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夜行列車の食堂車

メニューと時間を指定すると、座席下に収納されているテーブルをセットして、食堂車から出前をするのが原則のようですが、“食堂車で食べたい”と主張したところ夜も翌朝も食堂車で用意してくれることになりました。時刻表では、ハジャイ到着が朝の6時28分ですが、この女性に聞くとハジャイが8時頃になるとのことで、7時に朝食を予約します。遅れが常態化しているのでしょう。

ノンプラドックジャンクションでナムトクに向かう泰緬鉄道の路線を分岐すると、西日のさし込む方向が変わり南本線がマレー半島を南下していきます。先に隣のタイ人カップルに夕食の出前が届き、西の空をあかね色に染めて夕陽が沈む頃、同じボックスのオーストラリア人のために座席にテーブルがセットされます。予約の時間に20分も早いのに、私にも用意ができたと食堂車に案内されます。

食堂車は4人がけの固定式のテーブルと椅子が並び、出入りしやすいように日本の国鉄オシ16のように座面が跳ね上げ式。

車窓の夕焼け ベッドメーキングの車掌さんと巡回の警備員
食堂車 ビールのないタイ料理の夕食

テーブルには既に料理が並び、ビールを注文したら、スタッフの女性から返ってきた言葉は“無い”。何か他の酒は?“無い”。17時を過ぎているのに何で? どうやら列車に酒類は積み込んでいないようです。あとでネットで調べたら、数年前に国鉄の臨時職員が酔っぱらって(加えて薬物中毒もあったとか)列車内で殺人事件を起こして以後、車内全面禁酒としたのだとか。職員の不祥事で、何で客にとばっちりが。こんなことなら、寝台で隠れて飲む酒を持ち込んでおくんだった。

ビールなしのタイ料理で夕食を済ませて席に戻ると、寝台がセットされています。隣のタイ人の若いカップルが、彼女の方が上段で寝るからと言って、寝台も下段を譲ってくれます。上段には窓が無く、ベッド幅も下段の方が広くてラッキー。JRの14系よりグレードは高く、日本ならA寝台です。旅行会社で返金してもらった上下段の差額90バーツを渡そうとしてもなかなか受け取ってくれず、50バーツと40バーツの折半に。

ベッドメーキングが終わった2等寝台 南タイ 朝の車窓
朝の食堂車 サンドイッチの朝食 飲み物はマイローも選べます

ぐっすり眠って目覚めたのが翌朝6時前。タブレットの地図上のGPSでは、ハジャイの1つ前の停車駅に停まっていて遅れはわずか50分。朝食はトレーに乗せてベッドに届けるようで、6時半頃に上段のオーストラリア人に出前が来たので、7時の予約だけど食事中にハジャイに着いてしまいそうなので今から食堂車に行っても良い?と聞いてみると案内してくれます。

手作りサンドイッチにオレンジジュース。飲み物はティーかコーヒーかマイローの中から選びます。マイローって何? ネスレのココアMILO(ミロ)でした。

 

ハジャイに到着

昔の日本の寝台列車は朝になると作業員が回ってきて、一斉に寝台を解体して座席にしましたが、タイでは乗客が起きたところから、車掌さんが座席に戻していきます。まだまだカーテンを閉めて寝ている区画も。

 上段との幅の違いがよくわかる 寝台の下段は広くて快適 まだカーテンを閉じて寝ている区画も
向かいのボックスのカップル 座席と寝台 2種類の番号プレート 座席下にテーブルを収納

その後はノロノロ運転や単線の交換待ちの長時間停車で、前日に食堂車のスタッフが言っていたとおりに、1時間半遅れの8時頃にハジャイに到着。向こうに蒸気機関車が保存されています。

トイレの車窓から 蒸気機関車が保存
1時間半遅れでハジャイに到着した列車

先頭のディーゼル機関車が、1両目の荷物車だけを引き連れて隣の線に押し込み、単機で戻ってきて寝台車の前に連結。ホームで写真を撮っていると車掌から早く乗れと声がかかります。

車内では、ハジャイからの新たな乗客や、後方のハジャイ切り離しの車両から乗り移ってきた乗客で、寝台を解体したあとの座席に3人から4人が座っているところもあります。上段のオースラトラリア人がまだ寝ているので、私の下段も寝台のまま。タイは緩いです。

旧型のGE機が留置 機関車と荷物車を切り離した
ハジャイの駅名標 ホームの物売り

 

タイとマレーシアの国境駅パダンベサール

ハジャイ発車した直後にポイントを渡ったあと、一旦バックして後部に何かを連結したようです。両替商がまわってきたのでレートを聞いて計算すると、5%程度の為替手数料をとっています。終点のバタワース駅にも両替はあるようですが、車内で残ったタイバーツを全額マレーシアリンギットに交換。この両替商、車掌をはじめ何人かの国鉄スタッフに現金を渡しているところを目撃してしまった。

