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区間車は、花蓮方面に向かう北廻線を分岐する蘇澳新から1駅、宜蘭線の終点蘇澳に到着します。実質的には、蘇澳新−蘇澳間が幹線から分岐する盲腸線のようなかたちです。蘇澳駅は、何本かの留置線があるものの、ホームは駅舎に面した片面、1本だけ。台北方面の優等列車は2往復だけで、あとは蘇澳新で乗り換え。台北に向かう大半の乗客は、駅の隣のバスターミナルから台北捷運(地下鉄)大坪林駅行き都会之星の高速バス利用でしょう。
蘇澳駅に到着した区間車 | 蘇澳駅と高速バス乗り場 |
蘇澳は、台湾北東部の太平洋に面した港町。貨物港と海軍基地の他、駅から南に行ったところに南方澳漁港があり、沿岸から遠洋まで数多くの漁船がいるのだとか。尖閣列島にやってくる台湾漁船もここが基地だそうです。駅前に南方澳漁港に向かう路線バスの案内が出ていますが、乗り場がわかりません。駅員に聞いてみると、その場で待てばよいとのことを言っています。しばらく待っても来ないので、隣のバスターミナル(高速バスと路線バスで会社が違います)でもう一度聞いてみると、バス停は表の大通りの角を曲がったところとのこと。
交差点まで出たところで、あっバスが行ってしまった。地図で見ると歩いても30分ほどの距離ですが、タクシーがいたので運転手に“南天宮”と書いたメモを見せ、南方澳漁港に向かいます。
南方澳南天宮 | 1階の媽祖像 |
漁港のすぐ前に建つ南方澳南天宮は、海の安全を守る女神である媽祖を祀っています。こんな所まで来る日本人がどれだけいるのかわかりませんが、南天宮には日本語ホームページもあります。それによると、日本の支配が終わった1946年に海上で嵐にあった漁民が媽祖に祈ったところ、これを静めて漁民の命や漁船を守ったことに感謝して、1950年から媽祖廟の建設が始まったとか。
3階建ての建物の中には、中国大陸福建省から来た像も含め、多くの媽祖像が祀られています。
1階後殿の媽祖像 | 2階からみた屋根 |
2階の翡翠の媽祖像 |
2階にあがると、深緑色の翡翠の媽祖像が鎮座しています。表に振り返ると、屋根には龍の姿が。
3階には、台湾唯一の純金の媽祖像が祀られています。熱心にお祈りする人の姿も。またここから、南方澳漁港の絶景を眺めることができ、山に囲まれた入江で、天然の良港であることがよくわかります。
3階の純金の媽祖像 | |
3階からみた南方澳漁港 | 熱心にお祈りする人の姿が |
漁港には所狭しと漁船が係留されていて、造船所の前を漁から戻ってくる船の姿も。岸壁には、水揚げされたばかりの魚が並びます。早朝はもっと賑やかなのでしょう。
南方澳漁港の漁船群 | 漁から戻ってきた漁船 |
岸壁に水揚げされたばかりの魚が並ぶ |
南方澳漁港の背後には、魚を求めてやってくる人々を相手に商売をする、海産物店や海鮮料理の店などが軒を並べています。
漁港の背後に建ち並ぶ海産物店や海鮮料理の店 |
南天宮の前に蘇澳駅方面に向かうバス停があるのですが、表示されているのは、その系統の始発停留所の発車時刻のようで、この場所にいつ来るのかわかりません。バス停の近くには暇そうなタクシーがいるので、“蘇澳車站”と書いたメモを見せて乗り込みます。
蘇澳駅前でタクシーを降り、近くに冷泉があるので行ってみることに。ここに湧き出しているのは、年間を通じて温度が22℃で大量の炭酸を含む発泡性の冷泉。これを使ってラムネがつくられているのだとか。入口の横にある坂道を登ると、上から中が覗けます。夏には賑わうのでしょうが、台湾とはいえ3月では寒いのか、お客さんは見かけません。
蘇澳冷泉 |
続いて、駅の近くの坂道を登ったところにある廟に立ち寄ってみました。いかにも台湾という、ど派手な建物ですがここにも誰もいません。
