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トリノのトラムとスペルガ聖堂行きの登山電車

トリノに来た第一の目的は、郊外にあるスペルガ聖堂に行くクラシックなラックレールの登山電車に乗ること。まずは、乗り場のあるサッシまで、トラムで向かうことに。トラムやバス、地下鉄に共通の1日券を買おうと思って、イタリア鉄道トリノ・ポルタヌオヴァ駅前の地下鉄駅へ行ってみるも、切符を売る窓口が無い。タッチパネル式の券売機はあるものの、メニューに1日券は見あたらず、近くにいた警備員らしき人に聞いたら、新聞スタンド等で買えとのこと。

ポルタヌオヴァ駅構内に戻り、売店で聞いてみるもおばさん店員に英語が通じない。運良く店にいた客が通訳してくれたが、2日券しかないとのこと。1日券を発売しなくなったのか、今品切れなのかはわからないが、客の紳士が1回券1.5ユーロで90分有効だからこれにしなさいと言うので、とりあえず従うことに。最新のガイドブックでも1ユーロで70分となっていて、値上げにあわせて有効時間を延長したようです。

トリノ駅前の電停 部分低床車の車内

トラムの路線図は、ネットからダウンロードして日本からプリントしてきました。サッシに行く15系統はすぐ近くですが駅前を通らないので、とりあえず適当なトラムに乗って乗り換えます。9系統の部分低床車が交差点を渡るとき、しまった、向こうに15と表示した電車が停まっている。1停留所乗り過ごして、歩いて戻ります。はじめから歩いた方が良かったかも。

ところで、トラムの写真を見て何か変だと思いませんか。トリノのトラムの多くの路線は、線路が道路の端の歩道や分離帯沿いに敷設されています。ここに線路があると、イタリア名物の道端の路駐ができないので、代わりに歩道に乗り上げてクルマを駐めている輩の多いこと。

双方向の線路が離れた平面交差 道路の端に敷かれたトラムの線路

日曜日のため運転間隔が20分近くと長く、1本逃すと次のトラムがなかなか来ません。やっと来た15系統は、先ほどと同じ部分低床車、前後の車体は動力台車部分が高床でドアの位置から低床、車体の極めて短い中間車は車軸がなく低床で、この部分のみロングシートになっています。チョッパ制御でしょう、プーンという音とともに走り始め、加減速がよく最高速度も日本の路面電車のイメージとは異なります。

トラムの路線図を見ながら、走っている場所を確認します。あれ、目の前に大聖堂ドゥオモが通り過ぎたが、15系統のコースと違うんじゃない? (この日は迂回していたようです)

     
サッシ−スペルガ登山電車の入口       ラックレールとギヤのオブジェ

トラムが終点に近づくと、他に乗客は老婦人一人だけとなってしまいました。彼女に降りる停留所のSASSIを確認しようとしても、当然のことながら言葉が通じません。でも気を利かせてくれて、スペルガ聖堂かと訪ねてくれている模様。聖堂の写真が載ったガイドブックの該当ページを見せると、ここではなくその先の停留所だと言っているらしい。

奥に登山電車の乗り場がある公園のような門の前を通り過ぎると、そこだと指さして教えてくれます。グラッチェと礼を言って、その先の停留所で降ります。ウエブで確認していた登山電車の運行は、1時間間隔。トラムの待ち時間もあり予定より遅れたものの、何とか10時の登山電車に間に合いそう。

客車と電動車 窓ガラスのない開放的な客車

登山電車の切符は、往復が平日の7ユーロに対して、土日祝日は割増料金の9ユーロ。トラムの6倍で高いが観光路線だから仕方がないでしょう。火曜は運休となります。駅の横には、電車と同じ色に塗り分けたバスが停まっていて、これが火曜日に電車代行バスとなるのでしょう。

バスも動態保存車? 運転台の大きなコントローラ

ホームの隣の留置線には、まだ現役の車両でしょう、クラシックな電車や客車、それに貨車までいます。この路線は、地下鉄のような第三軌条から集電しますが、駅の構内と留置線には架線が張ってあり、入れ換え用でしょうか、凸型の電気機関車がパンタグラフを上げています。ポイントの多い留置線の中には第三軌条の設置が難しいのか、それとも安全を考えてのことなのか。

線路は、車庫の奥から表の通りのトラムにつながっています。青と白に塗り分けた車両は旧型のトラムのようです。

入れ換え用の凸型電機 予備のボギー車 奥の緑はトラム?

敷地の奥の建物にある出札窓口で切符を買って、自動改札を抜けて登山電車に乗ります。古風な3扉のボギー車で、屋根上に抵抗器を乗せています。電車の乗客の大半は、遠足の子供たち。それ以外は、中年の夫婦と私だけ。単行運転の電車の先頭に陣取ります。

この路線は、全長3.1kmで高低差が409m。最急勾配は1000分の200で、車庫の部分だけを除いて、平坦な駅の構内も含め全線シュトループ式のラックレールが敷設されています。ポイントの部分は、両側のレールよりラックレールの位置が高く、切り替え時の動きはちょっと複雑です。

予備の単車 青いのはトラム? 車内は遠足の子供

1884年の開通当時は、線路のサイドに沿って走るロープが車両のプーリーを回転してギヤの付いた車輪を駆動するアグディオシステムを採用していたが、事故のあと1935年に今の一般的なラックレールになったのだとか。乗っている車両はこの時から80年近く走っているんでしょうね。


