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 電気機関車(続き)

“タコ”のニックネームを持つ、1927年製の小さなバッテリー駆動の入れ換え用電気機関車971号は、電磁石のバッファーを備えています。軸配置はBで重量7t、DC132Vで3.7kW1台のモータを駆動して10km/hで走行。1992年まで使用されました。

バッテリー駆動の電気機関車 Ta 2/2 No.971

メーターゲージのStansstad-Engelberg Railwayの木造電気機関車1号は1898年の製造。750Vの三相交流で、屋根上には2本の架線に対応したパンタグラフを乗せています。軸配置はBで、出力110kW、速度は20km/h。1000分の250の勾配をリンゲンバッハ式のラックレールで上り下りし、下りは電気ブレーキを使用します。

ラックレールに対応した電気機関車 HGe 2/2 No.1
屋根上には2本の架線に対応する三相交流用の大きなパンタグラフ

標高3454mのトップ・オブ・ヨーロッパに登る、ユングフラウ鉄道(JB)の電気機関車1号は1898年の製造。凍結しないように、電気機関車も客車も木造なのだとか。機関車と客車を一体で設計して、客車の車重の一部を機関車が負担する構造として、全体で軽量化をはかっています。メーターゲージで、軸配置はB。三相交流出力で出力175kW、1000分の250の勾配をラックレールを使って、18km/hで走行します。JBで動態保存機を見かけたことがあります。

ユングフラウ鉄道の電気機関車 He 2/2 No.1
機関車と一体となった客車もNo.1

館内に収容できない車両は屋外に展示しているのですが、展示館から外部の道路に面した方に置かれた車両を見落としていました。博物館から出た後に気づいて、バス停横の道路から金網越しに撮りました。

1922年製造のスイス国鉄電気機関車、12332号。軸配置は動輪が6軸のように見えますが、台車の中央に大きなモータが乗っていて、ここからロッドで4軸を駆動する1BB1。

スイス国鉄電気機関車 Be 4/6 No.12332

ベルン・レッチュベルク・シンプロン鉄道(BLS)のAC15kV、16.67Hzの交流電気機関車No.258。軸配置はBBですがアルプス越えに対応した最高速度125km/h、1000分の27の勾配を400tの列車を牽引して75km/hで登る強力機。1955年製で2004年まで使用。背後に腕木式信号機。

BLSの電気機関車 Ae 415 No.258

レーテッシュ鉄道(RhB)の電気機関車602号とベルニナ線のパノラマカー。1953年製の602号の軸配置はBB。出力1184kWで速度は80km/h。

RhBの電気機関車 Ge 4/4I No.602

スイス国鉄の入れ換え用電気機関車No.278。ロッド式で軸配置はB。

スイス国鉄の入れ換え用電気機関車 No.278

この車両も道路からの撮影で、近寄れなかったのでよくわかりませんが、パンタグラフや煙突がないのでバッテリー駆動の電気機関車(あるいはレールバス)かと思われます。軸配置はホイールベースの長いB型。車体に書いたHANDECKとGUTTANNENはアイガー・メンヒ・ユングフラウのベルナーオーバーラント三山とアンデルマットの間にあるアルプス山中の地名で、ここで使われていたナローゲージの車両のようです。写真には撮れなかったのですが後ろに小さな客車を連結しています。

Handeck Guttannen のバッテリーレールカー?