蘇澳駅に戻り、窓口で花蓮までの切符を買います。台湾の鉄道は列車ごとの乗り切り制のため、蘇澳−蘇澳新の区間車と、蘇澳新−花蓮の自強号(JRの特急相当)の2枚の切符が出てきます。ついでに、翌日の花蓮−宜蘭間の太魯閣号と、宜蘭−台北間の普悠瑪号の切符を発券してもらいます。
振り子式の両列車は乗車率が高く、無座の切符は発売が無く立ち席乗車はできないので、日本出発前にネットで購入しておきました。窓口の中年男性職員は端末の操作方法がわからないらしく、若い女性と交代。彼女は英語で対応してくれます。
蘇澳駅の近くの廟 | 蘇澳駅留置線の貨車 |
蘇澳−蘇澳新間の区間車 |
次の区間車は蘇澳新行き。夕刻ですがラッシュ時など無いのか、わずかな乗客を乗せて発車して1駅でもう終点。
蘇澳新駅の横にはセメント工場があり、側線にはセメント輸送のホッパー車が休んでいます。広い構内では、ディーゼル機関車が貨車の入れ換え中。コンテナばかりになってしまったJRと違って、台湾の鉄道には国鉄時代を思わせる日本型の貨車を連ねた貨物列車が健在です。
蘇澳新駅で接続する区間車 | 水泥はセメントのこと |
ディーゼル機関車と長い編成の貨物列車 |
南アフリカ製の電気機関車が韓国製の客車をはさんだ、自強号が入線してきます。同じ運賃ですが、車体傾斜式電車を使った高速の太魯閣号や普悠瑪号は蘇澳新には停まりません。
蘇澳新に花蓮行き自強号が入線 | 花蓮駅の普悠瑪号 |
すっかり日が暮れた花蓮に到着したとき、向かいのホームでは台北方面の樹林行き普悠瑪号が発車を待っています。列車をバックに記念写真を撮る人もいて、この新車の人気は上々のようです。
翌日は早朝の列車に乗るためネットで花蓮駅近傍のホテルを探し、北口(裏口)の近くに安くて口コミもまずまずのところを見つけて予約。個人経営らしい小さなホテルで、窓のない部屋に当たってしまったところ以外は合格。
夕食は、フロントの中年女性が教えてくれた自強夜市に出かけることに。ガイドブックには載ってなく、台北や高雄の夜市に比べると小規模で、ほとんどが食べ物の店で、地元の人々で賑わっています。どの店にも酒類は置いていないので、通りの向こう側のコンビニでビールを買い、一通り見て回ってから行列のできている店へ。
花蓮自強夜市の賑わい |
“官財板”は、厚切りフレンチトーストをくりぬき中に具材を詰めたもので、日本円で1つ150〜200円。具の種類は各種中華料理の中から選べるので、牛肉の黒胡椒炒めをチョイス。ビールと良く合いますが、店に持ち込んでいるのは私だけ。台湾の人々は、酒を飲みながら食事をする習慣がないのでしょうか。セルフサービスの紅茶は無料で飲めます。
厚切りフレンチトーストをくりぬき中に具材を詰めた“官財板” |
相席のテーブルで賑やかな若い男女のグループから、写真を撮ってほしいとスマホを渡されます。こちらが日本人とわかると、アルコールが入って無くても、またひとしきり盛り上がります。若いっていいな。
次は“錦の堂豚食草専売店”の看板の出ている店へ。ここは空いていますが、壁に貼った写真入りのメニューがわかりやすい。“日式咖哩飯”を指さしで注文。楕円形の型に入れたご飯を皿の上に抜き、ジャガイモがゴロゴロのルーをかけたカレーライス。わずか200円で、子供のころ母親がつくってくれた懐かしいカレーの味を思い出させてくれます。“日式”とありますが、もはや日本のレストランではこの味は無いのでは。セルフサービスのお茶がすごく甘い!
この店は写真入りメニューでわかりやすい |
日式咖哩飯 | ジューススタンド |
店の名前に日本語の“の”の文字が入っています。以前に中国本土の寝台車で同室になった香港の若い人から“の”の意味を尋ねられたことがあります。英語の“of”と答えておきましたが、台湾や香港では見た目が“かわいい”とのことで“の”が使われるのだとか。