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SSBシュツットガルトのトラムを代表する車両といえば、GT4型2車体連節車。1959年から1965年までに350両(編成)も製造され。メーターゲージから標準軌のUバーンに置き換わる2007年まで使用されました。この型式の登場で、2軸車の多くが淘汰されています。

519号は1960年製で、全長18m、重量19.08トン、出力100kW×2、座席49名、立席100名の定員149名。T2型までと大きく変わったところは1車体1台車の連節化、片運転台にプラグドアの片側ドア化、駆動方式の吊りかけ式から乗り越しカルダン化です。

正面のヘッドライトはT2型と同じ縦に2灯ですが、何故か519号は下部の1灯が埋められています。運転台を折りたたまれていますが、ワンマンによる連結運転の後部車になるときの対応でしょう。

 

 ▲ SSB GT4型509号

 

 ▲ 折りたたんだGT4型509号の運転台

 

 ▲ GT4型509号の車内

 

 ▲ GT4型509号の車内後部

 

▲ GT4型509号の後部 

ドアは、前の車体の前後に2個所、後ろの車体は後部に1個所だけ。車体の後面にもヘッドライトが1灯。入庫時等に簡易運転台使用するのでしょう。

519号はピットの上に停車していて、階段を下りて車両の床下を見学することができます。急勾配路線があるからか、GT4型は路面電車としては強力な100kWのモータを各車体に1台ずつ、1編成で2台搭載していますが、台車内に納まりきらないのか、車体に取り付けてユニバーサルジョイントで台車の車体中央側の動軸を駆動する乗り越しカルダン方式を採用しています。

 

 ▲ 乗り越しカルダン駆動のGT4型509号

 

 ▲ ドラムブレーキだけの付随車輪

 

 ▲ 乗り越しカルダンの駆動方式

これって、日本では名古屋の800型が採用していました。出力は同じ100kWで、名古屋はボギー車だったのでモータ軸を両方の台車にのばしていたようです。

この他にGT4型が2両、722号と642号を連結して展示されています。722号には、縦に2灯のヘッドライトが残っています。1灯化された519号と642号は屋根に加えて幕板上部もグレーで、722号と微妙に塗り分けが違います。

 

 ▲ GT4型722号

 

 ▲ GT4型722号の側面

GT4型は、ループ線で折り返す片運転台で、右側通行のため扉は進行右側だけ。左側通行で折り返し運転を行う日本の路面電車に適応するため、土佐電鉄が買ってきて現在は福井鉄道が運行するシュツットガルトのGT4型735号は、運転台のある前部の車体を2両分を背中合わせに接合して両運転台化し、連結器を撤去しています。

博物館の保存車と微妙に形態が異なるのか、前方ドアの対面、運転台のすぐ後ろの上段下降式で大きく開けられる窓が735号では異なるので、正面両サイドの窓を開閉式に改造したようです。駆動方式の乗り越しカルダンは、オリジナルのままだと思います。

 

 ▲ GT4型642号

 

 ▲ GT4型642号の車内

 

 ▲ GT4型642号の後部

SSBのToD4型は、2軸車のT2型を片運転台片貫通型に改造して、2両の間に台車のない浮き床式の短い車体を挟んだ3車体連節車。1964年から1966年に70両のT2型が35両のToD4型に改造されました。ドアはスイング式に改造されています。ニックネームは“2室とキッチン”。全長22.68mで出力はT2型のままの69kW×4。1983年まで使用されました。

 

 ▲ SSBの3車体連接車ToD4型912号

車体にブドウ畑を描いたToD4型999号は、1965年に連節化改造した車両を1980年に改装したパーティートラム。改良した座席にテーブル、キッチン、バー、ダンスフロアにトイレもあり、最新の音楽設備も装備していたのだとか。1996年まで使用されました。

 

 ▲ ToD4型のパーティートラム999号

古風な2軸の貨車があります。説明の看板を撮るのを忘れたので、製造時期や用途はわかりません。

 

 ▲ 古い2軸貨車

 

 ▲ 保線資材等を積載したトレーラー

保線用の資材等を積載した貨車のように見えますが、車輪を見ると道路上を運搬していたようです。

SSBの2軸の凸型電気機関車2023号は戦後の1946年製。戦争により工場が被災し、鉄をはじめとする資材不足の中で1946年から1950年に12両が造られ、爆弾で破壊し尽くされたシュツットガルト中心街のがれき撤去に活躍。6両は売却され、6両が残り、1995年まで使用されました。全長5.9m、出力135kW×2。

 

 ▲ 敗戦直後の2軸凸型電気機関車

 