 


 電車

電車をご紹介しましょう。赤いボンネットの特徴的な車体を持つ、スイス国鉄の“レッドアロー”(赤い矢)203号は1936年製。流線型が流行った時代で、日本の省電モハ52と同世代ですね。軽量鋼板やアルミ部品を使用し、車体構造を変えて軽量化、低床化をはかった車体で座席定員70人。出力394kWで、速度は125km/h。1968年まで使用されました。

スイス国鉄のレッドアロー RCe 2/4 No.203
レッドアローの車内

レッドアローのボンネットの部分まで客室を延ばしたような構造の“ブルーアロー”(青い矢)727号は、レッドアローの簡易廉価版としてベルン・レッチュベルク・シンプロン鉄道(BLS)が1935年に導入。収容力増加を目指して座席65人+立席36人。出力214kW、速度90km/hながらトレーラーも牽引できる経済性を備えています。1979年まで使用されました。

BLSのブルーアロー Ce 2/4 No.727
ブルーアローの運転台
ボックスシートのブルーアローの車内

オープンデッキの2軸客車のように見えますが、ヘッドライトがついてデッキには制御器があり、屋根上にはポールが乗る、スイスで最初の標準軌の電車です。1895年製で、ローザンヌの北にあるOrbe-Chavornay線に導入。電気系統はトラムの技術をそのまま転用しており、車体は座席定員20人+立席6人。600V、出力50kWで速度は30km/h。

標準軌の電車 Cfe 2/2 No.11

1888年にレマン湖畔の Vevey-Montreux-Chillon 鉄道が導入した2軸単車のトラムです。トラムの上に2本並んだ架線がありますが、ここからDC500Vの電気を取り入れ、出力11kW、速度16km/hです。車体は座席定員20人+立席15人。屋根上に観光客用のオープンデッキを備えています。

電車 Ce 1/2 No.4

1939年製のチューリッヒのトラム。青と白の塗色は今も同じですね。2軸の動軸の中間に小さな付随車輪があり、3軸になっています。ブレーキシューはレールを押さえるタイプ。軽量鋼板を使って重量を減らし、乗客数を増やすとともに、車掌のいる後ろから乗り、運転士側の前降りのシステムを導入したのだとか。車体は座席定員20人+立席67人。600V、106kWで速度は55km/hです。

チューリッヒ市電 Ce 2/3 No.32
チューリッヒ市電の台車周り

緑の2軸単車は、1931年製のバーゼルのトラム。正面に貫通扉が付き、付随車を牽引時に車掌は運転中に車両間を行き来できました。また、正面にブレーキホースが見えますが、始めからエアーブレーキを装備していました。車体は座席定員16人+立席20人。600V、105kWで速度は36km/hです。

バーゼルのトラム Ce 2/2 No.202

黄色いボギー車は、1902年に Neuchatel Tramway が導入した初期の大型車です。ボギー台車に1台ずつのモーターを持ち、長い車体の台枠はトラス棒で補強しています。両開き扉は後から改造したもので、最初はオープンデッキだったようです。車体は座席定員30人+立席28人。600V、72kWで速度は50km/hです。

Neuchatel Tramway Ce 2/4 No.43

1911年製、メーターゲージの Altstatten-Gais Railway が運行を開始したときの電車で、軸配置が珍しい片ボギー車です。車体は座席定員32人+立席10人。1000分の160の勾配があるためラックレールにも対応していて、1000V、140kWで速度は平坦線で30km/h、ラックレール区間で11km/hです。1970年まで使用されました。

Altstatten-Gais Railway CFhe 3/3 No.3

Zurich-Uetliberg Railway の1923年製2軸の電動車2号と1924年製付随車C41号。動態保存でしょうか、Uetliberg 周辺で1995年から2008年まで団体の小旅行用として運行されてきました。電動車2号のパンタグラフ取り付け位置が外に寄っているのは、路線の一部が Sihltalbahn Railway と共用になっているためだとか。電圧が異なるのでしょうね。2号座席定員24人+立席10人。出力145kW、速度は35km/hです。

Zurich-Uetliberg Railway の Ce 2/2 No.2
Zurich-Uetliberg Railway の付随車 C4 No.41

ホイールベースの長いメーターゲージの2軸の電車4号には、パンタグラフがありません。1939年に Meiringen-Innerkirchen Railway が導入した、バッテリー駆動のレールカー(レールバス)で、スイスではこの鉄道だけのシステムだそうです。前後のボンネットの部分がバッテリーを含む機械室になっているんでしょうね。この車両は座席定員30人+立席4人。DC 235Vで出力39kW、速度は30km/hです。1977年まで使用されました。

