“ベルリン ドイツ技術博物館” |
ドイツの首都ベルリン。その中心から南へ、戦前のベルリンで最大の規模の頭端式のホームを持つアンハルター駅がありました。戦後この場所は、東ドイツの中の離れ小島的存在となった西ベルリンに属したためか、第二次世界大戦中に連合軍の爆撃で破壊された駅舎は、今では正面の一部だけがかつての名残をとどめているものの、地上のホームや線路は撤去され、地下駅にSバーン(国電)の電車が発着するだけになっています。
▲ ベルリンの旧アンハルター駅 2014.9
そのアンハルター駅の先にあった操車場に付属する2つの扇形庫を活用して、西ベルリンにドイツ技術博物館が開館したのは、ドイツ統一前の1982年。交通機関のみならず、広く科学技術大国ドイツの多様な製品を展示していますが、やはり充実しているのは鉄道車両。
▲ クレイドスドレイエック駅のUバーン1号線 2014.9
ドイツ技術博物館の最寄り駅は、Uバーン(地下鉄)1号線と2号線が高架で交差するグレイスドレイエック駅。駅から徒歩で5分余り、屋上にプロペラ機が吊されたガラス張りの建物が博物館の新館です。
この飛行機はC-47。ダグラスDC-3の軍用輸送機版で、第二次世界大戦中には米軍や英国軍の輸送業務に携わり、戦後は1948年のソ連軍による西ベルリン封鎖時に100機以上を動員して10ヶ月にわたって行われた、西側陣営によるベルリン大空輸作戦の参加機です。
▲ 屋上にはC-47輸送機 2014.9
▲ ドイツ技術博物館の玄関ホール
玄関ホールは新しい建物で、受付の他カフェもあり、天井からはセスナ機がぶら下がり、単気筒のディーゼル機関も置かれています。1921年製で、この大きさでわずか16kW。
▲ 大きな単気筒のディーゼル機関
鉄道車両は、隣接する2つの扇形庫の中に年代順に展示しています。さっそく行ってみましょう。まずは1番目の扇形庫の展示車両から。説明の看板はあるのですが、残念ながらドイツ語だけ。以下の説明に間違いがあればご指摘下さい。
側面にボイト(BEUTH)の銘板を付けた縦型ボイラに軸配置1A1のテンダ機関車は、1842年にドイツの技術で最初に開発された蒸気機関車。本物は現存していないようで、ここに展示されているのはレプリカだとか。バッファーの形が変わっていますね。
▲ 最初にドイツで開発されたボイト号 ▼
貨車のように見えますが、側面に扉の付いた客車です。1843年製のオープンカー3等車。上のボイトと同じバッファーを備えているので、これに牽引されたのでしょう。
▲ 3等客車 ▼
C型のテンダ機関車は、1860年Steg-Wien社製のオーストリア南部鉄道29号。その後Graz-Köflach Railway (GKB)680号として、1964年まで使用されたようです。でも、何でドイツで保存されているの?
▲ オーストリアのC型蒸気機関車
1862年にニュルンベルクで作られた2軸の無蓋貨車。
▲ 無蓋貨車
B型のタンク機関車は、1872年のハノマーグ製Kiel号。1885年からプロイセン王国の鉄道で活躍した機関車のようです。
▲ B型蒸気機関車KIEL号
線路幅490mm、遊園地の列車のような小さな2軸の電気機関車。オリジナルは1879年ベルリン博覧会に出展したシーメンス製ですが、ここに展示されているのは101年後の1980年に作ったレプリカです。
▲ シーメンスの電気機関車
軸配置1Aシングルドライバーのタンク機関車、プロイセンT0型1907号機は1883年カッセルのヘンシェル社製。先輪と動輪の径がほぼ同じですね。
▲ A型蒸気機関車プロイセンT0型1907号
軌道自転車があります。ハンドルを前後方向に動かし、手で漕ぐメカニズムのようです。1884年にベルリンで製造。
▲ 軌道自転車
車両番号11。青とクリームに塗り分け、鷲に王冠のエンブレムの車両があります。プロイセンの国王・ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世のサルーンカーです。1889年のBreslauer AG製。
▲ ヴィルヘルム2世のサルーンカー ▼
ET 183 05号は、この博物館唯一の電車。1898年にMANとBBC、SSWが製造したそうです。ヘッドライトは片側だけですが、反対側にも取り付け金具らしきものがあり、両運転台でしょう。ボギー台車はオール板バネ。
▲ 電車 MANとBBC、SSW製 ▼
軸配置Bのタンク機関車1005号は、1899年のハイルブロン社製。ドイツ南部、ヴュルテンベルク州立鉄道に導入されました。
▲ B型蒸気機関車1005号
煙突に鐘が付いた軸配置Cのタンク機関車は、1901年ベルリンのSchwartzkopff社製のプロイセンT3型。西ドイツでは1960年代、東ドイツでは1970年代まで使用されました。
▲ C型蒸気機関車プロイセンT3型
線路幅600mmのナローゲージのB型タンク機関車は、1903年のJung社製。
▲ ナローゲージのB型蒸気機関車
軸配置1Cのタンク機関車は、1903年デュッセルドルフのHohenzollern社製プロイセンT9.3型。第二次世界大戦後の国境線の変更でポーランドになったところに取り残されたのか、キャブの側面にポーランド国鉄PKP Tki3-112のプレートを取り付けています。
▲ C型蒸気機関車プロイセンT9.3型 ▼
箱形で軸配置Bのタンク機関車。蒸気機関車らしからぬ、ちょっと変わった前後で同じスタイルの Kittellok は、車内に縦型のボイラがあります。ドイツ南部のエスリンゲンで1908年に製造後、1911年に改造を受けたそうです。コンパクトで前後どちらにも運転が容易に見えますが、ボイラを大きくできないので普及しなかったのでしょうか。
▲ 軸配置はB
▲ 車内の縦型ボイラ
軌間600mmのナローゲージのMuldenkipper。英語に訳すとDump trucks ダンプカーになります。1910年製。
▲ 600mmゲージのダンプカー
ベルリンで1911年に製造された、軸配置2Cのテンダ機関車プロイセンS10型、後の17型008号機は、カットモデルになってテンダーを切り離し、キャブ内に立ち入れるようにして展示されています。
▲ プロイセンS10型 17 008号
▲ プロイセンS10型のキャブ
スイスで氷河急行やベルニナ急行を運行しているメーターゲージの私鉄、レーティッシュ鉄道RhBの電気機関車もいます。391号は1913年SLM(スイス)とAEG(ベルリン)の製造。室内の大きなモーターから減速機を経てロッドで動輪に動力を伝達する方式です。
何故か、天井にロープウエーのゴンドラが。
▲ レーティッシュ鉄道391号
軌間600mmのナローゲージのC型タンク機関車。1919年にベルリンで作られています。
▲ 狭軌のC型蒸気機関車 ▼
軸配置2B1のプロセインP8型テンダ機関車。1919年製で、後にPKPポーランド国鉄Ok1型になった車両です。何故かこの機関車だけはロッドがなくなり、赤錆が浮いて保存状態が劣悪です。
▲ プロイセンP8型 後にはポーランド国鉄
L型の貨物用電気機関車3号は、1922年に転用されたシーメンス製。あとから庇を機械室の上まで延長たようにも見えますが、1901年製の3相(交流)電気機関車の半分となっているので、本当に凸型の車体を半分に切り落としたのかもしれません。
▲ L型電気機関車3号 ▼