“ドイツ ドレスデン アルトシュタット機関区鉄道博物館” |
ドイツ東部、ザクセン州の州都ドレスデンは、エルベ川のフィレンツェと称えられる美しい古都であるとともに交通の要所。ドレスデン中央駅からSバーンのS3系統で1駅。ドレスデン・プラウエン駅との間に操車場があり、その一角にアルトシュタット機関区の扇形庫とターンテーブルを活用した鉄道博物館があります。
中央駅からの行き方は、3系統のトラムに乗って終点のSüdvorstadtで下車。そのまま道なりに歩くと線路を越える陸橋の上から写真の扇形庫が見え、橋のたもとから細い階段で下に降ります。64系統のバスなら、階段の近くにバス停がありますが、中央駅は通りません。
▲ ドレスデン・アルトシュタット機関区鉄道博物館
2014年9月のシルバーウイークに訪問しましたが、博物館がオープンする日は春から秋までの間の月に1〜2日だけ。まずは、動画でドレスデン・アルシュタット機関区鉄道博物館の様子をご覧下さい。
▲ ドレスデン・アルトシュタット機関区鉄道博物館
私は、Sバーンでドレスデンに戻る途中に立ち寄りました。ドレスデン・プラウエン駅で降りて10分ほど歩くと、陸橋とは別の入口があります。線路沿いの入口には看板が出ていますが、ここから扇形庫は見えません。わかりにくいところで、Google Map のストリートビューで見当を付けてきましたが、ママに連れられた坊やが入っていくので正解でしょう。あとからついていくと、58型蒸気機関車の動輪を使った看板が出ています。重量貨物機で、3気筒ですね。
▲ ドレスデン・アルトシュタット機関区鉄道博物館の入り口
▲ 58型蒸気機関車の動輪
入場券売り場があり、その先には煉瓦造りの扇形庫。側面には、18型と22型蒸気機関車の動輪も。
▲ 入口は扇形庫の裏から
▲ 18型と22型の動輪が並ぶ
表に回ると扇形庫の扉が開き、ターンテーブルに向かって機関車が並んでいて、子供連れを中心に、そこそこ賑わっています。
▲ 扇形庫に勢揃いした機関車
それでは、向かって右から順番に1両ずつ見ていきましょう。車両を説明する看板はありませんが、ホームページに主要目が出ています。ドイツ語に加えて、珍しく英語の記述も。
ドイツを代表する急行用旅客機01型、軸配置2C1のパシフィック。直径2mの赤いスポーク動輪が格好いいですね。この137号機は、1935年のヘンシェル製。1981年から博物館の所属となり、東ドイツ国鉄DRが動態保存してきた普通のデフの原型。東西ドイツ併合前の1988年、オリエント急行が日本に来たとき、東西ドイツ国境のマリエンボルンから首都の東ベルリンまで、パリ発香港経由東京行きの青い客車を01型が重連で牽引していますが、その先頭に立った機関車だとか。今もキャブには、ナンバープレートとともにDeutsche Reichsbahn ドイツ帝国鉄道の文字が輝いています。出力2240PS、速度130km/h。
▲ ドイツの急行旅客機01型
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▲ キャブの助士側(左)とキャブの機関士側(右)
ターンテーブルに乗っている62型は、旅客列車用タンク機関車。日本の国鉄のタンク機関車と違って、水のタンクをボイラの横に持たず、キャブの後ろに設置しています。015号機は、ドイツに唯一残る62型で1929年のヘンシェル製。動輪経は1750mm、軸配置は2C2で、日本のC62と同じなのは偶然でしょう。出力1680PS、速度100km/hもほぼ同等。
▲ 旅客用タンク機関車62型
ちょっと古そうに見える急行用旅客機19型は、1922年のハルトマン製。ドイツ帝国成立後も、第一次世界大戦までは以前の王国の鉄道として運営され、19型017号機はザクセン王国の国鉄である王立ザクセン邦有鉄道の207号機としてデビューしたのだとか。4つの1905mmの大きな動輪を持つ軸配置2D1、台枠の内部にも2気筒を有する合計4気筒の機関車で、ドイツに残る唯一の19型。出力2100PS、速度120km/h。
▲ 4気筒の19型蒸気機関車
扇形庫に頭から突っ込んでいるためか、外部に姿を見せていない52型。動輪が5軸、軸配置1Eの貨物用で、第二次世界大戦中の戦時設計の貨物用は、日本のD52に相当しますね。動輪径はD51やD52と同じ1400mmですが、小さく見えるのは車体が大きいからでしょう。この52.80型8079号機は、1960年代に東ドイツで52型をベースにした200両の改良型のうちの1両。博物館のホームページに掲載されていないので、所有者が異なるのかもしれません。出力1600PS、速度80km/h。
▲ 52.80型貨物用蒸気機関車
古風な89.60型は1902年のフンボルト製、プロイセンT3型。軸配置はCで、動輪径のデータがありません。ドイツの蒸気機関車は日本とは逆に1桁目が0から5まではテンダ機関車、6から9がタンク機関車です。89.60型はタンク機関車にあとから改造でテンダを連結したものの、改番はされなかったのだとか。古いだけに出力は小さく、290PSで速度は40km/h。
▲ プロイセンT3型
03型蒸気機関車は、01型を軽量化して軸重を18トンに押さえた急行旅客機。トップナンバー03 001号機は1930年のボルジッヒ製。軸配置は01型と同じ2C1のパシフィックながら、動輪径は1905mmを採用。出力1900PS、速度120km/h。
▲ 急行旅客機03型
庫外に、切り離されたテンダーだけがシートをかぶって置かれています。
▲ 炭水車だけがシートをかぶって
軸配置2Cの大型模型が1両だけ、ガラスケースに収められています。プロイセンS10型、後の17型と思われます。
プロイセンS10型の大型模型
博物館の公開当日に出会った蒸気機関車は以上ですが、この他にもホームページには何機種か掲載されています。動態保存機も多いようで、どこかへ出かけていたのか、あるいは扇形庫内のスペースが限られるので、別の場所に保管されているのかもしれません。