扇形庫内の保存車両
広い扇形庫内には数両の車両がいるだけ。一部の扉は開いているものの、柵で庫内への立ち入りが制限されています。説明の看板がないので、ネットで調べてみました。
茶色の車両はBbmotと呼ばれる1950年代末製造のディーゼルカー。両運転台で片方の運転席の後部は機関室になっていて、客車も牽引したようです。
ディーゼルカー Bbmot |
半流線型のディーゼルカーは、MÁV governmental DMU 43号。日本式にいえばキヤですね。両運転台で片方の運転席の後部は機関室になっています。その名前からして、政府や国鉄の要人が乗車したのでしょうか。
MÁV governmental DMU 43 |
もう一両の茶色の車両はBamotと呼ばれるディーゼルカー。車体のスタイルから見て1970年代以降の製造でしょうか。運転室後部に機関室はなく、この時代になると、エンジンを床下に納めることができるようになったのでしょう。両運転台で、客車も牽引したようです。
ディーゼルカー Bamot |
赤とクリームに塗り分け、足回りまでスカートに覆われたディーゼルカーは、流線型が世界的に流行した1937年製のÁrpád。全長22m、重量31t、出力220HPで最高速度120km/hの高性能車です。
ディーゼルカー Árpád |
これら、扇形庫内の4両のディーゼルカーは、いずれも動態保存されているようです。
軸配置CCの電気機関車がいます。地元のガンツ社が1974年から共産党政権末期の1988年まで55両製造した、ハンガリー国鉄V63型の1号機。出力3575kWで最高速度は120km/hから後に160km/hに改造。現在の電気機関車の色は、全体が青で正面窓下に黄色の腹掛けですが、これが登場時の塗色でしょうか。
電気機関車V63,001号 |
411型は、軸配置2Dの米国製の蒸気機関車。メーカーはアルコ、ボールドウイン、リマで、第二次世界大戦後に米国の援助で導入しました。4111,118号は、411型では唯一の動態保存機。
動態保存機411,118号 |
庫外に静態保存の424型2両に加え、扇形庫内にも424,247号機がいます。動態保存機で、日本のD51に相当する機種でしょう。
動態保存機424,247号 |
電気機関車
軸配置BBの凸型車体、DC550V電気機関車II号は1914年製。炭鉱や軍需工場で使われた産業用電気機関車。全長11.74m、重量36t、軸重9t、定格出力190kW、速度40km/h。
電気機関車II号 |
よく似た箱形車体の電気機関車が2両。仕様や性能が異なるのは、旅客用と貨物用でしょう。軸配置1D1でロッド式のV40,016号は1934年製。1.6kV単相交流50Hz。全長13.83m、重量98t、軸重17.5t、定格出力1620kW、速度100km/h。
隣のV60,003号は1938年製。径の小さい動輪が5軸のロッド式で、先輪はなく軸配置はF。全長13.57m、重量93.8t、軸重178kN、定格出力1840kW、速度68km/h。
電気機関車V40,016号 |
電気機関車V60,003号 |
軸配置がBCで日本式にいえばEE型。2軸ボギー台車と3軸ボギー台車という珍しい組み合わせのV55,003号は1954年製。全長14.60m、重量91.6t、軸重19t、定格出力2355kW、速度125km/h。
電気機関車V55,003号 |
軸配置BBの凸型でも、近代的なAC25kV、ワード・レオナード方式の電気機関車V41,523号は1962年のガンツ社製。ハンガリー国鉄の列車を牽引。全長12.29m、重量69.5t、軸重18t、定格出力1050kW、速度80km/h。凸型車体にパンタグラフを2基設置するには、こんなパンタ台を取り付けるしかありませんね。
電気機関車V41,523号 |
ディーゼル機関車
セミセンターキャブのディーゼル機関車が2両。軸配置BBのM46,2001号はガンツ社1961年製の液体式。全長8.2m、重量47.6t、軸重11.9t、定格出力450kW、速度60km/h。M47,2070号はデータがありません。
ディーゼル機関車M46,2071号 |
ディーゼル機関車M47,2070号 |
ディーゼルカー
扇形庫内にいたMÁV governmental DMUがここにも。両端の動力車は片運転台になり、中間に付随車をはさむ3両編成です。運転席の背後は機関室。
MÁV governmental DMU 44 59 45号の3両編成 |
5642-2号はオーストリアのグラーツで1955年から61年に製造されたディーゼルカーの1両。両運転台で手前の運転室の後ろはトイレに、向こう側の連結面の運転室の後部は機関室になっています。付随車を牽引して100km/hで走行するため、V型12気筒過給機付き出力500HPのエンジンを搭載した液体式。付随車を3両連結しています。
液体式ディーゼルカー5146-02号 |
正面に羽根車のエンブレムを付けた流線型のディーゼルカー“HARGITA”。ブダペストとトランシルバニア地方(ルーマニア)を結ぶ長距離高速列車用に、両端の動力車の間に2両の付随車をはさんだDTTDの4両編成として、第二次世界大戦中の1944年にガンツ社で3編成製造。“HARGITA”はルーマニアの地名。実際に運行についたのは戦後のようです。
保存されているのは、両先頭車の46号と47号。運転台の後部に機関室があり、重量を支えるためか先頭の台車は3軸ボギー。重量53.2tで軸重は12.5t。軸配置が1B-2となっているので、出力330kWの機関で3軸台車のうち後方の2軸を駆動。最高速度120km/h。
ディーゼルカー“HARGITA”47号と機関室下の動力台車 |
その台車が展示されています。V型12気筒のディーゼル機関が台車の先頭よりに直接搭載され、長い推進軸が延び減速逆転機を介して3軸のうち中央と後方の2軸に動力を伝達。カーブでは、機関を載せたまま台車が首を振るので、排気管はフレキシブル配管ででしょうか。
ディーゼル機関を直接搭載した3軸ボギー台車 |
客車
広い構内に数多くの客車が留置されていますが、車両の説明はほとんどありません。
並んでいるのは、日本の10系軽量客車開発のモデルになったスイスの軽量客車のようです。
スイスの軽量客車? |
荷物車でしょうか。イコライザー式の台車を履いています。
荷物車? |
トイレが2部屋並んでいるようなので寝台車?
寝台車? |
Bar Carの切り抜き文字があるので食堂車。
Bar Car |
屋根が深いので、もとは寝台車でしょう。SALON ISTROPOLITANの切り抜き文字があるので、サロンカー。台車の側面に車軸から回転を取り出す発電機を取り付けています。
サロンカー |
遠くまで数多くの客車が並んでいますが、展示なのか廃車置き場なのか。
1等車 |
こんなフェンスの奥にも客車がいます。4本の柱は車体ジャッキアップ装置でしょうか。
車体ジャッキアップ装置? |
WAGON LITS(国際寝台車会社ワゴン・リー社)の切り抜き文字のある客車も。窓の配置が変則的ですね。
ワゴン・リー社の客車 |
その他にも、いろんな客車やアメリカ型のディーゼル機関車、台枠にトラス棒のある木造ボギー車らしき姿が見えますが、立ち入り禁止の柵があって残念ながら近づくことができません。
窓の一部がベンチレーターになっている客車 |
|
その他にもいろんな車両が |
側面や妻面に大きな開口部を持つ特殊なボギー客車12号。詳細はわかりません。
特殊な客車12号 |