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“スイス ルツェルン 交通博物館”


 ルツェルンにあるスイス交通博物館

スイスの中央部、ドイツ語で“4つの森の州の湖”という意味になるフィアヴァルトシュテッテ湖畔の街ルツェルンに、ヨーロッパでも有数の規模を誇るスイス交通博物館があります。

湖畔の道路を交通博物館に到着するトロリーバス

国鉄ルツェルン中央駅から交通博物館への行き方は、国電Uバーンと湖を行く船、それに市内を走るバスやトロリーバスの3つの方法がありますが、本数が多くて便利なのはバスとトロリーバス。駅から10分ほどで到着します。

交通博物館横のバス停

スイス交通博物館 Verkehrshaus 停留所は、博物館のすぐ横。バスを降りると、金網の向こうに電気機関車が見えています。博物館の正面入口に向かうと、巨大なトンネル掘削マシーンの先頭部が出迎えてくれます。入場料はちょっと高くて30CHF(円安の2013年12月のレートで約3400円、3D映画館を含むと40CHF)、スイスの列車やバス、船や博物館が一部を除いてフリーパスになる“スイスパス”を持っていても半額になりますが、無料にはなりません。

正面入り口横で巨大なトンネル掘削マシンの先頭部が出迎えてくれる

館内は鉄道、自動車、飛行機、船舶の展示館に分かれていて、映画館やプラネタリウムもあります。充実しているのは、やっぱり鉄道です。鉄道車両の展示館では、収容しきれない車両が屋外にも展示されています。

鉄道車両の展示館

 


 蒸気機関車

ガラス張りの明るい鉄道車両の展示館。でも、逆光となって車両の撮影には苦労します。

まずは、蒸気機関車からご紹介しましょう。キャブに屋根のない蒸気機関車28号 GENF は、スイス最古の蒸気機関車で、Swiss Central Railway が1858年に導入した動輪が2軸のB型、出力294kW、速度は60km/h。写真ではわかりづらいのですが、動輪の後ろに台枠に固定された3軸の従輪がある変わった構造で、軸配置はB3です。バッファがなく、連結器が棒にピンを差し込むタイプですね。スイス国鉄で1899年まで使われました。

スイス最古の蒸気機関車 Ec 2/5 No.28

その前には、シングルドライバー、動輪が1軸の蒸気機関車 LIMMAT の模型が置かれています。軸配置は2A。実物は1850年代の製造で、28号より古いのかもしれません。

動輪が1軸だけの蒸気機関車 LIMATT号の模型

動輪が3軸のC型タンク機関車3号 LANGNAU は、Emmental Railwayが1881年に導入した、出力206kW、速度は50km/h。スイス国鉄で1933年まで使われました。

タンク機関車 Ed 3/3 No.3

ホイールバースが長い動輪が2軸のB型タンク機関車1号 GNOM は、勾配路線用にラックアンドピニオンを持ち、1871年に Ostermundigen Quarry(採石場) に導入されました。速度は25km/h。

山岳路線用にラックアンドピニオンを持つタンク機関車 H 1/2 No.1

動輪が2軸のB型タンク機関車11号は、横幅を抑えるためにシリンダーが上部にある構造で、St. Gotthard Railway 1881年製。出力55kW、速度50km/hで、スイス国鉄で1934年まで使用されました。

シリンダがデッキ上にあるタンク機関車 E 2/2 No.11

スイス国鉄最大の蒸気機関車2965号は、動輪が5軸で重量は128t。軸配置は1Eの1916年製で1964年まで運行。350℃の過熱蒸気により出力1070kW、速度は65km/h。アルプスを貫くゴッタルドトンネルの勾配路線で活躍しました。

スイス最大の蒸気機関車 C 5/6 No. 2965

2組の高圧と低圧のシリンダーを持つ4気筒で、外側の2気筒に加えて、台枠の内側に2気筒が隠れています。ピットの中に入ると、内部の構造を見上げることができるようになっています。

ピットの中に入ると内部の2シリンダーにつながる2本のピストンロッドがよくわかる

蒸気機関車の構造を学べるカットモデルになったC型タンク機関車1063は、中央ににリンゲンバッハ式のラックレールがある線路上に展示されています。ローザンヌとインターラーケンを結ぶメーターゲージのブリューニク線で1909年から1957年まで使用されました。平坦線と1000分の120のラックレールの勾配区間の両方で走れる構造とし、それぞれラックレールのピニオン用と動輪用に上下別々の合計4つのシリンダを持つ構造です。出力294kW、速度45km/h。

タンク機関車 HG 3/3 No.1063

標準軌の貨車の上にスイスで一番線路幅が狭い750mm、ナローゲージのC型蒸気機関車が乗っています。出力90kW、速度は25m/s。Waldenburg Railway で1912年から1953年まで使用され、1958年に最初に交通博物館に入った鉄道車両です。

機関車を乗せているスイス国鉄の貨車M6 67587号は、1912年製。

タンク機関車 G 3/3 No.6

ヨーロッパで最初のリンゲンバッハ式ラックレールに乗った蒸気機関車 Rigi Railway 7号は、平坦線から登山鉄道の1000分の250の急勾配まで、傾斜角が変化しても常にボイラの中に水を満たしておけるように、珍しい直立ボイラを採用しています。出力110kW、速度は7.5km/h。1873年製で、1937年に引退後、ヴィッツナウ・リギ鉄道125周年を記念して1996年に復活したそうです。隣には、リンゲンバッハ式ラックレールを含む駆動部分の模型が展示されています。軸配置は1Aです。

