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“イタリア トリエステ ケーブルカーで急勾配を登るトラム”

アドリア海の奥まったところに位置する人口20万人余りの港町、トリエステはスロベニアと国境を接するイタリア北東端の街。第一次世界大戦までは、オーストリア=ハンガリー帝国の貿易港として繁栄してきたものの、オーストリアの敗戦でイタリア領になってからはその重要性が大きく低下したのだとか。今も街中に残る荘厳な石造りの州庁舎や市庁舎は、イタリアの街ではなくオーストリアの雰囲気です。

首都ウイーンからトリエステの背後の丘の上にあるオピチーナ駅に達した、かつてのオーストリア南部鉄道が、高低差をかせぐために30km以上にわたって大きく迂回しながらトリエステの街まで降りる路線が開通したのが1857年。

この区間をショートカットする目的で、1902年に一部の急勾配区間をラックレールとしたメーターゲージのトリエステ=オピチーナトラムが開業し、1906年に現在の終点のヴィラ・オピチーナとヴィラ・オピチーナ鉄道駅(図のStazione FS)間を延長。イタリアになってからの1928年にラックレールをケーブルカー方式に更新。1938年に延長区間が廃止されて現在に至ります。

オピチーナトラムの路線図

一方、1876年に馬車トラムとして開通し、1900年に電化してトリエステの街中を走っていたトラムは、バスに置き換えられて1970年に全廃になり、今では2番の系統を名乗るオピチーナ行きがトリエステに残る唯一のトラムです。

始発はトリエステ中央駅に近い、市街地北東端のオベルダン広場。海抜3mのここから、全長5.2kmの路線で329mの丘の上にあるオピチーナまで、高低差326mを登る登山電車です。全線単線で、中間の11駅のうちケーブルカー区間の他に5個所に交換設備があるものの、使用しているのはケーブルカー区間とコンコネロの2個所だけ。

始発はオベルダン広場 2016/5/4

オベルダン広場停留所の待合室には売店があり、ここで市内のバスと共通の乗車券が買えます。電車の運行時間は、朝はゆっくりで夜は早じまいの7時から20時までの20分間隔。全線の所要時間は30分。表定速度10.4km/h。

現役車両は、古いけど良く整備された6両のボギー車。通常は3両が運用についています。事故で廃車になった403号を除く401〜405号はイタリアになってからの1935年製。406と407号は、1942製の戦時型で内装が簡略化されているのだとか。そういえば、窓の角のRの有無や座席が布張りか木のベンチの差があります。

トラムの運転室

車内は木製ニス塗りで良い感じ。運転席は更新されていて、制御器は前後のレバー式でチョッパ制御に改造という情報もあります。ヘッドライトも後からの増設でしょう。両運転台にもかかわらず、ドアはオピチーナに向かって左側に3個所だけ。車内の中央部の窓上にドアエンジンの名残らしき出っ張りがあるので、昔は両側ドアだったのかもしれません。

オピチーナ側の車内の窓1つ分が仕切られてロングシートに。他は4人がけのボックスシートです。

客室は小さなロングシート室と大きなクロスシート室に別れる
布張りシートの車両もある 側面中央の窓上にはドアエンジンのあとかも

電車は、オベルダン広場を発車すると次のスコルコラ広場までの1区間だけ、路面の併用軌道を走ります。

はじめの1区間だけ路面を走る

スコルコラ広場では、隣の線路にケーブルカーが待っています。無人で運行ですが、職員が乗れるようにか下り側には手すりが付き、折りたたみ式の椅子も2席備えています。開通からの26年間は、ここからラックレールが敷設され、専用の機関車がトラムを押し上げていたのだとか。

スコルコラ広場の電停横でケーブルカーが待つ

2006年に新車に更新したケーブルカー。山側には台枠の前方にグリースが塗られ、ここで電車のバッファを受け止める構造で連結はしません。

電車との接触面 電車のバッファを押し当てるだけで連結はしない

スコルコラ広場を発車した電車は、特殊なポイントを渡って一旦停止。ポイントが切り替わるとゆっくりとバックしてケーブルカーに接触。急な勾配を登りはじめると、運転士はケーブルカーに運行を任せて一休み。

ポイントを渡った電車が一旦バックしてケーブルカーと接続

ケーブルカー区間の途中に2個所の停留所があり、停車すると運転士がドアの開閉を操作。

ケーブルカーに押してもらって急勾配を登る

ケーブルカー区間の最急勾配は、箱根登山鉄道の3倍以上の1000分の260。おもいっきり傾くので、ボックス席の山側に座っているとずり落ちそう。

サン・アナスタシオの停留所 こんなに傾斜している

特殊なポイントを渡って行き違い区間に入ると、前方からケーブルカーに支えられた電車が降りてきます。

特殊なポイントで行き違い区間に
前方からケーブルカーに支えられた電車が下ってくる

この区間の沿線は住宅街で、途中にはケーブルカーには珍しい遮断機付きの踏切も。

ケーブルカーの区間に遮断機付きの踏切も

複線のままで線路の間隔が狭くなり、ヴェッタ・スコルコラへ。職員が常駐しているようで、ここにあるケーブルカーの巻揚げ設備は地下に装備されていて、ワイヤロープが地中に吸い込まれていきます。

ケーブルカーの上側の終点ヴェッタ・スコルコラ ケーブルは地下に吸い込まれていく

時々正面に自転車をぶら下げた電車を見かけます。電車で登り、トリエステまで下るサイクリングは快適でしょうね。

ケーブルカーの後押しで電車が登ってきた

ヴェッタ・スコルコラでは、ケーブルカーを残したまま電車は発車していきます。

ケーブルカーが停止
電車はそのまま離れて登っていく

ケーブルカーで登った路線長799mの高低差は160m。眼下にトリエステの市街地が広がります。

ヴェッタ・スコルコラから見たトリエステ こんなに登った

トリエステ=オピチーナトラムの様子を動画でご覧ください。

 トリエステ=オピチーナトラムの動画をご覧ください

 


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