“ドイツ カッセル トラム博物館” |
フランクフルトから北北東へ、ICEで1時間半ほど。ドイツ中部、ヘッセン州のカッセルは人口20万人の緑の多い都市。16世紀末に、同じヘッセン州のハーナウで生まれたグリム兄弟がその後カッセルに移り住み、長年この街で過ごしたことから、今ではメルヘン街道の中心都市として知られています。
カッセル・ヴィルヘルムスヘーエ駅前のトラム 2015.5 |
ドイツ鉄道DBのICEをはじめとする主要列車が発着するのは、街の中心に近い行き止まり式のカッセル中央駅ではなく、一駅隣の通過式のカッセル・ヴィルヘルムスヘーエ駅。駅前に出ると大きな屋根の下に並ぶプラットホームに、トラムやバスが発着しています。
カッセルの街中にあるグリム兄弟の像 この街には、国電Sバーンや地下鉄Uバーンはなく、長距離列車主体のドイツ鉄道DB以外の公共交通機関は、カッセル交通株式会社KGVが運営する青い車体のトラムとバス、それにカッセル地域鉄道有限会社RBKの運行する白い車体のレギオトラム。
1970年代から80年代には、モータリゼーションでカッセル周辺でもトラムの路線廃止や、西ドイツ国鉄DBのローカル線の廃線や旅客営業の廃止が行われたそうです。東西ドイツ統一後の1990年頃からこの流れが変わり、トラム路線の延伸やレギオトラムによるトラムトレインのDB乗り入れが始まり、軌道ネットワークの拡充が続いています。レギオトラムは、UバーンとSバーンの機能を兼ね備えたような存在です。
トラムからDBの鉄道線に直通する白い車体のレギオトラム |
スチームトラムから始まったカッセルでは、トラムには100年以上の歴史があります。それを現在に伝えるトラム博物館があり、一ヶ月に一日だけ、第一土曜日に開館するというのでスケジュールを合わせて行ってみることに。
カッセル・ヴィルヘルムスヘーエ駅前から4系統のトラムに乗って10分余り、カッセルの中心ケーニッヒス広場を通り過ぎた先のハレンバッド・オストで下車。トラムもレギオトラムも、見かけた現役の車両は部分低床の3車体連接車だけです。
車庫への分岐線のあるハレンバッド・オスト
電車通りからの分岐線が、KVGのサンデルスホイザー通り車庫につながっています。その前には、系統番号に“S”、方向幕に“特殊車”と表示したオレンジ色の電車が停まっています。古い2車体連接 車を改造して、下段の窓は塞がれ、正面のおへそライトは撤去してその両側に2灯のヘッドライトが追設されています。
KVGのサンゼルスホイザー通りデポ |
古いデュワグカー改造の事業用車両 |
電車の後ろ、ガラス戸の向こうがトラム博物館かと思ったのですが、鍵がかかっていて入れず、ガラス越しに見るとクルマが置いてあったりで違うよう。通り沿いに横に回ると、受付のような窓口があったので聞いてみることに。
受付で聞いてみた |
奥はバスの車庫になっている |
トラム博物館はその先と教えてもらって構内に入っていくと、そこにはループ線になっているような線路はあるものの、実態はバスの車庫。青い連接バスが何台も並んでいます。あっちこっちウロウロ探してもしてもトラム博物館が見つからず、尋ねる人もいない。
もう一度受付で聞いてみようと戻ってきたら、何とすぐ隣の建物の入口に“Tram und Bus Museum”の看板を発見。一瞬何で英語で書いてるの? と思ったが、“und”が入っているので、トラムもバスもミュージアムもドイツ語と英語で同じスペルらしい。
トラム博物館の看板と入口 |
階段の先の小さな部屋がトラム博物館 |
ドアを開けて階段を登り、部屋に入って1ユーロの入場料を払います。“Tram und Bus Museum Kassel”は、車庫の建物の一部、屋根裏部屋のような狭いところを使った小さな展示室が1部屋だけで、1ユーロの入場料に納得。1ヶ月ぶりの開館なのに、お客さんは私1人だけ。
停留所の標識や系統板 |
運転台の機器類でしょうか |
この部屋に実物の車両を導入できるわけはなく、展示されている実物は、停留所の標識や系統板、制御器のハンドルや運転台の機器類からパンタグラフのシューでしょうか、電車の部品が何点か。一番大きなものは、中の機構が見えるようにした直接制御器。
パンタグラフのシューでしょうか |
中の構造が見える直接制御器 |
電化当時の車両でしょうか、オープンデッキの2軸車の大型模型。動いてはいなかったのですが、Oゲージの架線集電式とみました。運転士のOBのボランティアの方でしょうか、私のためにHOゲージのジオラマの上でトラムを動かして見せてくれます。
Oゲージでしょうか 2軸車の大きな模型 |
HOゲージのトラムを運転 |
ジオラマには旧型車からトラムトレインまで |
100年以上にわたるカッセルのトラムの歴史は、写真のパネルで紹介。尋ねてみたところ、黄色い2軸の動態保存車があるそうですが、技術的な理由で今は保存運転は行っていないそうで、この場所ではなく別の車庫で保管されているとのことでした。
カッセルのトラムの歴史と動態保存車の写真 |
入口に“Tram und Bus Museum”の看板が出ていたが、バスに関する展示はなかったような。