 ▲ SSBのレール輸送用貨車

凸型電気機関車が2両のフラット貨車を連結しています。長さ6mの2軸車で、レールやポイントの部品、新しい地下駅のエスカレータなども運んだのだとか。2両の車体の中央には、レールなどの長いものを橋渡しに乗せて急カーブが曲がれるように、回転できるボルスターを装備しています。1919年から1947年の間に8両造られ、1999年まで使われました。

長さ7mの2軸貨車2051号は、1914年から1926年に13両造られ農産物をシュツットガルトの市場まで運びました。

 

 ▲ 農産物を運んだ貨車2051号

車輪の間に砥石を装備した長さ3mの車両は、1909年製の塩運搬貨車を1955年に改造したENDの郊外路線用レール研磨車。荷台に載せたタンクには、研磨中の砥石の冷却と押しつけ力のためのバラストを兼ねた水を積載。1978年まで使用されました。

 

 ▲ 貨車改造のレール研磨車

SSBの貨車2092号の用途は砂の輸送。ブレーキサンドとなっていますが、スリップ防止のために線路に撒く砂のことかと思います。乗務員がトラムの座席の下にある砂箱に補充するため、路線の終点に保管する砂を輸送する1944年製の貨車で、2両あり1991年まで使われました。1970年に1300型電車(付随車)の台車とフレームに換装しています。

 

▲ SSBの砂運搬用の貨車

SSBの2137号は、1928年製の架線用のはしご車で6両ありました。車体のフレームは、馬車軌道当時のものと思われます。トラムで工事個所まで牽いていき、架線修理の作業中は両側の長いグリップで線路から持ち上げて横に降ろし、塔はクランクとウインチで上下させる構造です。

 

 ▲ 塔が上下する構造のはしご車

荷台に傾斜のついた小さな貨車はケーブルカー用。ケーブルカーのポイントに合わせ、右側の車輪は両フランジで、左の車輪にはフランジがありません。

 

 ▲ ケーブルカーの貨車 両フランジとフランジ無しの車輪に注目

第一次世界大戦以前のボギー車は、車輪径の異なる台車を使用する例がよくみられました。軸重の配分が、吊りかけ式モーターの付いた大径に67%、小径の付随輪に33%となります。

 

 ▲ 車輪径の異なるマキシマムトラック

ENDが1958年に新型の電動車と付随車各1両ずつ導入して、2009年まで使用した付随車が使用していたボギー台車。床を低くできる新設計の付随台車で、溶接組み立てで車軸はドラムブレーキ付き。

 

 ▲ 付随車の台車

ラックレールを使用して急勾配を登る路線で使われた専用のラックトラムは3軸車で、ラックギヤの付いた中間軸にモーターから二段減速で伝達し、急勾配に対応していました。動軸がこの1軸だけなので、路線の平坦な部分でもラックレールが敷設されていたのだとか。

 

 ▲ ラックレールと噛み合うギヤの付いた車輪とモーター

車輪の破損等で動けなくなったトラムを台車ごと乗せて運ぶための台車で、2軸のボギー車に対応しています。駐車違反のレッカー移動と同じですね

 

 ▲ 電車を乗せて運ぶ台車

英語の説明が無いのですが、600mmゲージで出力12PS、4トンで1936年製の工事用ディーゼル機関車と、砕石運搬用のホッパー車のようです。

 

 ▲ 工事用のディーゼル機関車

 

 ▲ 工事用のトロッコ

木製の椅子からクッションの付いたGT4型、現在のUバーンまで、歴代車両の座席が並んでいます。

 

 ▲ 歴代車両の座席

左の2つは、ドイツマルクで金額が書いてあるので券売機でしょう。ハンドルが付いているので、手動かもしれません。右は日付と時刻の刻印機だと思われます。

 

 ▲ 券売機と刻印機

大型模型のレイアウトがあります。本物の電車の制御器を使って動かすのが、トラム博物館らしいところ。

 

 ▲ 本物の制御器で模型を運転

お土産コーナーには、トラムやUバーン、バスの模型が。

 

 ▲ ミニチュアもあります

これでトラム博物館はおしまいですが、壁で仕切られた車庫の建物の隣の部屋が見えるガラス窓があります。覗いてみると、広い庫内に何両ものメーターゲージの動態保存車が並んでいます。市内には、標準軌との3線式の軌道を撤去せずに残している路線もあるそうで、機会があれば動態保存車でシュツットガルトの街巡りをしてみたいものです。

 

 

 ▲ 車庫内の動態保存車

シュツットガルトトラム博物館(トラムワールド)のホームページは、こちらからどうぞ


 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

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