけ。ライプツィヒの都市交通の主役は、昔も今も路面電車です。
そんなライプツィヒに、歴代のトラムを保存するトラム博物館があります。でも、開館するのは5月から9月の第三日曜日の1年に5日だけ。ドイツ鉄道ライプツィヒ中央駅前から、11系統のトラムでMöckern, Historischer Strbf.(トラム博物館前)まで14分ですが、開館日には博物館の動態保存するトラムによる29E系統の市内を循環するトラム博物館行きが、1時間間隔で運行されます。
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ライプツィヒ中央駅前のトラム博物館行き電車 |
中央駅前にやってきたのは、2両の2軸単車の間に車輪のない小さな車体をはさんだ3車体連節車。1967年旧東ドイツ製のゴータカー1206号です。乗車前にホームの乗客に使い方を教えてもらって、券売機で1.3€の市内1時間券を買っていたのですが、この臨時電車には使えないとのこと。車掌さんからトラム博物館の入場券とセットになった4€の乗車券を購入します。
トラム博物館に向かうゴータカーの車窓を、動画でご覧下さい。
ゴータカーは、トラム博物館のあるブロックを一周するループ線で方向転換して停車。乗客が下車すると、車掌さんもカメラを取り出してこの電車を撮っています。10分ほど休憩した後、電車は再び市内に向けて発車していきます。
トラム博物館前に到着した29E系統 ライプツィヒトラム博物館では、車庫を活用して1896年から1976年に製造された市内で活躍した歴史的な電動車19両と付随車14両、馬でひくトラムと切符販売車、移動住宅とクレーン車それぞれ各1両ずつを保存していますとホームページ(ドイツ語だけ)にありますが、Möckernのトラム博物館に全ての車両が置かれているわけではないようです。
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トラムの車庫を活用した博物館 |
この博物館には、保存車両の説明を書いた看板等はありません。ホームページで紹介されている車両は3両だけ。4月1日から9月末日までの間、動態保存されている16両の中から選んで、市内の路線を貸し切りで運行できるそうで、ホームページに車両ごとの料金表が掲載されていますが、そこには製造年の情報があるだけです。
ライプチヒのトラムは、1872年に馬が牽くホーストラムとして開業しています。馬に牽かれた95号は、1908年(製?)の類似の車両(Salzstreubeiwagen)からで改装されたようなことがホームページに書かれています。車内は木製のロングシート。テーブルが邪魔ですね。
始まりは馬車軌道 馬車軌道の車内
トロリーポール集電、モニタールーフでオープンデッキの2軸単車308号は、この博物館最古の1896年製。この年の4月から路線を電化して、電車による運転が始まっていますが、308号は8ヶ月遅れの同年12月の製造。電化開業日の車両ではないものの、可動状態にある電車としては、ヨーロッパ大陸では最も古い車両だとか。出力は22kW。側窓は下降式で、カーテンはなく鎧戸を下から引き上げるタイプ。車内は木製のロングシート。吊革は、これ以後の車両も含め本物の革製。
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最古の可動車 2軸単車308号 |
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モニタールーフでオープンデッキの2軸単車257号は、1911年製。集電装置がビューゲルになっていますが、ヨーロッパではもうこの頃から使われていたのでしょうか。連結しているのは同じ形態の付随車305号。上の308号に比べ、側面窓が大きく近代的なデザインです。2段窓は、下段が下降式。車内は木製のボックスシートで、通路をはさんで2人がけと4人がけ。背ずりの金属製の取っ手は後年の設置でしょうか。
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オープンデッキ モニタールーフの257号 |
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257号と同じ形態の付随車305号 |
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305号の車内 |
モニタールーフでオープンデッキの2軸単車179号は、1900年製のSalonwagenとなっているので、1等車でしょうか。側面は両側に大きな窓を配置していますが、当時この大きさの1枚ガラスが製造できたのだったらドイツの技術力はすごいかも。車内は木製のロングシートですが横引きのカーテンが付き、照明のカバーもカットガラスふう。
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Salonwagenの179号 |
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179号の色違いのような類似の500号は、1906年製。車内はロングシートですが、照明器具や座席はSalonwagenの257号より凝っていますね。大きな窓の内側に、手すりがあります。
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豪華な車内の500号 |
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モニタールーフでオープンデッキの2軸単車349号は、電化の翌年1897年製。側面窓が4枚で大きくなり、上部にRがつくなど、より鮮麗なデザインに。集電装置はビューゲルをつけています。車内の写真を撮り忘れました。
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1897年製の349号 |
モニタールーフでオープンデッキのボギー車20号は、1910年製。運転台の正面が5枚窓になり、車輪径の異なるマキシマムトラックの台車を履いています。ヘッドライトが運転室内にあるのが珍しい。車内は通路をはさんで2人がけと4人がけのボックスシート。モケット張りですが、後年の改造かもしれません。中央部分の2人がけのシートをはずしてストーブを設置し、煙突が屋根にのびています。
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E50型号42号機の動力部分 |
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20号が連結している、モニタールーフでオープンデッキの2軸単車86号は、1896年製の付随車。電化当初から連結運転が行われていたようです。側面は6枚窓ですが、翌年製造の349号のように上部にRがついたデザインで下降式。カーテンはなく鎧戸を下から引き上げるタイプ。車内は木製のロングシート。
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1896年製の付随車86号 |
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20号によく似たデザインの、モニタールーフでオープンデッキの2軸単車809号は1913年製。側窓の構造は1911年製の257号などと同じで、横ひきのカーテン。木製のロングシートも同様です。
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運転台に窓のついた809号 |
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1925年製の2軸単車1464号は、2段屋根の両端が正面につながる形状から、アメリカ車を連想させるとして、プルマンと呼ばれたとか。東ドイツ時代の1965年に、台枠や屋根、機器類を流用して木製車体を鋼体化し、1987年まで使われたとか。車内のパイプ椅子等は1965年製でしょう。集電装置はパンタグラフ。出力は60kW×2。
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1925年製の木造車を1965年に鋼体化した1464号 |
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1464号の運転台と車内 |
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モニタールーフの付随車2012号はデータがありません。車体中央のドアの部分に広いスペースをとっていますが、吊革があるので荷物室ではないようです。
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