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741号も506号によく似た近代的なスタイルですが、こちらは側面窓が一段下降式。1947年の自社工場製、車体長8.5mの2軸車で、両側にあるドアは1枚引き戸になっています。736〜745号の中の1台で、1988年まで使用されました。性能は、45HPのモータ装備の他の2軸車と同一です。

近代的な車体の2軸車741号

2軸車の多くが使用している米国製ブリル21E型の台車で、1906年に使用を開始しています。日本でも、明治期に大量に輸入されて2軸車に使用されました。内側に、吊りかけ式で2台のモータを搭載しています。

2軸車の台車 ブリル21E

ここから先はボギー車です。2軸車の側面6枚窓に対して、車体を引き伸ばして10枚窓になっていますが、よく似たデザインの車体です。

ダブルルーフの330号は、2軸の508号を引き伸ばしたデザインで車体長11.8m。323〜342号の中の1両で、1906年の米国ブリル製。238号のような開放型車体から箱形車体になった初期のスタイルですが、これは1983年の引退後に製造時の形に復元したものです。

台車は、車輪系の異なるマキシマムトラックのブリル22E。モーターの付いた車輪径は850mm、付随車輪経は520mmで25HPの2個モータ。この台車、大阪市電の保存車で見た記憶があるので、日本にも輸入されていたのでしょう。ブレーキは手動とエアー、それに電気ブレーキです。

ダブルルーフの330号 ボギー台車は車輪系の異なるブリル22E

329号は、330号と同じ1906年の米国ブリル社製。マキシマムトラックの2個モータで性能は同一ながら、1930年代に自社工場で車体を改造して車体長11.6m、シングルルーフとなり、1995年まで使用されました。

シングルルーフに改造された329号

ダブルルーフの348号は、330号のグループに続いて米国ブリル社で1907年に製造した343〜362号の中の1台で、全長が12.1m。製造時の車体は330号と同等のアメリカンスタイルで、ドアの取り付けをはじめ各所に改造が行われていますが、ダブルルーフは残りました。25HPの4個モータに出力が増強され、ボギー台車はブリル27GE1を装備。

ダブルルーフの348号

802号は1939年、車体長11.6mの自社工場製。シングルルーフながら、屋根に明かり窓があり、独立した運転室を設ける等の車体にモデルチェンジがなされた801〜810号のうちの1両ですが、第二次世界大戦のために予定どおり竣工したのは5両だけ。物資不足でしょうか、残りは戦後になってから1947年に、旧型車の機器を流用して完成しています。前半の5両は、25HPの4個モータ。手動、エアー、電磁、電気ブレーキを装備しています。1983年まで使用されました。

シングルルーフに明かり窓付きの802号

904号は、741号の車体を11.7mに延長してボギー車にしたタイプ。1948年の自社工場製で、901〜910号の中の1両。25HPのモータを4個、手動、電磁ブレーキ装備しています。1991年まで使用されました。ラストナンバーの910号は1991年に日本に売却され、大幅な改造を受けているものの高知の土佐電鉄で唯一の現役です。

自社工場製最終シリーズの904号

制御器が展示されています。ハンドルの取り付け部分に段差があって、土佐電鉄の910号にはこのタイプがそのまま使われています。

制御器

グレーに塗られた貨車68号は1915年製。車中には、線路の保守に使用する機器類を搭載しています。1980年代末頃まで使用されました。

68号貨車とその中に搭載したメンテナンス機器

Carris社は、リスボン市内のバスも運行しています。二階建ての車両は、現在は市内では見かけませんが、何両か保存展示されています。右の851号は1967年、左の837号は1968年のいずれもダイムラー製。

二階建てのバス 左の車はまだナンバープレートを付けている

217号は1950年のイギリス製。ロンドンの二階建てバス、ルートマスターを製造したAEC(アソシエーテッド・エクイップメント社)製で、ロンドンとの違いは左ハンドル右ドア。Carris社で最初の二階建てバスとして、1952年から1982年まで使用されました。

後ろに小さく写っている76号は、1967年のダイムラー製3扉車で1991年まで使用。

Carris初の二階建てバス217号
1階の車内
2階の車内

隣の部屋にあるのは変電設備でしょうか。現役なら、一般の見学者は立ち入れないでしょうね。

変電設備?

片隅には消防設備も置かれています。現役ではなく、展示物です。

消防設備

切符の印刷機です。切符も自社で製造していたのですね。現在は、厚紙のカードの中にICチップが入った切符に統一されています。

切符の印刷機

第2展示館の出口近くに、本物のコントローラとブレーキ弁、ハンドブレーキを備えたコーナーがあります。残念ながら前の絵は動かず、運転シミュレータにはなっていません。コントローラは重くて、ハンドルを回すには力が必要です。

本物を使った運転台のモデル

売店でお土産にトラムのプラスチックモデルやバッチを買い求め、帰りの電車を呼んでもらいます。外に出たところに二階建てバスのルートマスターが2台。ナンバーも付いていて、クラシックバスによる市内ツアーに使用しているようです。

トラムにも動態保存車があるようで、トラバーサーに乗れば外につながる線路の上に展示されているトラムが市内を走っている動画が、Youtubeにアップされています。

屋外にルートマスターが2台

迎えのトラム1号車がやってきました。運転士さんがポール回しをして、後部に付け替えます。賑やかな吊りかけ音と、急カーブで車輪とレールのきしむ音を聞きながら戻ります。

迎えの車が来た

トラムから降りてこれで終わりかと思ったら、運転士さんが第1展示館の隣にある第3展示館(私が勝手に番号を付けたもので現地でこう呼んでいるわけではありません)に案内してくれます。

ここはバスの車庫のようなところ。架線修理車はナンバープレートがないので廃車でしょう。

架線修理車

ダイムラーの二階建てバスの屋根を切り取った、観光用のオープントップバスがいます。ここのバスは、みんなナンバープレートが付いているので、現役かもしれません。それにしても、建物の入口ぎりぎりに駐めているので、正面からの写真が撮りづらい。

二階建てオープントップバス

ボルボの路線バスがいます。ちょっと古いように見えますが、ワンステップ車ですね。朱色と白が以前の標準色だったのでしょうか。

ボルボの旧型バス

現在のCarrisの標準色である、黄色いベンツの低床車。ヨーロッパのバスって、前、中、後の3扉車で、後ろの扉から乗ってもノンステップの低床なんですね。日本でこれができないのは車体長の規制があって、エンジンをはじめとする機器の収納スペースがとれないからでしょうか。

ベンツの3扉ノンステップ車

リスボンの地下鉄はCarrisの経営ではないのですが、車両の先頭部分のモックアップと自動改札機があります。日本の自動改札機に比べ、ヨーロッパのそれは簡単には乗り越えられない形状をしています。

地下鉄車両のモックアップと自動改札機

新旧の券売機も並んでいます。

新旧の券売機

木製の台に乗っているのはバスのクラッチでしょうか? 果たして、展示物なのか何なのか。

バスのクラッチ?

イベント時に子供を乗せて押すのか、ゴムタイヤのトラムもありました。もちろん、自社工場製でしょう。

ゴムタイヤのトラム

このように、リスボントラム博物館では、充実したひとときを過ごすことができました。特に、第2展示館との間のクラシックトラムによる送迎は、貴重な体験です。

リスボントラム博物館 Museu da Carris の開館日や時間等の詳細は、http://museu.carris.pt/へどうぞ。


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