“ブダペスト 世界遺産の地下鉄博物館”


15年ぶりに訪れたハンガリーの首都ブダペスト。前回訪問時には3路線だった地下鉄に、無人運転の4号線が新たに開通しています。4路線の中で最初の1号線は19世紀末にハンガリー建国1000年を記念する博覧会の開催に合わせて市街地と会場を結び、1896年に開業したロンドンとイスタンブールに次いで世界で3番目の地下鉄。ロンドンは蒸気機関車で開業、ヨーロッパ大陸では2番目ですが、イスタンブールは地下ケーブルカーのため、電車による地下鉄としては世界初だそうです。

アンドラーシ通りの地下鉄入り口 階段を降りたところがもうホームのレベル

ブダペストは、ドナウ川をはさんでブダとペストに分かれ、地下鉄1号線はペストのメインストリートであるアンドラーシ通りの地下を走っています。歴史的な建築物が立ち並ぶアンドラーシ通りとともに地下鉄1号線も世界遺産に登録されました。

通りの直下の浅くて低いトンネル。天井に取り付けた剛体架線から、小さなシングルアームのパンタグラフで集電しています。

地下鉄1号線の電車 低いトンネルの天井に剛体架線

1973年から運行されている現在の車両は、地元のガンツ社が製造した3車体4台車の連接車。客室の天井高さを確保するため台車間を低床とし、前後の台車の上は運転室、連結面は非貫通で連接台車の上は機器室に使う特殊な構造。

低いホームからノンステップの車両に乗車

ペストの中心で、地下鉄1、2、3号線が地下で交差するデアーク・フェレンツ広場駅。その構内に、1896年の1号線の開通から1954年まで使われ、線路の付け替えで廃止されたホームを活用した地下鉄博物館が設けられています。地下鉄を降りて場所がわからず、あちこちで聞いたら駅の切符売り場の奥にありました。

ホームレスが寝ている地下通路にある切符売り場の奥が地下鉄博物館

小規模な博物館ですが、カーブしたホームに3両の電車が保存展示されています。

博物館の奥に実物車両が保存展示

手前にいるのが開業時にシーメンスが製造した19号。巨大なボギー台車を履き、リベットで組み立てた頑丈そうな鋼製台枠の上に木造車体を乗せています。トンネルの天井には、2本の剛体架線。

車両の上、トンネルの天井には2本の剛体架線

トンネルが低いので剛体架線と車両の屋根の間の隙間はごくわずか。通常のパンタグラフでは折りたためないためか、車体側面の台枠上に上下装置を有する特殊なパンタグラフを前後2か所に装備しています。

パンタグラフの上下装置

車内の高さを確保するため台車間を低床にして、両開きの扉が中央に1か所だけ。入り口横の“FJFVV”の切り抜き文字は、開通時開催されたハンガリー建国1000年を記念する博覧会へ乗車した、オーストリア・ハンガリー帝国の皇帝“フランツ・ヨーゼフ”名を冠しているのだとか。

中央扉とその横の皇帝フランツ・ヨーゼフの切り抜き文字

車内はロングシートながら、木製のシートが車両の端面までU字型の配置されています。天井からぶら下がるつり革は本物の革製品。

車内には木製のシートがU字型に配置
つり革は本物の革製

反対側の正面には中央窓下にジャンパ栓受らしきものがあり、ヘッドライトは2灯化。ベルらしきものの位置も窓下から窓上へ。開業時の姿への復元が不完全なのでしょうか。

反対側はヘッドライトが2灯にジャンパ栓

駅と電車の模型から、アンドラーシ通りのごく浅い地下を走る様子がよくわかります。

アンドラーシ通りの浅い地下にある駅の模型

また、木造車の模型もあります。前後2基の特殊なパンタグラフがよくわかりますが、この車両は2扉で、マキシマムトラックのような台車の形状も実物の19号とは異なっています。

この模型は実物の19号とは形状が異なる

ホームの奥にいるのは1号車。片運転台に改造されて制御車と連結した晩年の姿で、パンタグラフの昇降機構もシンプル化されているようです。

開業当時の車両を片運転台化した1号車
1号と制御車81号の連結面

1960年製の制御車81号は片運転台の2軸車。中央部に1か所の両開き扉。車内はビニール張りのクロスシート。径の小さな車輪を採用して、扉の前後は床を一段高くしているものの、座席の下には車内にはみ出す車輪のカバーがあります。時代を反映してつり革はビニール製。

路線の延長と大規模なリニューアル工事が完成して現在の車両に交代したのは1973年だそうで、わずか13年の活躍に終わったとか。

2軸の制御車81号
制御車81号の車内

1号+81号の模型があります。2基の特殊なパンタグラフがよくわかります。

1号+81号の模型

現役の3車体連接車の模型もあります。台枠の厚みを減少し、モーターの小型化により車輪径を小さくして屋根とトンネルの天井間にスペースを生み出し、屋根上に小型のパンタグラフが乗るようにしたようです。

現役の3車体連接車の模型

19世紀末の建設工事の様子や初期の車両の写真がパネルで展示されています。

建設工事の様子
初期の車両の写真

共産主義の時代に2号線と3号線に導入された、モスクワやサンクトペテルブルクと同じ2種類のソ連製地下鉄車両の模型もあります。ブダペストの3号線は、いまでもこの形式が現役です。

ソ連製の地下鉄車両の模型

 


 

 

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