直立ボイラの蒸気機関車 H 1/2 No.7
リンゲンバッハ式ラックレールとピニオンの模型

こちらは1000分の480の世界最急勾配を登る、線路幅800mmのピラタス鉄道9号です。ケーブルカーではありません。自力で登っていきます。蒸気機関車と客車が一体化しているので、日本語では蒸気動車になるのでしょう。急勾配対策として、ボイラは線路と直角方向に横を向いています。足回りを覗くと、両側から2枚のギヤが中央のラックレールをはさむロッヒャー式ラックレールのメカニズムがよくわかります。出力77kW、速度は4.5km/h。動力を伝達するのは、機関車部分の中央床下のギヤだけです。

ピラタス鉄道の蒸気動車 No.9
左右2枚のギヤが中央のラックレールをはさむロッヒャー式のメカニズム

18号蒸気機関車と連結した26号客車のセットは、1894年にベルン市内の軌道に登場したスチームトラム。出力103kW、速度は25km/hで、客車を3両まで牽引する能力がありました。足回りはカバーされているので駆動部のメカニズムは見えませんが、上記のゴッタルド線のタンク機関車No.11と同様だそうです。客車は座席24+立席28で、冬季は機関車の蒸気で暖房が入ったのだとか。

ベルンのスチームトラム G 3/3 No.18
ベルンのスチームトラムの客車 C4 No.26

道路を走る蒸気自動車のようにも見えますが、実際は夜間の保線作業時等に必要となる照明用の電源車です。2気筒の蒸気機関でDC70V、4.9kWの発電機を駆動します。明かりを必要とする作業現場まで、馬で牽いていったのだとか。1892年製で、1920年まで使用されました。

蒸気発電機

 


 電気機関車

続いて電気機関車をご覧いただきます。昔のモーターは大きかったのですね。ベルン・レッチュベルク・シンプロン鉄道(BLS)の電気機関車、Ce 6/6 121号の台車に乗ったモーターです。クランク軸を用いて、1台で3軸を駆動します。これが箱形の車体の中に2組収まっていて、EF型の電気機関車を構成していたのですね。

Bern Lötschberg Simplon Ce 6/6 121号のモーター駆動ユニット

ヨーロッパの標準軌の鉄道で、最初に三相交流モーターを使用した電気機関車、1899年製 Burgdorf-Thun Railway の2号です。車体に搭載した1台のモータからクランクで2軸を駆動するEB型、750Vの40Hzで出力は220kW。架線は2本あって、パンタグラフのシューは真ん中で絶縁されています。構造は簡単ですが、速度は18km/hと36km/hの2段階の設定のみで扱いにくいとされてきました。

三相交流電気機関車 De 2/2 No.2
No.2の正面は5枚窓のこんな顔

メーターゲージの氷河急行路線、レーテッシュ鉄道が1913年から60年間使用した小さな電気機関車207号。車体の中央に大きなモータを1台搭載してロッドで連結した動輪2軸を直接駆動する、低速モータで減速ギヤがない簡易な構造で、軸配置1B1。出力220kW、速度は45km/h。いつでも整備できるようにでしょうか、車内に各種サイズのスパナのセットが。

電気機関車 Ge 2/4 No.207
車体に大きなモータを1台搭載している

アルプスに挑む、ベルン・レッチュベルク・シンプロン鉄道(BLS)の電気機関車151号。軸配置は1E1。車体に搭載した2台のモーターから減速ギヤを介してロッドで5軸の動輪を駆動するシステムです。単相交流で出力1840kW、速度75km/hは、1913年の登場時はヨーロッパの電気機関車最大出力でしたが、振動によるロッドの破損事故等の問題が発生したそうです。

電気機関車 Be 5/7 No.151
2台のモーターからロッドで5軸の動輪を駆動

三相交流に比べてメリットの多い単相交流の試験用電気機関車として1903年に製造された1号。軸配置はBB。出力294kWで速度は60km/h。本線用電気機関車を開発するための各種試験に使用されました。試験用のパンタグラフが搭載されています。足回りは、直流機ですが日本が碓氷峠用に輸入したED41とこれを国産化して量産したED42によく似ています。

単相交流の試験機関車
L型車体の端面

レーテッシュ鉄道が1921年に導入した、メーターゲージの貨物用電気機関車“クロコダイル”402号。スイス国鉄の“クロコダイル”をモデルにしているものの、旧来のロッド式の駆動方式を踏襲しています。軸配置はCC。11kV、16.67Hzの単相交流で出力790kW、速度は55km/h。1984年まで使用されました。

レーテッシュ鉄道の電気機関車クロコダイル Ge 6/6I No.402
台車内の1台のモータからロッドで3軸を駆動する方式

スイス国鉄が1920年に導入した山岳路線用の強力な貨物用電気機関車、“クロコダイル”13254号。軸配置は1CC1で重量126t、出力2700kW、速度は75m/hで、スイスでは1982年まで使用され、同型はインドにも輸出されているのだとか。

スイス国鉄の電気機関車クロコダイル Be 6/8II No.13254

流線型の車体を重連にした11852号は、スイス国鉄が1939年にゴッタルドトンネル越えの重量貨物列車牽引に導入した、当時の世界最強力の電気機関車。1B1B1の軸配置の車体を2両背中合わせの重連にして重量236t。1軸に2台ずつ、計16台のモータを搭載して出力8800kW、速度は110m/hで、1971年まで運行されました。運転台や機械室内の見学が可能です。

スイス国鉄の強力な電気機関車 Ae 8/14 No.11852
以外とシンプルな運転台
左右にモータが並ぶ機械室内

スイスの州の紋章を付けた国鉄の貨物用電気機関車11413号は、1956年の製造。同型式は1952年から66年までに119両が製造され、スイス国鉄で50年以上にわたって活躍してきました。軸配置CCで重量120t、速度は125km/h。

スイスの州の紋章を付けた電気機関車 Ae 6/6 No.11413

 


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