“トルコ ボスポラス海峡横断鉄道トンネル”  


ボスポラス海峡をはさんで、ヨーロッパとアジアにまたがるトルコ最大の都市イスタンブール。両大陸をむすぶのは、海峡に架かる2本の道路橋と両岸を行き来する船でした。

海峡の下にトンネルを通す計画はオスマントルコの時代からあり、19世紀の半ばには図面ができていたそうです。

トラムの向こうにシルケジ駅の旧駅舎

それから140年余り、2004年から日本の技術と円借款でボスポラス海峡を横断する海底鉄道トンネルの建設が始まり、2013年10月29日にトルコ150年の夢といわれたヨーロッパとアジアを直通する列車が開通しました。安倍首相も開通式に出席したので、その様子は日本でも報道されました。

トラムの停留所から見たシルケジ駅新駅舎

トルコ国鉄の近郊電車は、ヨーロッパ側はシルケジ駅、アジア側はハイダルパシャ駅と、いずれもボスポラス海峡に面した駅を始発としてきました。ボスポラス海峡横断トンネルの路線は、ヨーロッパ側はシルケジから6駅目のカズリチェシュメ駅で分岐して地下線となり、3駅目のイェニカプ駅とシルケジ駅が地下駅に移行し、海峡を横断してアジア側のウスクダルに新しい地下駅を設け、ハイダルパシャ駅と次のソグルチェシュメの中間のアイリリクチェシュメで地上に顔を出し、ここに新駅を設けてアジア側の路線に接続しています。

最も深いところで海面下60mの海底部分1387mを含め、全長13.6kmに5駅が配置されています。 陸上部分のトンネルはシールド工法で、駅部分は開削方法で、そして海底部分は沈埋工法で作られています。詳細は、大成建設のプレスリリースをご覧下さい

イスタンブールの鉄道等の路線図 中央の黒線が海峡横断トンネルを含む国電区間(クリックすると拡大)

上に示す図は2014年1月段階の、国電、メトロ、ライトメトロ、トラム、メトロバス(BRT)の路線図で、中央の黒い線が今回開通した国鉄のボスポラス海峡横断路線です。 破線は工事中または計画中の路線で、海峡横断路線の前後につながる国電の在来線は、改良工事で運休中のようです。

上の図をクリックすると、イスタンブールメトロのホームページにある路線図が開きます。2014年4月段階では、メトロ2号線が旧市街まで延伸されて、イェニカプ駅で海峡横断路線に接続しています。

シルケジ駅構内の地下ホームへの入口 左は使われなくなった地上ホームと留置車両

ボスポラス海峡横断海底トンネルの開通で、ヨーロッパ側のシルケジ駅(地上駅)、アジア側のハイダルパシャ駅とも、国鉄の近郊電車は入線しなくなりました。シルケジ駅の構内には、新しく地下ホームに降りる入口が設けられ、国電が発着していた地上のホームは柵で囲われています。

これとは別に、駅舎のあるところから西へ入った高台の一角に、シルケジ駅のもう一個所の出入口もできました。その隣は、主にトンネルの海底部分を担当した大成建設の現場事務所でしょうか、日本語で“地図に残る仕事。”と書かれた看板が掲げられている建物もあります。

別の場所にあるシルケジ駅地下ホームへの入口 右の看板に見覚えのある日本語が

“地図に残る仕事。”の入口を入ると、エレベータで地底深くに降りていきます。到達したホームは島式1面。シールド工法で掘られた丸い断面が2つ並行しています。

シールド工法で掘られたトンネルと剛体架線

トンネルの壁には、イスタンブールのヨーロッパとアジアをむすぶ海底トンネルを描いたタイルが掲げられています。

ホームの壁に海底トンネルの絵

同じく、トンネルの壁に設けた駅名表には、ヨーロッパには珍しく、日本のような両隣の駅名の表示もあります。

シルケジ駅の駅名表 左のウスクダールは海底トンネルの向こうアジア側

天井から下がる大型の液晶モニターの表示を機械翻訳にかけると、“153年にわたる夢が実現した”となります。19世紀のオスマントルコの時代に設計図が描かれてから、開通まで153年を要した世紀の事業です。

“153年にわたる夢が実現した”と表示しているらしい液晶モニター

カズリチェシュメ発アイリリクチェシュメ行きの電車が入線してきます。韓国現代ロテム製、外開き5扉車の5両編成。トルコ国鉄は右側通行です。

国電がシルケジ駅に到着

車内はプラスチックのロングシート。おむすび型の吊革を使っているのは、日本車と韓国車、台湾車だけでしょうか。

ロングシートの国電の車内

車いすスペースのある車両では、この部分のシートが跳ね上げられるようになっています。

車いす席はシートが跳ね上げられるようになっている

ドアの上にある路線の案内図には、まだ今回開通した5駅のみの表示。“Marmaray”とあるのは、ボスポラス海峡の南にあるマルマラ海と鉄道のトルコ語 ray を組み合わせて付けた、ボスポラス海峡横断海底鉄道トンネルでイスタンブールのヨーロッパとアジアをむすぶ計画の名称だそうです。

今回開通区間の路線図

この韓国製の電車、運転台と客室の間に窓がなく、客室内からからトンネルの断面を見ることができません。乗っていても、何処が海底部分かよくわからないまま、あっという間にヨーロッパからアジアへ、ウスクダル駅に到着します。

アジア側のアイリリクチェシュメ駅で折り返す国電

もう一駅、地上に出ると終点のアイリリクチェシュメ駅に到着。地下鉄4号線との乗り換え駅ですが、接続と改良工事が終われば、アジア側の国電区間に直通するのでしょう。

また、アンカラ−エスキシェヒール間が先行開業している高速新線がここにつながれば、トルコの新幹線が首都アンカラからイスタンブールのヨーロッパ側に乗り入れてくることになるのでしょう。

地下鉄4号線と接続するアイリリクチェシュメ駅

でも観光客にとっては、トンネルより船のデッキから、ブルーモスクやアヤソフィア、ガラタの塔などを眺めながらボスポラス海峡を渡る方が楽しいですね。ヨーロッパが側、アジア側とも、複数の桟橋から船が頻繁に出ています。

トプカプ宮殿を背にボスポラス海峡の船

また、34系統のメトロバスがボスポラス大橋を渡ってヨーロッパ側とアジア側をつないでいます。この系統は専用レーンを走るBRTで、自動改札を設けた駅は島式ホームのため、右側にドアのあるバスは左側通行となっています。ボスポラス大橋の上だけは、一般車と同じ道を走るため、橋の前後で右側通行と左側通行が切り替わります。

ボスポラス大橋を渡るBRTの車窓から

ボスポラス海峡横断海底トンネル開通後も、鉄道と船、バスの棲み分けは続くことでしょう。

ヨーロッパとアジアをつなぐボスポラス大橋

 

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