木曽森林鉄道

木曽森林鉄道の車両

木曽森林鉄道の想い出

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保存機関車
1号機
'72.10 
上松

みやま号
DL + 客車
'72.10 上松
御岳湖ダム

'
72.10
左 みやま号
右 運材列車
'72.10
大鹿
みやま号
DL + 客車
'72.10 本谷
 
営林署の
作業員の人々
'72.10 本谷
林鉄の列車
DL 客車 クレーン車
'72.10
本谷付近
L型 DL

'72.10 本谷付近
モーターカー

'72.10 上松
大型モーターカー
右はみやま号
'72.10 田島
       

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日本の国土の大半は山林に覆われ、広大な国有林が各地にあります。国有林は農林水産省の外局である林野庁が管轄し、最近は合理化によって統廃合が進められていますが、各地に営林署がおかれ管理にあたっています。国有林からの切り出した木材は、林道が整備されるまでは森林鉄道によって最寄りの国鉄駅まで運搬されていました。

森林鉄道の多くは、急カーブや急勾配に対応でき、安価に建設するため線路幅が762mmのナローゲージが採用され、小さな機関車が木材を満載した運材車を牽引して山を下ってくる風景が、全国各地でみられたそうです。すでに、四半世紀前にトラック輸送に切り替わって全廃されたものの、観光目的の保存鉄道として路線の一部が残っているところもあります。

日本の森林鉄道で規模が大きく、比較的遅くまで運行が続けられていたのが、上松営林所管内の森林鉄道王滝線です。一般には、木曽の森林鉄道として、鉄道ファンのみならず多くの一般の人にも知られていました。

国鉄中央本線上松駅の構内には、貨物列車への積み込みを待つ多くの木材が積み上げられ、その向こうには森林鉄道の小さなディーゼル機関車が牽引する列車が発着していました。

本線が上松から40数kmの本谷をむすび、途中から多くの枝線が分岐していました。沿線の田島や大鹿などの駅には、集まってきた運材列車の編成を組むヤードが設けられていました。

森林鉄道は、道路のない山の中に分け入っていきます。その沿線には、営林署の職員や家族以外に、一般の人々も生活しており、森林鉄道はこれらの人々の交通手段や生活物資の輸送の使命も兼ねていました。

運材列車以外に営林署の職員の移動のための旅客列車も運転され、沿線の住民の人々には便乗が認められていました。子供のための通学列車まで運転されていたそうです。旅客営業をしているわけではありませんので、無料で乗れました。

これを拡大解釈してか、全国から木曽の森林鉄道を訪れる観光客にも、平日の1往復に限定して便乗が認められていました。朝に上松を出発して本谷を往復し、夕刻に上松に戻ってくる“みやま号”と名付けられた列車です。

森林鉄道としては比較的大きなL型のディーゼル機関車に、赤い木造の客車が3両連結され、その後ろには貨車や色々な用途の車両、回送するモーターカーなどを途中駅で連結や切り離しを繰り返していきます。3両の客車のうち、営林署職員用が1両、地元住民用が1両で、観光客は残り1両の座席定員分(20名ぐらいだったでしょうか)だけ先着順に受け付けてもらえたと思います。

森林鉄道に乗るためには、朝早く宿を出て、上松駅そばの営林署の事務所前に並びます。始業時間になると受付が始まり、“仮に事故で損害を受けたとしても国家賠償法による請求はしない”というような文面が書かれた用紙に署名すれば、便乗が認められます。俗にいう、“命いりません”の署名です。

事務所のそばの車庫には、かつて森林鉄道で活躍した蒸気機関車、ボールドウインの1号機が保存されており、見せていただくことができました。動輪が2軸に1軸の従輪を持つB型です。

森林鉄道の上松駅には、写真のような立派なホームがあり、ここから乗車します。上松を発車した“みやま号”はすぐに木曽川の鉄橋を渡り、しばらく対岸の中央本線と併走した後、山に分け入っていきます。このあたりの路盤のあとは、今でも中央線から見えると思います。

森林鉄道の車窓からはダム湖も望め、景色は抜群ですが、運材車をそのままボギー台車として転用した客車の乗り心地は、1日乗車するにはちょっと厳しいものがありました。この客車、側面にドアはなく、車体から前後にはみ出した台車の上に張られた鉄板をステップのようにして、妻面に設けられた引き戸から乗り降りするちょっと変わった構造でした。

こうして、途中何ヶ所かに停車して終点の本谷まで3時間以上を要したと思います。本谷で機まわり線を使って機関車を付け替え、1時間程度休憩してまた来た道を上松に向かって折り返します。連結器は、かつて軽便鉄道で一般的に使われていたピン&リンク式です。車両により連結器の高さがそろっていないためか、みやま号のDLの連結器は3段になっています。

沿線では、車窓から運材列車や作業列車を見ることができました。また、途中のヤードでは、営林署の職員が乗用車代わりに使用するモーターカーや、もう少し大型のマイクロバスのようなモーターカーなど珍しい車両も見かけました。

大規模な木曽の森林鉄道も、林道の整備により運行する路線がだんだん短くなっていき、1976年頃には廃止されてしまいました。廃止の直前には、保存されていた1号蒸気機関車が、自走はできないためDLに押されながら走り、昔の森林鉄道の姿を再現してくれたそうです。

一部の車両は今でも赤沢自然休養林をはじめ、何ヶ所かで保存されているようです。

2001/03記

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