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“ポルトガル リスボントラム博物館 CARRIS MUSEUM”

ポルトガルの首都リスボン。旧市街の狭くて急勾配の路地を縫うように走る小さな路面電車は、貴重な観光資源であるとともに、日常の市民の足として親しまれています。市内のトラム、バス、ケーブルカーと有料エレベーターを運行しているのは、Carris (カリス)社。

市の中心部からテージョ川に沿って、世界遺産ジェロニモス修道院やベレンの塔があるベレン地区に向かうトラム、15系統の路線の途中に、1999年にオープンした Museu da Carris (Carris Museum) カリス社の運営するトラム博物館があります。

黄色い15系統のトラム 赤い観光トラムとトラム博物館 2014/2

最寄りの停留所は、Santo Amaro。頭上をテージョ川に架かる道路と鉄道の併用橋、4月25日橋へ向かう高架橋が横切る所で、トラムの窓から上を見ていると下車する停留所がわかります。

そこはトラムの車庫。事務所のある建物に行く入口の門をくぐると守衛所があり、トラム博物館に行きたいというと、すぐ右にある建物と教えてくれます。入口でチケットを買います。2014年段階で4ユーロ 。

トラム博物館の正面玄関

後でわかったのですが、博物館には3個所の展示館があります。入口を入った建物の1階が第1展示館(第1展示館、第2展示館等は私が勝手に名付けたものです。現地で番号で呼んでいるわけではありません)。ここでは主にパネルや模型により、リスボンの市内交通の歴史や変遷を示しています。

大型模型では、鉄道馬車から始まり現在のデュワグ/シーメンスの部分低床車に至る車両が展示されています。

鉄道馬車から始まった
オープンデッキの2軸単車173号
高知の土佐電鉄に仲間がいるボギー車900型
平坦線の15系統で使われている3車体連接部分低床車500型

ボンネットバスの模型もあります。運転席がエンジンの横まで、前に飛び出ていますね。その他には歴代の切符や定期券、職員の制服なども。

ボンネットバス

リスボン市内には、トラムでは登れない街中の急な坂道にケーブルカーが3個所あります。今でもクラシックな車両が上り下りしていますが、展示パネルを見ると昔はもっと変わった車両を使っていたようです。グロリア線では片側の車輪が歯車になって、ラックレールと噛み合っているように見えます。

グロリア線のケーブルカー
ビーカ線のケーブルカー

昔はリスボンの市内の各地を網の目のようにむすぶトラムの路線があったんですね。地下鉄の開通やバスへの置き換えでずいぶん路線を縮小してきましたが、クラシックなトラム自体が貴重な観光資源となっている現在、生き残った5路線は今後も安泰でしょう。

かつては網の目のようにトラム路線があった

直接制御器とシートの内部構造を示すカットモデルも展示されています。座席は表面が畳表のような繊維で、背ずりが転換式になっています。

直接制御器とシートのカットモデル

地下鉄車両の変遷も展示しています。リスボンの地下鉄はCarris社ではなく、Transportes de Lisboa の運行ですが、1日(24時間)乗車券等は両社共通で使えます。リスボン滞在中に乗車した現在運行中の車両は、全て正面1枚窓だったので、左側の写真の車両は引退済みだと思います。

地下鉄の変遷

第1展示館内にいる客は私たち2人だけ。一通り展示を見終わった頃を見計らって、職員の方が呼びに来ます。後について展示館の裏口から出ると、そこは車庫の構内。ここで待つようにと行って、車庫から1台のクラシックな車両を出してきます。

ダブルルーフのクラシックなトラムカー1号

この電車に乗って、実物の車両が展示されている第2展示館に向かい、見学が終わると、またこの場所まで送ってもらいます。往復の様子を動画でご覧下さい。

 クラシックなトラムカー1号で車両の展示場を往復します

この車両は、観光営業に使用するツーリストトラム1号。オープンデッキにダブルルーフの明かり窓のガラスには模様が入り、シートはフカフカの転換式クロスシート。デッキへの出入り口付近だけロングシートになっている配置は、市内で一般営業に活躍する現役車両と同じです。

オープンデッキに立って運転
ツーリストトラム1号の豪華な車内

天井には優雅なシャンデリア、豪華な内装です。吊りかけモーターが唸り、エアブレーキを装備しているので床下からはコンプレッサの音が。路線の電化時に用意した1901年製の437号を、1965年にCarris自社工場で整備してツーリストトラム1号とした時に装備したのかもしれません。

天井には優雅なシャンデリア

車庫の裏の方までぐるっと回り込み2〜3分で到着、トラバーサの前で停車。その向こうの車庫の一部が第2展示館になっていて、運転士さんの案内で中に入ります。ここも私たち2人だけの貸し切り状態。