サッシからスペルガに登る登山電車の車窓

運転士と車掌が乗って扉が閉まり発車です。電車は大きなモーター音をたてて、ゆっくりと登っていきます。3個所の中間駅がありますが、いずれも乗降客は無し。電車も、ポイントの個所以外は速度をゆるめずに(といっても時速10kmと少々ですが)通過します。そのせいか、ダイヤ上は18分のところ、わずか13分で終点のスペルガ駅に着いてしまいます。

途中に1個所、交換設備のある駅もありますが、1時間間隔のダイヤでは使われていません。サッシからスペルガに登る登山電車の動画をご覧下さい。

 

スペルガ聖堂

スペルガ駅を降りて、遠足の子供の後ろについて急な坂道を登っていくと、すぐ上にスペルガ聖堂が見えてきます。聖堂前に着くと、ここまで下から道路が通じているようで、駐車場にはクルマが並び、観光バスまで停まっています。登山鉄道の経営は地下鉄やバス、トラムと同じトリノ交通共同体。古風な鉄道を廃止せずに、観光用として有効活用しています。ここからトリノ市内が見渡せるはずなのですが、この日は天気は良いもののガスがかかっていて見通しがききません。

聖堂が見えてきた スペルガ聖堂

スペルガ聖堂は、18世紀にトリノを治めていたサヴォイア王家のヴィットリオ・アメディオ二世が、フランスとの戦いの勝利したことを聖母マリアに感謝して建設したのだとか。サヴォイア王家の墓所にもなっています。ちょうど日曜日で、聖堂ではミサの最中。異教徒は最後列でおとなしくしていて、ミサが終わり参列者が退席するのを待って大聖堂の見学です。

     
日曜朝のミサ       航空機事故の慰霊碑

大聖堂の周囲を一回りしたら、裏手に1949年に悪天候の中、旅客機がこの大聖堂に激突して、ちょうど乗り合わせていたトリノのサッカーチームのメンバーが犠牲になったことを悼む碑があり、60余年を経た今も生花が絶えることはありません。

 

サッシへ下る登山電車

登山電車の運行は1時間間隔で、上りはサッシを0分発、下りはスペルガを30分発です。上りの電車が到着するところを撮ろうと思って、10分頃からスペルガ駅を俯瞰できるところで待っていたのですが、定刻を過ぎても登ってきません。すぐに折り返しになって置いて行かれてはまずいと思い、駅でカメラを構えることに変更します。

スペルガ駅の電車 客車を連結した2両編成

定刻を5分以上遅れて登ってきた列車は、先頭に客車が付き、後ろから電車が押し上げてきました。山上の駅に到着すると、2両から乗客がドッとはき出されます。日曜日の11時発になると乗客が増え、増結作業を行っていたために遅れてきたようです。

電動車の車内 勾配の途中に中間駅

下りの乗客は2両に3人だけ。先ほどの中年夫婦が後部の客車に乗り、前の電車は運転士と私だけ。スペルガ駅を発車直後から、運転士は大きなコントローラのハンドルを逆転位置に入れ、電気ブレーキをきかせながら高らかなモーター音とともにゆっくりと降りていきます。帰りも途中駅での乗降は無し。

サッシ駅では、大勢の乗客が列車の到着を待っています。12時の発車時刻を過ぎても、切符を買いに行った乗客をのんびりと待ち、電車は再びモーター音を高らかに響かせ、客車を先頭に山へと登って行きます。

中間に行き違い設備もある もうすぐサッシ駅に到着

 


トラムでトリノ市内へ

帰りのトラムのチケットは、登山電車の駅で購入します。ついでだから、2枚買っておきます。都心への帰りの15系統のトラムがなかなか来ません。もう一人待っている若い女性もイライラしながらタバコを吸っている様子。

吊りかけ音を響かせて、やっときたのはオレンジ色の旧型の連接車。サッシの1停留所先が終点で、ループ線を一回りして方向転換して戻ってきます。

やっと来た15系統のトラム 折り返しのためのループ線に入るトラム
旧型連接車の車内 連接部分から後部

旧型車の車内の椅子は、ちょっと可愛い丸いベンチ。入口には切符の刻印機の他に、ICカードの読み取り機も付いています。途中ですれ違うトラムが道路の向こう側の端を行きます。やっぱり違和感。

切符刻印機とICカード読み取り機 部分低床車とすれ違い

15系統のトラムは同じコースを戻りますが、都心に近い交差点の停留所に着いたとき、運転士が乗客に何か告げると、多くの乗客が下車します。どうした? 電車が故障? 残った乗客を乗せて動き始めた電車は、路線図では左折することになっている交差点を右折します。よく見ると左折する先の道路が封鎖されています。どうやら迂回するらしい。まわりの建物を見ると、街の中心カスッテロ広場まで戻ってきたようです。右折した先の停留所でドアが開いたので、とりあえず降りてみることに。

ポー通りカスッテロ広場近くの電停 マーダーマ宮殿の裏側

降りたところは、トリノの中心に建つマーダーマ宮殿のすぐ裏。封鎖された道路の周辺には大勢の人だかり。この日はトリノマラソンが開催されていて、王宮前に次々とランナーがゴールしているところです。行きの電車のコースが違っていたことや、帰りの電車が大幅に遅れてきた理由がわかりました。

ローマ通りのトリノマラソン 王宮前のゴール地点

お昼になったので、ガイドブックに載っている手ごろな価格の中華レストランがある向こう側に行きたいと思っても、道路から王宮前広場周辺は完全に封鎖されているようです。


 

 

 

 

 

  

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