Meiringen-Innerkirchen Railway BFa 2/2 No.4

電車ではありませんが、トラムの範疇なのでここで紹介するのがチューリッヒの鉄道馬車です。1882年開業のチューリッヒのトラムは、20両の客車と81頭の馬を所有し、8.7kmの路線に44箇所の停留所がありました。一足先、1862年に開業したジュネーブの鉄道馬車は2頭立てでしたが、チューリッヒの車重は1.6tと軽量で、1頭で牽くことができたのだとか。この車両は座席定員16人+立席10人。1883年製で、1900年まで使われました。

ホーストラム C 2 No.27

 


 ディーゼルカー

スイスの鉄道では、ディーゼル車は少数派です。一見、蒸気動車のようにも見えるこのディーゼルカーは、舶用エンジンで有名なスイスのズルザー社が1914年に、ディーゼルエンジンを鉄道車両に導入するために Val de Travers 地域鉄道に納入したものです。3軸ボギー台車に乗った6気筒103kWのエンジンで発電機を駆動し、他端の2軸ボギー台車のモーターにDC300Vを供給して70km/hで走行します。車重は67tもあり、座席定員は57人。1965年まで使用されました。現在では、蒸気機関車による観光登山鉄道で知られるブリエンツ・ロートホルン鉄道を除くすべての鉄道路線が電化されていて、スイスにディーゼルカーが登場することはないでしょう。

Regional Railway of the Val de Travers の電気式ディーゼルカー ABm 2/5 No.9
モーター付きの台車のある側はこんな顔

 


 客車

スイスの鉄道の黎明期の客車2両が、最初に紹介した最古の蒸気機関車28号に連結されています。1等車、3等車、荷物車と3両の説明があるのですが、現車は2両だけ。デッキ部分の屋根を支える飾りから見て、緑は1等車、青は荷物車と見受けました。その後の車両と異なり、連結器にバッファーがなく、手回しのブレーキです。

1等車は、座席定員12人で速度は40km/h。1847年から1873年まで使用された車両を、スイス国鉄が1947年に復元しています。

黎明期の1等車 A2

荷物車は、最大積載量5t、速度は40km/h。1856年から1904年まで使用された車両を、スイス国鉄が1947年に復元しています。3等車は1856年製との説明がありますが、残念ながら現車が見つかりません。

黎明期の荷物車 F2 

豪華なシートを備えた St Gotthard Railway の1等車2号。1875製で、マッチ箱客車のコンパートメントが一般的であったこの時代に、車体中央に通路を設け、その両側に座席を設けた北米方式(と説明に書いていますが今の一般的な座席配置ですね)で竣工したそうです。

St Gotthard Railway の1等車 A2 No.2

丸屋根、オープンデッキの3軸客車は、1902年に5社が合併して成立したスイス国鉄のもとになった1社である、United Swiss Railway が合併前の1892年に製造した3等車7727号。この車両は合併後のスイス国鉄の基準を満たして、ジュネーブとドイツのミュンヘンを結ぶ国際列車にも使用されました。座席定員46人、速度75km/h。

スイス国鉄の3等客車 C3 No.7727

ボギー客車10222号は、1914年にスイス国鉄が導入したマホガニーの木造食堂車です。車内は18席ずつの2室に分かれ、マホガニーの壁や真鍮の金具、レザー張りの椅子などベルエポックの時代のリッチな内装です。厨房は石炭レンジを備え、採光窓付きのダブルルーフで換気は良好でした。車重39tで40席、速度110km/hで1960年まで使用されました。

スイス国鉄の食堂車 Dr4u No.10222
食堂車の車内

 


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