車庫の入口にトラバーサーがある この一部を展示館として使用

Carris社が公共交通機関の運行をはじめたのが1873年。2頭の馬でAmericanoとよばれた、長さ6mの2軸車を牽きました。実物はアメリカ製だったのでしょうね。電化して電車の運転になったのは、1901年です。ここに展示している100号は、Carrisの工場で製作したレプリカです。

二頭立ての馬車 Americano tram

283号は、現存する唯一側面がオープンのボギー車。1902年に運行を開始。1950年代には教習車として使われ、10年ほどで引退。米国ブリル製で、長さ11.35m。台車はマキシマムトラックのブリル22Eに25HPのモータを2台搭載。ハンドブレーキのみ。

側面オープンカーの283号

オープンデッキで、ベスチビュールもない吹きさらし運転台の444号は、1901年に電車の運転を開始したときに導入した401〜474号のうちの1両。米国セントルイス製のため、ポルトガル語で“SAO LUIS”と呼ばれたとか。1952年に引退後、初期のスタイルに復元したものです。長さ8.5mの2軸車で、台車はブリル21E。出力25HPのGE製のモータを2台装備、ハンドブレーキのみ。

第2展示館までの送迎に使われている観光トラム1号は、444号と同型の437号を整備したものだそうです。

1901年電化時の444号

444号と同じダブルルーフですが、1924年製の508号は正面にベスチビュールが付き、現在も運行している車両に近いスタイルになりました。ブリルタイプの車体を初めてCarris自社工場で製造した、508〜531号のトップナンバーです。台車はブリル21Eで、25HPのモータを2台装備しています。1980年頃まで使用されました。

ダブルルーフの508号

丸屋根になった535号は、現在運行されている車両のオリジナルのスタイル。1928年のCarris自社工場製532号から551号までの1両で長さ8.4mの2軸車、45HPに出力アップしたモータを2台装備しています。1991年に引退し、1928年登場時のスタイルに戻されました。手動ブレーキ、エアーブレーキ、電磁ブレーキ、電気ブレーキを装備。

高知の土佐電鉄がリスボンから買ってきて走らせた、コカコーラ電車533号はこの仲間です。

丸屋根になった535号

533号によく似た車体の260号。1901年の電化時に運行を開始した203号から282号の中の1両で、オリジナルは上に写真を示した側面がオープンになったボギー車283号の2軸車バージョンです。第1展示館に173号の模型がありましたが、これに類似の車体だったと思われます。後に自社工場で長さ8.4m、上記535号に類似の車体に更新して、1983年まで使用されました。台車はブリル21E、25HPモータを2台搭載。手動ブレーキ、エアーブレーキ、電磁ブレーキを装備。

車体新造の260号

549号は、上記の535号と同じCarris自社工場製532号から551号までの1両で1929年製。台車はブリル21Eで、性能は535号と同一。長年にわたって各部に改造が加えられ、車内では収容力を増すために、2人がけの座席8脚2列から2人がけと1人がけそれぞれ8脚1列ずつになっています。1991年まで使用されました。

現在稼働中の500番台の車両は、台車とモータを交換してカルダンドライブの高性能車に、デッキに自動式のドアとバックミラーを装備し、後部運転台を撤去して片運転台化、屋根にはシングルアームのパンタグラフを追設(ポールは残存)、バンパーには方向指示器とブレーキ灯を設置していますが、オリジナルのスタイルは崩れていません。

1990年頃までの標準的なスタイルの549号

よく似たスタイルの777号ですが、1931年に自社工場で571号として製造されています。車体にはドアとバックミラーが装備されていますが、特徴的なのが1985年に片運転台化して右側面のドアを埋め、この部分に窓を設置する改造を行い、777号に改番しています。この改造は他にも何両かに実施され、1996年まで使用されました。寸法や性能は、549号とほぼ同じです。

現在稼働中の500番台の車両は、片運転台化されていますが、ドアは残存しています。また、700番台の現存車両は、ブリル型の台車に吊りかけモータ、両運転台のままです。

片運転台に改造して左側面のドアが無くなった777号

ヘッドライトが2灯で側面2段上昇窓、車体長8.5mの近代的な車体の2軸車、506号は1914年製の506号の機器を流用して、1953年に自社工場で8.5mの車体を新製したもの。片運転台でドアは右側面のみ。トレーラーと組み合わせて2両編成で使用されました。

片運転台でドアが右側だけにある506号

101号は1950年の自社工場製、車体長8.5mの2軸のトレーラー。101〜200号まで100両のうちのトップナンバーで、ドアは片側だけ。開業時から使われてきた開放型のトレーラー(馬車のことでしょう)を置き換え、1991年まで使用されました。

トレーラーの101号とその台車

1号トラムでここまで送ってくれた運転士さんが、私たちの様子を見に来ます。まだゆっくりと展示を見ていたので、終わったら出口にある売店に声をかけるように言い残して、戻っていきます。


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