南タイの車窓 寝台車の貫通路の前に機関車
車内に両替商がまわってきた パダンベサールに到着

ハジャイから1時間ほどで、国境を越えたマレーシアのパダンベサール駅に到着。最近のマレー鉄道の複線電化工事で改築されたのでしょう、日本のように高いホーム2面4線の新しい駅でアルファベット表記の駅名からも、もうここはタイではないことがわかります。2番線に停車。上段のオーストラリア人がまだ寝ているので、国境だよと声をかけて起こします。

乗客は全員荷物を持って一旦列車を降り、ホーム上の建屋内にあるイミグレでタイ出国、マレーシア入国手続です。タイの出国スタンプを押してもらって、マレーシアのイミグレとの間のわずかなスペースに、小さな免税店も。

イミグレは右側 ホーム上で出入国手続 ガラス1枚を隔ててイミグレから見たホームに停車中の列車
タイのイミグレ 向こうのマレーシアのイミグレとの間に小さな免税店

ガラス越しに、向かいの1番線に停車するマレー鉄道のステンレスの客車が見えます。

マレーシアの入国手続を終えて同じ2番線に停車中の列車に戻ると、タイ国鉄の機関車が切り離されて転線。先頭にはマレー鉄道のディーゼル機関車を連結。日本製の電気式ながら、ディーゼルエンジンはフランスのSEMTピールスティック。

反対側の1番線にはマレー鉄道の客車が停車中 タイ国鉄のディーゼル機関車が転線
マレーシアのディーゼル機関車を連結 タイ国鉄のディーゼル機関車が後ろに回り

タイ国鉄の機関車は、編成の後部にまわります。食堂車はハジャイで切り離さずにここまで連結してきていました。また、ハジャイ発車直後にバックして連結したのは荷物車で、編成内での連結位置を変えるためだったような。

その荷物車の開け放されたドアから内部が見えます。調理の設備もあるようで、この車両が乗務員の休憩場所として使われているのかもしれません。そういえば、乗務員が運行中に寝台車の貫通扉から荷物車によく出入りしていました。車掌が寝台車のコンパートメントを使い、食堂車の席を私物化している中国やベトナムよりは良しとしましょう。

荷物車に連結 右がホーム上のイミグレの建物
荷物車内に厨房? 荷物車と食堂車を連れて引き揚げる

アルストーム機は荷物車と食堂車を連れて引きあげます。寝台車の車内に戻ったら、ベッドは片付いて座席になっていました。この先は、マレーシアのディーゼル機関車がわずか2両のタイ国鉄の客車を牽引してバタワースに向かいます。

ここから先はマレーシアのディーゼル機関車を先頭に寝台車が2両だけの短い編成

なお、2016年のダイヤ改正でマレー鉄道の西海岸の電化路線、パダンベサールからゲマス間の客車列車が全て電車に置き換えられ、同時にタイ国鉄とマレー鉄道の相互乗り入れが廃止されたため、この列車は2017年1月現在では国境駅のパダンベサールが終点で、マレー鉄道のローカル電車KTMコミューターに乗り換えとなっています。

引き続き、マレーシア編は、こちら


旅のヒント

2015年のクリスマスイブに羽田−バンコク、大晦日にシンガポール−羽田の深夜便を確保。バンコクからシンガポールまで1900km余り、タイ国鉄とマレー鉄道を乗り継ぎ、マレー半島を縦断する列車の旅に出かけました。タイのバンコクからマレーシアのバタワースまで夜行列車の寝台、バタワースからクアラルンプールまで高速電車ETS、クアラルンプールからジョホールバルまでバタワース始発の客車列車のインターシティー、ジョホールバルからシンガポールは、列車に乗れなかったので路線バスにしました。

それから半年後にマレー鉄道の時刻改正があり、状況が大きく変わっています。マレー鉄道の西海岸の電化区間、パダンベサールからゲマス間の客車列車が全て電車に置き換えられ、タイ国鉄の客車列車によるバンコクからバタワースと、マレー鉄道の客車列車によるジョホールバルからハジャイ間の相互乗り入れが廃止されました。

バンコクとバタワースを結んでいた夜行寝台特急35/36列車は、2017年1月現在で国境駅のパダンベサールが終点となっています。35列車のパダンベサール到着が定刻では7時55分(時差があるためマレーシア時間の8時55分)。遅延がなければ出入国手続を経て、9時30分発のクアラルンプール方面セレンバン行き(バタワースには立ち寄らないので、ペナン島には行けません)の高速電車ETSに乗り継げますが、まず無理とみておいた方がよいでしょう。

パダンベサール10時45分発のKTMコミューターに間に合えば、バタワース到着が12時30分ですが、許容される遅延は1時間半まででしょう。不確実性が増して、列車によるマレー半島縦断が不便になってしまいました。

2015年12月旅
2017年2月記


お役に立つリンク集

これからお出かけになる方や鉄道ファンの方に役立ちそうなリンクをそろえました


 

 

 

 

 

  

 

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