“台湾 糖業鐵路新營糖廠五分車” |
かつて 台湾南部には広大なサトウキビ畑が広がり、収穫の時期になると数多くの糖業鉄路が畑と製糖工場の間で、サトウキビを満載したトロッコを連ねた列車を運行していました。しかし、海外から安価な製品が輸入されると製糖工場は次々と操業を停止して、2013年の春 に運行した路線は虎尾糖廠ただ一個所のみとなっています。
▲ 新營糖廠五分車の始発中興駅 2013/3
トロッコの線路幅は762mm。台湾新幹線の標準軌1435mmのほぼ半分であることから五分車と呼ばれてきました。
使命を終えた路線の多くは廃線となりましたが、渓湖、蒜頭、烏樹林、新 營、橋頭など、一部を観光路線に衣替えして運行が続けられている五分車が国鉄西部幹線の沿線に並んでいます。
▲ 発車を待つ五分車 客車が13両
その中で、国鉄の駅から近く、路線が長く、列車交換(タブレット交換)もある新營糖廠の五分車を訪問しました。始発駅“中興”は、新營駅から徒歩で15分程のところにあります。
▲ 先頭に立つC型のディーゼル機関車
▲ 中央ベンチの開放的な客車と最後尾1両だけ窓の付いた客車
▲ ベンチをサイドに設けたバリアフリーの客車も連結
終点の“八老爺”までの往復運賃は100元(約330円)。地下鉄の初乗りが20元と交通費の安い台湾では、なかなか高価な切符です。 中学生以下と65歳以上は80元、幼稚園以下も70元の運賃が必要です。
▲ ディーゼル機関車の運転台
新營の五分車の運行は土日祝日の昼間だけ、1時間ごとに発車します。駅を出て踏切にさしかかるところでタブレットを受け取ります。
▲ タブレットを受け取って出発
かつてはサトウキビ列車を運行していた西ドイツ製のC型ディーゼル機関車が先頭に立ち、サトウキビを満載していた貨車を改造したであろう2軸の客車13両編成を牽引します。客車には窓ガラスはなく、中央に背中合わせにベンチが固定されています。
▲ 先頭車にはガイドさんが乗車
車いすでも乗車できるようにしたバリアフリーの客車も1両あり、最後尾には窓ガラスの入った客車も連結しています。乗客の大半は子供連れ。他に外国人らしき乗客の姿はありません。先頭車にはガイドのおじさんが乗車して、沿線の案内をしてくれます。もちろん中国語のみ。
▲ タブレットを交換
途中の信号所には係員がいて、列車交換時にはタブレットの受け渡しをします。この信号所までは国鉄から直通の貨車が乗り入れていたのでしょう、線路幅が762mmと1067mmの三線区間となっています。
▲ 信号所で列車交換
▲ のどかな車窓
PC枕木の区間もあり、線路の整備はまずまずですが、人が乗ることなど考えていなかった台車でしょうか、スピードは出なくても想像通りの乗り心地です。バネが効いているのか?
こうして4.6km乗車時間約30分、五分車は終点の八老爺駅に到着します。
▲ 終点の八老爺駅
直ちに先頭の機関車を切り離し、機回り線を使って入れ替えをして、中興側に連結します。これで帰りの出発準備ができました。
▲ 機回り線を使って機関車の入れ換え
▲ 八老爺駅で帰路に向けて先頭に立つ
▲ 八老爺駅で五分車の最後尾
発車まで22分の時間を利用して周辺の見物です。ここは、八老爺台灣乳牛的故鄉。牧場をイメージした、テーマパークというには余りにも小さな施設。興味がある方は、こちらをどうぞ。
▲ ここは牧場のテーマパーク
附属のレストランには、台湾国鉄の普快で活躍した日本製の旧型客車が活用されています。外観に変化はないものの車内は回転式クロスシートからテーブル付きのボックス席に変わり、窓は固定され冷房付きになっています。お勧めメニューは牛奶鍋(ミルク鍋)だそうですが、食事時ではなかったのでそのまま次の列車で新營に戻ることに。
▲ レストランには台湾鉄路普快列車の日本製客車
▲ 車内は改装されているが天井だけはオリジナル
八老爺から中興に戻る五分車を動画でご覧下さい。
▲ 八老爺駅から中興駅へ戻る新營糖廠五分車の車窓の動画をご覧下さい
2013年3月現在の運行時刻は、土日祝日のみ中興発が9時から16時まで、八老爺発が9時52分から16時52分までのそれぞれ1時間ごと。以前は平日にも2往復あった様ですが、時刻は黒く塗りつぶされていました。