同型の2軸の付随車が2両、1023号と1033は1929年製のハノーファー市電。
▲ ハノーファーの2軸付随車1023号
▲ ハノーファーの2軸付随車1033号
塗り分けは異なってもほぼ同じ車体、戦後西ドイツ2軸車の標準型、1948年のデュワグ製で出力120kW。この100号は、スウェーデンの首都ストックホルムの南西にあるノルヒェーピングの市電で使われていたのだとか。西ドイツ以外でも走っていたのですね。でも、元をただせばドルトムント市電だったようで。
▲ ノルヒェーピングの2軸車100号
一方、戦後の東ドイツの標準的な2軸車はゴータカー。3011号は1969年製の東ベルリン市電で出力120kW。60年代末でもまだ2軸車を造っていたんですね。
▲ 東ベルリンの2軸車ゴータカー
色を見ればわかるミュンヘン市電。2667号は1965年製の3軸車で、出力200kW。連結しているのは同型の付随車で1957年製の3408号。こちらもモーターは搭載していないが3軸車。
▲ ミュンヘンの3軸車2667号
▲ ミュンヘンの3軸付随車3408号
334号はボンの3軸車で1959年製。両側扉ですが片運転台で、最後尾はバスの後部席に似た座席があります。クッション付きのソファーのような座席は、進行方向が決まっているのにボックスシート。連結している付随車358号も同じ1959年製。
▲ ボンの3軸車334号
▲ 334号の運転台
▲ 334号の車内
▲ 付随車358号も3軸車
赤と白の塗り分けに黒帯で、ウイーンのトラムかと思ったら地元のハノーファーでした。1951年製のボギー車でデュワグ製、出力200kW。片運転台で片側扉、車内はボックスシートでパイプ製の荷物棚も。
▲ ハノーファーのボギー車715号
▲ 715号の車内
デュッセルドルフのデュワグカー5103号は、両運転台なのに片側扉。後部は回送時に使うのでしょうか。1955年製で、出力200kW。
▲ デュッセルドルフのボギー車5103号
▲ 5103号の後面
トラムで周遊中に見かけた269号は、デュワグ製3車体連節車で、2両の単車が短い浮き床式の車体を挟むタイプ。カッセルからオランダのアムステルダムを経てデンハーグに行き、再びドイツに里帰りしたようです。
▲ オランダ デンハーグの3車体連節車269号
デュッセルドルフの2304号は1957年製。西ドイツ各都市やライセンス生産等でオーストリアでも活躍し、一世を風靡した2車体3台車の連接車GT6型。全面窓の傾斜した、これぞ西ドイツのデュワグカー。
こうやって見ていくと、デュワグカーのデザインの変遷がよくわかって面白いですね。
▲ デュッセルドルフの連接車2304号
日本では、土佐電鉄から福井鉄道に移籍したシュツットガルトの735号が有名ですが、GT4型といえはメーターゲージのシュツットガルトという中で、珍しい標準軌で両側扉、前後運転台で1961年製のGT4型。車体にはノインキルヒェンとありますが、フランクフルト南西のフランス国境に近いこの街のトラムは廃止されています。
▲ノインキルヒェンのGT4型2号
この日稼働中のアムステルダム902と同形の付随車968号は、傍らで休んでいます。同世代1949年製の3軸車です。
▲ オランダ アムステルダムの付随車968号
同じく稼働中のブレーメン3533号と同型で、同じ1976年製の2車体連節の付随車3733号も昼寝中。
▲ ブレーメンの2車体連節付随車3733号
西側のデュワグカーに対する東側の高性能車は、チェコスロバキアのタトラカー。旧共産圏に総数20,000以上供給した中で、丸いタトラのドイツ向けバージョンはT4。1968年製で出力172kWの、ベルリンとハノーファーの間に位置する旧東ドイツのマグデブルク市電1008号。
▲ マグデブルクのタトラカー1008号
乗客の乗れない事業用の車両も何両かあります。6131号は、オーストリアの首都ウィーンの電動貨車で、1914年製の2軸のトラムを1924年に改造したようです。
▲ オーストリア ウィーンの電動貨車6131号
緑の6051号もウィーンの電動貨車で、1914年製の2軸のトラムを1923年に改造したようです。出力81kW。
▲ オーストリア ウィーンの電動貨車6131号
2軸の電動貨車、ハノーファーの801号は1928年製で出力92kW。窓は後年の改造でしょう。
▲ ハノーファーの電動貨車801号
黄色い350号は北ドイツ、ハンブルクの北にあるバルト海に面した都市キールで、1900年製1100mmゲージのトラムを、1953年に改造したようで、ドイツ語を英語に翻訳するとドライビング スクール カーとなります。車内には教室の机と椅子が並び、前方の壁面には黒板も。
▲ キールの350号 ドライビングスクールカー
▲ 350号の運転台
▲ 教室の机と椅子が並ぶ車内
緑の2軸の凸型電気機関車100号は1900年製。デュッセルドルフに近いデュイスブルクで使われていたようです。
▲ デュイスブルクの凸型電気機関車100号
ハンガリーの首都ブダペストの地下鉄1号線は、ヨーロッパ大陸初の地下鉄として世界遺産にも登録されています。その開業に合わせて1896年にハンガリーのガンツ社で造られたのがこの木造車12号。トンネルの天井が低いので、台車の上を運転席と客室の座席とし、中間の床を下げることで車内の高さを確保しています。現在の車両は、2車体3台車の鋼製連接車ですが、基本構造は同じです。
▲ ブダペストの地下鉄1号線12号
▲ 運転台の直接制御器とハンドブレーキ
▲ ブダペストの地下鉄1号線12号の車内
現存する世界最古の懸垂式モノレール、ヴッパータール空中鉄道56号。鉄のレールに鉄の車輪でぶら下がって走ります。車体の天井に取り付ける台車が逆向きで置かれています。1912年製で出力50kW。現行のヴッパータールの車両は、ボギー車2両の間に台車のない短い車体を挟む3車体連節車ですが、ここにある車両と同型車も動態保存されています。
▲ ヴッパータール空中鉄道56号
▲ 懸垂式モノレールの台車
架線工事用のはしご車もあります。実際に、今でも架線のメンテナンスに使われているのかもしれません。
▲ 架線工事用はしご車
これは何でしょうか。手作り感溢れる用途不明の車両もありました。
▲ この車両は何でしょう
大型の2軸台車が展示されています。日本で一般的なブリル21等の米国設計の台車とはずいぶん違います。説明が貼ってあるのですが、この博物館は全てドイツ語だけ。
▲ 大型の2軸台車
保存されている自動車を見かけたのは、この三輪トラック1台だけ。
▲ 三輪トラック
ハノーファートラム博物館では、ドイツトラム博物館から引き継いだのでしょうか、展示車両以外にも多くの車両があって、建物内に収容されたものや、シートをかけて線路上で保管されている車、長年放置されて荒れた状態のものまで、展示運転の車窓から見ることができます。
シュツットガルトのトラム博物館にハノーファーから引き取った車両として、20年間屋外に放置され、屋根が抜け落ちた付随車が展示されていました。ボランティアベースでの限界を感じます。
▲ 展示運転の車窓から保管されている車両が数多く
この他、屋内には模型やシミュレーターの施設もあったようですが、1時間に1本のバスの時刻になったので立ち寄れませんでした。路面電車ファンにとっては、充実した時間を過ごすことができる博物館です。
ハノーファートラム博物館のホームページは、こちらからどうぞ。